令和4年3月11日: 東日本大震災トリアージ訴訟を掲載
腹部大動脈瘤の有無を疑い、検査を追加すべき義務?
2022年4月22日
東京地裁、医療集中部の尋問。急性大動脈瘤破裂で亡くなられた方の診療を巡る訴訟でした。
まずは亡くなられた患者さんのご冥福をお祈りいたします。
開廷の冒頭に、裁判長から争点の確認があり、「腹部大動脈瘤の有無を疑い検査を追加する義務」が争点の一つであることが判明しました。
そして担当医の尋問が始まったのですが、いつまでたっても腹部大動脈瘤の話に進まないのです。以下、症例の概要です。
一人で自家用車を運転して来院
前日12:00頃に餃子を食べてから、発熱、腹痛、嘔吐、下痢が出現。嘔吐2回、下痢3回を繰り返した。
初診時、顔色、意識、呼吸正常。発汗なし、血圧は測定せず。
腹痛の強さは普通。仰臥位で診察。視診で腹部膨満、打診で鼓音、触診で圧痛を認める。急性胃腸炎を疑い、ソルラック500ml 点滴静注。途中で血液検査結果が出て WBC 16100, CRP 3.44, BS 162, Cr 3.0(聞き取り不十分)等。細菌感染を疑いホスミシンを側管追加投与。さらにソルデム300を500ml追加点滴。ブスコパン、アゼリオも投与。
点滴終了して、本人が看護師に「治った、もう家に帰りたい」と言い、伝え聞いた医師が帰宅を許可。本人は運転して帰宅。
帰宅後急変し、その後急性大動脈解離が判明したらしい(詳細不明)。
画像診断はしないのか、の質問には、「痛みが続くのならやるが、治ったから帰るというのに、追加はしない。保険もうるさくて、過剰診断で目をつけられる」と返答。
遺族は証言の最後に、「最初から腹部大動脈瘤を疑えということではなくて、もっとよく観察していれば、血圧も測らないような診察にはならないのではないか」との旨を述べていました。
担当医は、「急性大動脈解離は救急でいっぱい見ているが、背部痛が多い。消化器症状がメインで腹部大動脈瘤は考えつかない」との旨を述べていました。
傍聴していても、画像検査をする義務があることの根拠には特に言及されず、不思議な気持ちで傍聴を終えました。
ちなみに、警察からは診療録の提出を求められたそうですが、出頭までは求められなかったようです。
裁判の結果は気にしておこうと思います。