開業医時間外診療拒否訴訟

  事件番号 終局 司法過誤度 資料
一審東京地裁 平成16年(ワ)第23054号 判決平成17年11月15日
妥当 判決文

 朝の通勤途上で怪我をして、近くの開業医に受診しようとしたら、診療時間外で診療を拒否され受診できなかったため、応召義務違反により期待権を侵害されたとして、原告が開業医を訴えた事例です。

 開業医の言い分は原告の訴えとは若干食い違いがあり、開業医は診療拒否をしていないと主張し、また判決文でも開業医の言い分が認められているのですが、それはそれとして、診療時間外に診療を拒否したことについて、期待権を侵害されたとわざわざ訴訟を起こす人がいるということに、驚きを禁じえません。しかもこの原告は、結局は救急車を呼んで他院で救急診療を受けており、また開業医に診療を拒否されたことによって、健康被害を負ったわけではないというのです。

 判決では、原告の主張を不自然だとしてあしらい敗訴にしています。そして、付言として応招義務について述べています。難しい言い回しですが引用してみます。

医師法19条1項の定めるいわゆる医師の応招義務は、本来国に対して負うものであって、仮に被告に同条項に違反する診療拒否行為があったとしても、ただちに私法上の不法行為を構成するものではなく、この行為が社会通念上許容される範囲を超えて私法上も違法と認められ、これによって原告の何らかの権利又は法律上保護される利益が侵害された場合に初めて不法行為の成立を認める余地があると解するのが相当である。

 これだけを読むと、応招義務というものは国に対して負っているものであって、患者個人に対して負うものではなく、また、普段医師が恐れているようなギチギチの義務ではないように読めます。これまでにも裁判例では、医師と患者間の信頼関係が損なわれ、かつ別の診療所で受診が可能な場合に、診療拒否が不法行為ではないとされた例などを目にしたことがあります。

 昨今患者側の勝訴率が低下していることが一部で問題視されているようですが、こんな事例でも提訴されているようでは、患者側の勝訴率が低くなるのも合点がいくというものです。そして、このような事例でも原告側に弁護士が付いているということに驚きます。それも、自身のブログでは医師・医療に対して厳しい眼を向ける谷直樹弁護士だというのですから、心底驚きます。たしか弁護士には応召義務はなく、医師と違って勝ち目がなければ断ることは自由だと記憶しているのですが、谷直樹弁護士はどういう了見でこの超無理筋事例を受任されたのでしょうかね?

 尤もこんな馬鹿馬鹿しい事例でも、弁護士が付かない本人訴訟を起こされて、裁判官や被告代理人が素人相手に苦労するよりは、ずっと良いということは重々承知しています。ただ、受任に当たって依頼人である原告に、勝訴の見込みなどについてどういう説明をしているのかが、気になりました。

 プロの裁判官による、事実を見抜く仕事を垣間見れる数ページの判決文を、こちらに置いておきますので是非ご覧ください。

平成24年4月20日記す。


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