裁判記録閲覧の方法

 あらゆる民事裁判は原則として公開で行われており,民事裁判の裁判記録は原則として誰でも閲覧ができます。この稿では,まず民事訴訟の裁判記録閲覧の方法一般について述べ,続いて裁判記録閲覧のポイントを,医療訴訟に基づいて述べます。裁判傍聴については「裁判傍聴の方法」をご覧ください。なお、刑事裁判の裁判記録閲覧には制限が多いらしく、この項の説明は役に立たない可能性が高いと思われますので、他の解説を探してください。

どの裁判所で記録閲覧をするのか

 裁判継続中の事件の記録は,その事件が扱われている裁判所で閲覧します。高裁,最高裁に進んだ事件であっても,裁判が終了した場合には,数週間後には一審が行われた裁判所に記録が返却されます。閲覧をするのが返却される前であれば最後に裁判を行っていた裁判所で,返却された後なら一審が行われた裁判所で閲覧します。

注:記載に誤りがあれば、遠慮無くご教示下さい。

裁判記録閲覧に必要な「事件番号」

 裁判記録を閲覧するには事件番号を申告することが必要です。実はこれが最大の問題で,裁判の当事者と知り合いなのであれば当事者から教えてもらえる場合もあるでしょうが,そうでない場合は手立てが非常に限られます。具体的には,裁判所の受付あるいは法廷入り口に備え付けられている「本日の開廷表」を確認するか,裁判所判例watchや法律雑誌掲載の判決文で知ることになります。特例として原告名・被告名の両方が分かっている場合は裁判所で係の人に検索してもらうことができます(少なくとも東京地裁の場合)。最高裁で閲覧する場合には地裁または高裁または最高裁の事件番号のいずれかがわかれば良いようです。高裁で閲覧する場合には地裁または高裁の事件番号がわかれば良いようです。地裁で閲覧する場合には地裁の事件番号が必要のようで,もし高裁の事件番号だけがわかるような場合には,高裁の記録訟廷(しょうてい)係等にて地裁の事件番号を尋ねる必要があるようですが,確証はありません。

裁判記録閲覧の申請方法

 事件番号が分かれば閲覧の申請ができます。身分証明書,印鑑,150円分の収入印紙*1が必要です。記録閲覧室のある裁判所*2では,記録閲覧室に出向いて申込用紙に記入します。他の地裁高裁では担当部署に出向く必要がありますが,分からない場合は記録訟廷(しょうてい)係等に連絡して事件番号を告げて教えてもらいます。

 先述のとおり,閲覧申込用紙には少なくとも事件番号を書く必要があります。「担当部署」,「原告名」,「被告名」などを知らない場合は事件番号から調べてもらいます。「閲覧の目的」は"その他"として,具体的には"訴訟内容確認"などと書きます。「閲覧等の部分」は,通常は"記録全部"と書けば全記録を閲覧できます。まれに係の人から「この事件は閲覧制限がかかっています」と言われることがあるので,その場合は"記録全部(閲覧制限部分を除く)"と書き加えます。「事件の当事者との関係」は"第三者"と記入します。その下に自分の氏名,住所などを書く欄があります。この申込用紙は閲覧する裁判記録に綴じこまれるため,裁判官や裁判所職員,そして今後閲覧しようとする人々が目にする可能性があることを知っておいてください。

裁判記録閲覧はすぐにできるとは限らない

 閲覧は,その日のうちにできるとは限りません。裁判が終了した事件で倉庫に記録がある場合には,閲覧できるまでに1時間~1日以上かかる場合があります。また,裁判中や終了直後の事件の場合は,記録が出払っていて閲覧できない場合も多々あります。事前に電話で確認するのが良いのですが,東京地裁の事件で担当部署が不明の場合は,まずは記録閲覧室の窓口で直接尋ねてもらうという姿勢のようです。東京地裁であっても担当部署が分かっている場合は,電話で確認できました。最高裁の場合も,電話で確認できました。ただし常にそれが可能であるのかはわかりません。

 第三者による閲覧はあくまでも閲覧だけということで,コピー,写真撮影などはできません。最高裁をはじめ,多くの裁判所でメモを取ることは許されていますが,平成22年8月5日にさいたま地裁で記録閲覧したときには,メモを取ることも禁止されました。大阪地裁,熊本地裁でもメモ取りを禁止されたという体験談を聞いています。最高裁でメモ取りが許可されているにも拘らず,下級裁判所で禁止されていることは不可解で,運用方法の統一が望まれるところです。パソコンの使用は裁判所によって判断が分かれているようです。

 裁判記録の保存期間は,判決文が50年,その他の資料部分は5年のようです。事件内容を詳しく知りたい場合は,事件確定から5年以内に閲覧しなければなりません。

医療訴訟記録閲覧のポイント

 医療訴訟の記録は,積み上げると30センチ以上のように膨大な量に上ることがあり,閲覧申請をしても全部を見ることはほとんど不可能です。そのため,あらかじめ訴訟記録のどこに何があり,何を見るべきかを大まかにつかんでおくことが,効率よく閲覧するポイントになります。以下に,私なりのポイントを述べます。

 裁判記録は,弁論調書などの裁判進行の記録,訴状,準備書面,証拠類,FAX等の通信記録が綴られています。弁論調書などには,開廷された日の出頭者,進行の内容などが簡単に記載されています。準備書面とは,原告側,被告側が提出する,各々の主張が記された書面です。証拠類のうち,原告側が提出した証拠は甲号証として「甲○○号証」のように番号がふられ,被告側が提出した証拠は乙号証として同様に番号がふられています。医療事故保険会社などが追加の参加人として裁判にかかわっていると,丙号証などが追加されている場合もあります。通信記録は,原告側,被告側,裁判所が書面のやり取りをした記録が残されています。

 医療訴訟記録の中で特に参考になるものは,「訴状」,「カルテ」,「意見書(私的鑑定書)」,「鑑定書」,「尋問調書」等であると思います。訴状は裁判記録の最初のほうに綴られており,原告側が訴訟を起こした動機がわかります。訴状に続いて双方の主張のやり取りである「準備書面」が綴られていますが,読み込んでいくのは骨が折れます。カルテ,看護記録を含む医療記録は大抵は証拠として提出されており,患者関係者が入手したものを原告側が提出している場合もあれば,被告側が自前のものを提出している場合もあります。たいていは甲号証あるいは乙号証の番号の若い方にあります。意見書(私的鑑定書)は原告・被告のいずれかから提出された意見書のことで,甲号証または乙号証として綴られています。カルテや意見書を確認するには,甲号証と乙号証の綴りを順番に確認していくのが手っ取り早いと思います。鑑定書は、原告あるいは被告の申し出を受けて裁判所が中立の鑑定を依頼したもので,調書,準備書面の後に綴られていることが多いようです。尋問調書とは証人尋問・本人尋問(「裁判傍聴の方法」参照)の内容を書き起こしたもので,これも調書,準備書面の後に綴られていることが多いようです。尋問調書の段組みは独特で,おおむね以下のような形式になっています。

原告代理人甲野
    甲A3号証を示す。
    これはあなたが直接書いた陳述書ですか。
        はい。
    訂正する部分などはありませんか。
        はい。

乙山裁判長
    先ほど○○○…
        それは…

←尋問する人物。以降別の人物が
  示されるまではこの人物が尋問
  していることになる。
←回答は字下がりで示される。

 

←別の人物が尋問を始めると
  その人物が示される。
←回答は常に字下がり。

 レントゲンなどが記録に含まれていれば,それらも閲覧できます。東京地裁の記録閲覧室には,シャウカステンが備えられいます。先に述べたとおり閲覧制限がかかっている場合もありますが,医療裁判の閲覧制限は,多くの場合はプライバシーの問題上,全記録の中のごく一部が制限されているだけであって,事実内容の大枠の確認には差し支えない程度と考えられます。

 近くの裁判所を探すには,「各地の裁判所」(裁判所のホームページ)からどうぞ。

★ さらに有用な記録閲覧ガイドが「すずき しんたろう事務所」内の「訴訟の記録も、誰でも閲覧できます」にありましたのでご紹介します。

*1 申請書の印紙の貼り付け欄は印紙3枚分になっているので,100円+50円を買うよりも,50円を横3列でまとめて買うと貼り付けが楽です。したがってたびたび閲覧するような場合は,30枚単位で購入しておくと便利です。

*2 私の知る限りですが,
記録閲覧室のある裁判所: 最高裁,東京高裁,東京地裁,横浜地裁
記録閲覧用の小区切りがある裁判所: 神戸地裁
記録閲覧室のない裁判所: 青森地裁八戸支部,仙台高裁,さいたま地裁,千葉地裁,名古屋地裁,岐阜地裁,大阪高裁,大阪地裁堺支部

平成20年4月13日 記す
平成20年5月4日 修正
平成21年3月25日 修正
平成21年4月26日 裁判傍聴の方法を分離
平成21年7月9日 検索サイトからの参照が増加している事情に鑑み,一般的な裁判記録閲覧案内をまず述べ,医療訴訟記録閲覧について追加する記述方法に改め,さらに一部内容を改定。
平成21年7月11日 修正
平成22年7月4日 修正
平成22年8月8日 メモを禁止された体験をもとに修正
平成22年8月19日 「訴訟の記録も、誰でも閲覧できます」にリンク


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