医療問題弁護団問題 ~3~

  事件番号 終局 司法過誤度 資料
一審東京地裁 平成19年(ワ)第11294号 和解 和解  

 これまた平成21年のある日に傍聴した事件です。杏林大学医学部救急医学教室教授である山口芳裕教授が、厳しい口調で被告の過失を指摘していたため、強い関心を持ちました。

 事案概要を大雑把にまとめますと、脚の動脈に対する手術を受けた翌日に転倒し、脳出血を来たして麻痺を起こしたというものです。請求額は約5000万円。詳細は後回しにしますが、いろいろな医師に意見を聴いたところ、病院側は標準的な対応をしており、転倒は病院の過失とは考えられず、その後の対応については原告側は過失を主張しているものの、これも実際には特段の過失は考えにくい上に、後遺症との因果関係を肯定する材料は無いものと考えられました。特にその原告側協力医である山口教授に対する尋問の最後の部分を聴いて、これは普通に考えれば因果関係を前提とした賠償責任追求はそもそも無理だろうとの印象を強くもちました。その部分は概ね以下のようでした。

機能予後についての改善は,どの程度にできていたという風にお考えでしょうか。
------ それはどの時点なら,どの機能が廃絶せずに残ったということを申し上げることは難しいです。ただし,本人に残ったレベルよりは,1分でも1秒でも早ければ,少しでも廃絶する機能が縮小できたんではないかという,そういう趣旨での意見です。

(中略)

可能ではなかったかというのは,そうはならなかった可能性もあるということですか。
------ ええ,それは人間のからだだから,絶対にこの時点でやっていたら,この部分は残っていたはずだということを申し上げることはできません。これは医療者,医学の専門家としてできません。ただ一般論から言うと,ともかく1分でも1秒でも早くやることによって,廃絶する機能が縮小できるというのは,私もたくさんの患者の中で経験しているところでございます。

 法律家の方なら一読してお分かりかと思いますが、因果関係のイの字の証明にもなっていません。こんな事件を請け負った弁護士は一体どんな弁護士なのだろうと確認したところ、これまた医療問題弁護団の団員である澤藤統一郎弁護士なのでした。原告側協力医の見解ですら、以上のように因果関係をむしろ否定するようなものであるのにも関わらず、因果関係を前提とした賠償請求の訴えを起こすことは、専門家の責任を厳しく追求することを是としている医療問題弁護団の一員として、如何なものかと思われたのでした。

 以上のような事例であり、かつ優秀な裁判官を配する東京地裁医療集中部での審理でしたので、当然に原告側敗訴判決に至るものだとタカをくくっていたのですが・・・

 なんと、後日に記録を確認したところ、結構な金額での和解になっていたのでした。和解は当事者同士の合意があってのものですから、第三者がとやかく言うものではないのでしょうが、しかしこの賠償をもし保険会社の保険金で支払っているのだとしたら、問題になりはしないのかと思うところです。

 そして実は、この事件を通じて一番命拾いしたのは、他ならぬ澤藤統一郎弁護士ではないかと思った次第です。しかしこのような人物が所属する医療問題弁護団は、医療事故調査委員会に関与するには極めて不適格と言わざるを得ないと思います。

原告代理人の質問に対する被告代理人からの回答書。(訴訟提起以前のものらしい)

転倒した事情
H17.1.17,左総腸骨動脈狭窄に対する経皮的血管形成術(PTA)目的で入院。翌18日,心臓血管外科医師によりA氏および奥様であるB様に手術の内容,合併症等についての説明を実施し,同意を得ました。同月20日のPTA治療は,両側大腿動脈よりシース挿入し,ステント2本を留置することで左総腸骨動脈の拡張に成功しました。その後も順調に経過していました。
 同月21日,9:20ごろ,シース抜去部の状態を確認し,尿道カテーテルを抜去しました。その際「初めて歩くときは看護師が付き添いますので,一人で歩かず必ず看護師を呼ぶよう(ナースコールするよう)」指導しております。9:30ころ,A氏は「洗顔・髭剃り」を希望されましたので,看護師が洗面所前の廊下まで付添い歩行をしています。その際の歩行状態に問題はありませんでした。その後,10時ころにも歩行しているところが観察されており,11時46分ごろにはベッド上で新聞を読んでいたことも確認されています。
 11時58分ごろに大きな物音がし,直ちに駆けつけた看護師により病室前で仰向けで転倒しているところが発見されました。転倒の様子は同室の方が観察されており,それによれば「音がして見たら,病室の出入り口のあるヒビソフト(手指消毒剤)に手を掛け,そのまま後ろ向きに転倒した」ということでした。

質問1 Aの転倒は,手術後の最初の歩行(いわゆる「第一歩行」)の際に生じた事故か?
回答 違う。第一歩行は9:30ごろ。看護師付き添いだった。

質問2 第一歩行に関しては,看護師の介助が必要だったのでは?
回答 患者の年齢や状態,手術侵襲に鑑みると,必須というわけではない。なお,本件では付添い介助しているが,歩行状態に異常はなかった。

質問3 手術後の歩行に関しては,事前に担当者から患者本人に対して何らかの指示や注意がなされていたか。
回答 術前の説明の際に術後の合併症,注意事項について一般的な説明を実施している。また,尿道カテーテルを抜去した際に,上記の通りの指導を行っている。

質問4 転倒と転倒発見の各時刻の特定は?
回答 転倒と転倒発見時刻はほぼ同時であり,午前11時58分頃。

質問5 転倒を発見したのは誰か
回答 転倒直後に担当看護師と看護師長が駆けて発見。転倒の具体的な状況は同室の患者様が確認している。

質問6 転倒の状況
 頭部を病室側,下肢を廊下側に向けて仰向けの状態で倒れているところを発見された。転倒直前の状況は,同室の患者様が確認されており,その聞き取り内容は上記の通り。患者様の氏名等は個人情報なので回答できないとご理解を。

質問7 Aにはどのような外傷や打撲があったか
回答 後頭部に2×3cm大の裂創を確認。直ちにイソジン消毒,ガーゼで保護。

転倒発見後の処置。
11時58分ごろ転倒,直ちに発見。Drコールで駆けつけた医師により意識消失,呼吸停止確認。心臓マッサージ,補助呼吸が実施され,12:05心拍の再開,呼名に反応を認めた。12:12緊急の頭部CT撮影準備,同33分にCT撮影。SAH疑いで直ちに脳神経外科コンサルト。CT所見では,脳動脈瘤の破裂による典型的なSAHではなく,右前頭葉に軽度の脳挫傷を伴う外傷性の可能性が示唆された。同CT所見上,緊急性は認めず。脳外科がCTを読影した際の患者状態は応答可能であり,神経学的な所見は認められていなかった。3時間後に経時的CTを予定。
 その後,12:25左大腿静脈からCVライン確保。14:20頃血圧上昇,ペルジピンによる降圧療法を開始。15:15意識レベル低下,舌根沈下。経過CTが予定されていたこともあり,直ちにCT撮影を実施したところ,急性硬膜下血腫の出現,脳ヘルニアの徴候が急速に進行していることが認められたため,緊急手術を決定。
原告準備書面より

ペルジピン投与
14:20 収縮期血圧150台 1.5ml/時でDIV開始
14:40 212/94 0.5ml静注
14:45 194/104 同
14:50 194/104 同
15:00 JCS10 3.0ml/時に増量
15:30 3.6ml/時に増量(原告提出の経過一覧には記載がない)

事故当時69歳
平成16年5月11日,胸痛にて被告センター受診。
血管造影にて右冠動脈末梢(RCA#3)に99%狭窄。同月13日にステント留置。

右冠動脈近位部(RCA#1)50~70%,右冠動脈末梢(RCA#3)99%,左冠動脈主幹部(LMT#5)50%,左前下降枝(LDA#6)50%,左回旋枝(LCx#11)50%

8月16日 左総腸骨動脈CIA狭窄90%

平成22年6月13日記す

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