素人も削ってみたけれども、悪いのは歯医者です

  事件番号 終局 司法過誤度 資料
一審地裁 平成19年(ワ)第15452号 和解平成20年6月25日
(確定)
微妙  

 平成24年4月28日に、医療問題弁護団がインプラント被害の電話相談を受け付けたところ、139件の相談があったそうです。反響が大きかったためか、同年5月末まで受付を延長すると発表されました。*

 そのニュースを見て、ある裁判を思い出しました。その裁判は、医療問題弁護団の谷直樹弁護士が原告代理人をつとめていたのですが、内容が特異に感じられたものでした。原告の訴えを要約すると、プラークコントロールの指導が不十分なままに不適切な治療を行い、不正咬合を来たし、その結果、顎の骨が溶けるなどして高度の歯周病になったというものでした。

 さらに主張を細かく見ると、抜く必要のない歯を抜いただとか、不適切なブリッジを製作・装着されただとか、高さ調整が不適切であったのに十分な調整を行わなかっただとか、高さ調整のために特殊な接着剤を盛られたが接着剤を使うこと自体が誤りだ、などなど、端から端まで過失だと言わんばかりのように見受けられました。当然、被告歯科医院側はそれらに反論しており、特に、通常とは異なる治療法を選択していた点については、通常では行わない治療であったが、原告の意向を反映して了承の上で止むなく行ったものであると反論していました。

 歯医者にも上手いヘタがあるとは思いますが、そもそも歯はデリケートな部分ですから、虫歯で削ったり抜いたりする必要があるような状態ともなれば、どんな名医が治療をしたとしても、患者が期待した通りの治療効果が得られない場合が生じうることは仕方がないことではないでしょうか。治療後の具合が悪いからと言って、何もかも歯医者のせい、というような主張には無理があるように思います。

 そんな中、被告側から原告患者に対して、大変面白い要求がなされていました。原告の歯の接触状態が、原告側が主張するような状態であったのかどうかを確認するために、被告歯科医院で作成された歯の模型を提出しろという要求です。この模型は、被告歯科医院で作成したものであるにもかかわらず、原告側が所持したまま、返還要求を拒否しているとのことでした。

 また、原告患者が提出した、治療後の歯の写真に対する、被告側の意見も大変面白いものでした。ある歯のかぶせものに穴が開いているというのです。歯科で治療が行われた場合に、仮にかぶせものに穴が開いたのだとしたら、そのまま放置することはあり得ないので、歯科医でない者によって削られたことが推定されるのだというのです。また、別の歯では、かぶせものの表面が平らになっているというのです。歯科で治療が行われた場合に、かぶせものの表面を平らに削られることは考えにくく、歯科医でない者によって削られたと推定されるというのです。しかもそのかぶせものにも穴が開いていたというのですから、お話になりません。原告側からはこの主張に対する的確な反論はなかったようです。

 原告は、プラークコントロール指導が不十分だったなどとも主張しているわけですが、実は被告歯科医院が指導の予約を勧めても原告が拒否していたり、一度だけ予約したものの、前日になって原告がキャンセルしたりというものでした。さらに言えば、原告は数々の歯科医院を転々ドクターショッピングしていたのでした。

 よくまあこれを受任したものだなあと思ったのですが、なんとこんな事件でも100万円で和解していてびっくりしました。私の考えでは、被告代理人が若干甘い人だったからなのかなあ、などとも考えました。ちなみに最初の請求金額は500万4231円でした。

 副団長の弁護活動がこんな塩梅ですから、医療問題弁護団がインプラント治療の不適切に対して電話相談を受け付けると聞かされても、ホントに大丈夫なの?という感想です。

 ちなみにこの事件は、谷直樹弁護士ともう一人の弁護士とで受任しており、提出した書面は谷直樹弁護士の押印のものと、もう一人の弁護士の押印のものとがあり、それらはフォントも文体も異なるものでした。もう一人の弁護士は経歴の浅い弁護士だったので、指導者と研修者という立場だったのかなと思いました。谷直樹弁護士の監督責任という点でも興味深いのですが、話が広がりすぎるのでこのへんで終わりにします。

* 5月末まで延長という情報のソースは谷直樹弁護士ブログのみで、医療問題弁護団サイトには記載されていません。

平成24年5月2日記す。 


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