令和4年3月11日: 東日本大震災トリアージ訴訟を掲載
2012年7月の記事
平成23年医療訴訟速報値に対する谷直樹弁護士の分析
2012年7月7日
しばしば一言申し上げたくなる、不思議な魅力の谷直樹弁護士のブログに、最高裁サイトに発表された平成23年の医療訴訟統計(速報値)に対するコメントが掲載されました。
なお、その統計は、最高裁サイトには1ヶ月以上前に発表されたのですが、どういうわけかその後に平成22年の古い統計に差し替えられ、最近になって新しいものに戻されたことが確認されています。
さて、私はここ数年、その最高裁の統計資料を元に、以下の様なデータを作成しています。
表題では「提訴有効率」と書きましたが、要するに、各年の「判決数✕原告勝訴率(認容率) + 和解数 + 請求の認諾数」 をグラフ化したものです。和解も合意の上での終局であることを考慮して、原告として一応の実を得ることで解決した事例の割合が、10年来、原告勝訴率の変動ほどには大きくは変化していないことが読み取れます。
さて、谷直樹先生の分析を確認してみましょう。
医療事故が減少しているという感覚はもてません.
裁判所発表の統計データとは関係ないことですが、医療事故の相談を受ける弁護士の方々の現場感覚としては、そうなのかも知れません。
患者側の裁判所への期待,信頼が減少していることを示唆する数字と受け止めるべきと考えます.
これは的外れでしょうね。勝訴率が大幅に下がっているのに「提訴有効率」はさほど下がっていないということは、以前であれば原告勝訴になる事例が、判決を待たずに和解になるようになったということでしょうから、医療側が訴えの内容を判断して、分が悪いと考えれば和解するようになったわけで、裁判所への信頼に関連付けさせるのは無理があるように思います。むしろ、病院側が敗訴するような事例に病院側が早めの対応をするようになったことが窺われるのですから、その結果として提訴件数が減少したのではないかと推測することのほうが、より妥当ではないかと思われます。