カテゴリー「裁判一般」の記事

とっさの自然災害回避に失敗しても高額賠償

2016年10月26日

東日本大震災の集団津波被害があった大川小学校の関係の裁判で、一審判決が出て、学校を管理する石巻市などに高額の賠償責任が認められました。NHKニュースより。

東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市の大川小学校の児童の遺族が訴えた裁判で、仙台地方裁判所は「市の広報車が避難を呼びかけたのを教員らが聞いた時点で、津波が到達する危険を予測できた」と指摘して、石巻市などに対し原告全員に14億円余りの賠償を支払うよう命じました。

この事件は「大災害」と「人間の過失」とが重なって死亡が起きているわけですが、これがもし災害でなくて「Aの過失」と「Bの過失」とが重なって死亡があった場合には、AとBとで過失相殺が適用されるはずです。今回の「大災害」と「人間の過失」では、「大災害」のほうが死亡に寄与するところは大きいと思うのですが、自然現象だったという事情は考慮されないままに全責任を人間の過失に負わせるという判断は、直観的には公平な判断とはいい難いと思っています。最高裁が判例でコントロールすべき部分だと常々感じています。

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「悪徳弁護士」と言っちゃあさすがにダメだろうなぁ・・・

2016年7月2日

2016年6月30日の傍聴、事件番号は東京地裁平成27年(行ケ)第53号。原告名と被告名から、弁護士の懲戒処分取消請求の事件と思われる事例。同じ時間に医療訴訟があったけれどもそちらは美容外科の事例のようで、先に懲戒処分取消請求の事件をチラ見してみることにした。

 

原告は弁護士だが代理人もつけている。原告側の証人二人と、原告本人(=弁護士)の尋問。原告側の証人は原告本人にお世話になった依頼者とその関係者。証人の尋問からは、原告本人は真面目で真摯に仕事しているように思われて、なんでこれで懲戒請求食らうかな~、と思いながら、続く原告本人(弁護士)に対する尋問を聴いていたら、最後のほうでその答えが判明。

 

とある事件の準備書面で相手方弁護士のことを「悪徳弁護士たる◯◯弁護士」と書いてしまったらしい。さらに「訴訟詐欺的活動」とも書いたとか。

 

・・・それを言っちゃあ、さすがにダメっすよね。検索してみると、受けた懲戒は戒告だったようですが、ひっくり返るものでもないでしょうに・・・

 

こういう事例をみれば、弁護士であっても本人が処分を受けたとなれば戒告程度の処分であってもこれだけ抵抗するのだから、医師が自分では非がないと思っているのに過失を追求されたらどれだけ抵抗したくなるか、法律家の方々にもよくわかってもらえるものと思います。

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加藤新太郎裁判長の訴訟指揮その2

2012年9月12日

開廷表を見て、被控訴人が「神奈川県」となっていたので、もしかしたら県立病院が訴えられた事件でないかと考えて、ふらりと法廷に入ってみた事件でした。

残念ながら医療訴訟ではありませんでしたが、裁判長があの加藤新太郎判事。以前にご報告したこの事例と違い、傍聴人がほとんどいなかったので、傍聴席からの笑いは起きませんでしたが、なかなか味のある事件だったのでご報告します。ただし会話のやり取りは速いので、メモは超大雑把です。誰が発言したのかわからなくなっている部分もあります。

事件番号は東京高裁平成24年(ネ)第4419号。双方控訴の事件で、神奈川県は一審被告でした。事件内容は、勾留?された一審原告に対して、留置所(?)の係員が何らかの書面を直ちに渡さなかったことについて、憲法違反だと主張しているようです。それが、単なる書面ではなく何やら特殊な細工が疑われるようなものだったようで…

さて、控訴審開廷の冒頭ですが、一審原告が提出した控訴状、準備書面が充実しているらしく、

加藤裁判長「これ、力が入っているということを、形で表している、と、こういうことですね。憲法議論の後の事実は云々…」

一審被告代理人「施設法の違憲主張。平成11年の最高裁判決で決着している。主張は少し補充します。」

加藤裁判長「十分補充してください。一審原告は勝っているのに控訴している。そこを主張しているのだから、そこは正面から反論して下さい。」

加藤裁判長「判例の理解を示してもらう。当てはめのところで本件の違法性が(・・・)、双方とも個人攻撃とか揚げ足取りがある。『頓珍漢』とは書面には書かない。『不相当』と書く。理性的にね。」

一審原告代理人「捜査、留置の分離についてはぐらかされている気がする。留置管理官は取り調べはしない。また、一審原告の控訴理由書にきちんと反論していない。」

控訴審ではどういうことをするか?→憲法論。当てはめはどうか?

加藤裁判長「一審被告は、1時間後には書面を渡しているので、宅下げを拒否したという評価には当たらないでしょう、としているが、警視庁のは検事が間違えて数日後。こちらは検事は間違えていない。15分だったらどう?日が変わったらダメだよね。5~6時間でもクサイよね。15~30分なら?と」

一審原告代理人「最初に『渡せません』とハッキリ言われた。」

加藤裁判長「公務員なんて、間違いいっぱいするじゃない。できないと言われて、いやいや違うと頑張った。これ、弁護士の真骨頂ですよ。1時間で是正されたじゃないですか。」

一審原告代理人「ワカマツ国賠で、45分での最高裁の判断もある。」

一審被告代理人「この例ではインターネットで(・・・)、仮に弁護人であっても渡さない、という判断もあり得る。それを即時に判断させるのはナンセンスと考えている。」

加藤裁判長「罪証隠滅行為1回で退会にはならないでしょう。」

(発言者不明)「かつてはいなかったかも知れないけど」

加藤裁判長「そのへんも率直でいいね~」

一審原告代理人「留置官の判断で止められるという判断は如何なものか」

一審被告代理人「私も刑事弁護をやらないわけじゃないので…でも今回の文書はそれとは違う。」

加藤裁判長「弁護士宛でも、なお中身をチェックしないとならないという…」

加藤裁判長「おかしな弁護士だったら、こんな訴訟起こしませんよ」

加藤裁判長「今朝思いついたので自信はないけど、憲法違反と国賠…」

(発言者不明)「故意過失ですか?」

加藤裁判長「そこ!」

(発言者不明)「確かに広島で故意過失なしという…」

加藤裁判長「そうだといっても、そこでダメになるとしても、憲法適合性について判断するということかな?」

一審原告代理人「日弁連でも議論したいと思う」

このあと、次回期日を決めるとき、一審原告代理人の希望を取り入れて遅めの時間に設定され、「特別ですよ~」の一声。特別を受け入れたのは、加藤裁判長もこの争いに関心が強いからということなのかな、と思ってみたりします。

それにしてもあれですね、医療訴訟なんかだと、裁判官も所詮は素人なんで、非常に優秀な裁判官でない限り、傍聴していてモニョることも多いですが、憲法議論とかとなると、やっぱり餅は餅屋で、聴いていて清々しいものがあります。

結構注目の一戦なのかも知れません。

 

追記: この事件は、通称小田原国賠と呼ばれている事件のようです。上で「一審原告代理人」としたのは、どうやら一審原告本人のようです。そしてその一審原告本人が「頓珍漢」と評した一審被告の主張は、こちらで紹介さているようです。

加藤新太郎裁判長の訴訟指揮(その1)はこちらにあります。その3はこちらにあります。

傍聴中に、専門用語を知らずに聞き取れなかった「タクサイ」を、「宅下げ」に修正しました(平成24年10月21日)

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加藤新太郎裁判長の訴訟指揮

2012年6月13日

もう、2年近く前のメモなんですが、ひっくり返していたら出てきたものが、わりと面白かったので備忘録的に。

・・・ 今日,東京高裁第22民事部で,医療訴訟の控訴審の弁論の前に開かれた,ある事件の第1回弁論です。25分もかかったのですが,面白かったのでご報告。と言っても走り書きメモなので裁判の流れまでは分からないと思います。3度ほど笑いが起きた,その雰囲気だけでも。

事件内容はちょっとよくわからないんですが,何らかの土地を,控訴人がうまく丸め込まれて,7億円で売って8億5千万円で買い戻すような取引をしたらしいです。事件番号は平成22年(ネ)第3516号。

被控訴人代理人「先週の金曜日に控訴人から和解の話があって,まだ時間がなくて検討していないんですが,本日は(事前に提出されていた控訴人の書面の)陳述を待ってもらうのが…」
加藤裁判長「せっかく書いたんだからいいんじゃない? どうせ大した主張じゃないんだから」(笑)

(・・・)

加藤裁判長「大した主張じゃないというのは冗談ですけどね。原審では終結後,3月25日付被告準備書面6,未陳(陳述していないこと)になってるけど,未陳のまま書いちゃったけど,これはいいね?」

加藤裁判長「控訴審ではどこを一番見て欲しいの?」

加藤裁判長「控訴人は控訴理由書に新主張があるんだけど,普通なら,時宜に遅れた主張というと思うんだけど,被控訴人は言わないの? 横綱相撲をとるつもりなのね?」

加藤裁判長「被控訴人が訊かないからあえて訊くけど,どうして今頃こんなもの(出したの)?」(笑)

控訴人代理人「原審で負けて,これはまずい,と。」

加藤裁判長「でも,これはどうなの?」

控訴人代理人「ちょっと無理っぽいです」

加藤裁判長「そうだよな,無理っぽいよね。」(笑)

加藤裁判長「原審では,お互いフェアな議論の応酬をしているけど・・・ しかし主張の3なんか,こう言うのを書くと,こんなことで商売しているのと思われる。こういう事を書くとまずいよ」

控訴人代理人「ありがとうございます。勉強になります。」

加藤裁判長「すごく率直に話すから,裁判所としてはやりにくいよね。それは棄却です,とは言いにくいですよね」

(・・・)

控訴人代理人「こちらは1円も得ずに物件を失っているので・・・」

加藤裁判長「でも売買じゃない。売買ってのは,狡猾な人が儲けるものじゃない。それは後知恵だよね。」

控訴人代理人「そうですね・・・」

加藤裁判長「○○社がいつになくいい取引をしちゃった,ということだよね。」

 

追記: 加藤新太郎裁判長の訴訟指揮その2がこちらに、その3がこちらにあります。

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今日の東京地裁での小競り合い

2012年5月7日

連休明けの東京地裁。受付の係員に向かって、「今は憲法週間でしょう。裁判所に入るときの検査を、一般人には受けさせて職員や弁護士は受けなくて良いのは、職業差別で憲法違反でしょう。2年前から度々理由を訊いているが明確な答えがない。ああいう差別は対外的に恥ずかしいからやめなさいよ。」とか騒いでいる。いや対外的にあんたのほうが恥ずかしいから。そしてもっと恥ずかしいのが、そのやり取りを苦笑いしながらノートにメモしている自分だったりする(笑)

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