村田渉判事の判決文に学ぶ~3~

(事件番号:平成17年(ワ)第26697号、東京地裁平成20年2月20日判決。判決文はこちら)

 原告側の後出しジャンケン的な主張を「事実経過を後方視的観点からのみ捉えたものであって、単なる結果論にすぎない」と明快に斬っています。続発緑内障で失明した事件。27ページより。

 また、原告らは、被告らが原告Aに緑内障手術を行わず、薬物療法のみを行っていたことにより失明に至ったことからすれば、同原告に手術が必要であったことは明らかであるとも主張するが、原告の緑内障は続発緑内障、すなわち、ぶどう膜炎が原因となって、ぶどう膜炎に続発する緑内障であり、原因であるぶどう膜炎に対する治療が奏功すれば、緑内障も軽快することが期待できるものの、緑内障に対する治療がぶどう膜炎に対しても効果があるとは必ずしもいえず、前記ウ、エに照らすと、この主張は、事実経過を後方視的観点からのみ捉えたものであって、単なる結果論にすぎないというべきである。

 世の中には、このような判決と対極にあるような「こうしていれば助かった」的な判決がまた多いのです。例えば「奈良先天緑内障訴訟」などはそれに該当するかと思います。

 法律家は、「医療事故に限らず、どんな事故や事件でも後知恵で結果責任を問うことなどできない」などと言うのですが、そうでない例が少なからずあります。そのため、患者や患者側弁護士は、医師に過失がなくても勝つ例があることを知っており、それもそれなりの頻度でそのような異常な結果を期待できることから、勝ち目が薄くても提訴に踏み切りやすい面もあるのではないかと勘繰ってしまいます。

 裁判官の方々には、そういったつまらない勘繰りをしないで済むように、後方視的意見に惑わされない判決をなさって頂くようお願いしたいと思います。

平成20年5月4日記す


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