2010年11月の記事

日野心筋梗塞訴訟

2010年11月27日

以下のように報道された事件です。(個人情報を伏せます)

日野市立病院診断遅れ 市と担当医に1308万円支払い命ず 東京地裁立川支部
10/10/29 毎日新聞社

 日野市立病院で96年に診察を受けた日野市×××、無職、Aさん(65)が、心筋梗塞(こうそく)の症状の発見が遅れて後遺症を負ったとして、日野市と当時の担当医に約4000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が地裁立川支部であり、市川正巳裁判長は担当医の注意義務違反を認め、市と担当医に約1308万円を支払うよう命じた。

 判決によると、Aさんは96年8月11日、心筋梗塞を発症し、同病院に搬送された。心電図検査など適切な処置がされず、心筋梗塞の発見が遅れたために、心臓機能低下などの後遺症を負った。10キロ以上の物を持てないなど労働能力を79%失ったとしている。

 判決後、Aさんは「病院の非を認めたということで喜んでいます」と話した。

 市立病院総務課の中村和幸課長は「判決文を見ていないのでコメントは控える」と話している。【喜浦遊】

 裁判記録を見たのですが,無茶苦茶な判決でした。3人の鑑定医の意見としては,2回目の診察時を著しく不適切であったとは言えないという結論になっていると考えて差し支えないでしょう。それを「初診時 CPKでは心筋梗塞が除外できない。」として,鑑定医の意見を汲まずに,後方視的に結果責任を負わせるやり方をされるのであれば,そもそも鑑定をやる意味が無いでしょう。

さらに因果関係認定も目茶苦茶で,8月12日6:00頃までにPCIを施行していたら,左室駆出率が40%であったという,その高度の蓋然性を的確に示す証拠は何もないのであって,単なる想像に過ぎません。過失認定がそもそもおかしいのでこれを言っても仕方が無いのですが,因果関係はないけど相当程度の可能性はあった,というのなら因果関係に関する判断としてはまだ救われているわけですが,誤判に誤判を重ねてエラい結論を導いたと言っていいでしょう。というか,結論ありきで結論にこじつけるために判決文を書いたという印象です。

未だにこんな判決が書かれているのか,と憤りを感じました。

東京地裁立川支部平成18年(ワ)第1572号
救急担当医は昭和62年卒,消化器内科医

経過
平成8年
8月10日(土)夕方 左胸~左肩に一瞬痛みあり。
8月11日(日) 20:45 食後に心窩部に激しい痛み。嘔吐。
21:45 救急受診「胃が痛い」
21:50 担当医の診察
BT 36.1度,BP 160/120, PR 114
S) 1時間くらい前より,急に胃が重苦しく痛い。持続して痛い。
Nausea, Vomiting+, diarrhea-
alchol-, 付き合いで飲む程度、smoking 40本/日
O) 腹 soft & flat, rebound pain-,BS weak, 腸音弱い。tympanie+
A/P) Gastric pain, WBC↑,ALP↑。以前の所見なし。
painについては unknown origin,症状続けば入院加療
22:00-22:10頃の採血
WBC 13100, ALP 630, γ-GTP 129, CPK 55, CRP 0.5, アミラーゼ89, Hb, Ht, Plt, TBil, GOT, GPTは正常
肝胆道系疾患を強く考えられると。ただし心筋梗塞でCPKが血中に出現するには発症から3-4時間かかることを知っていた。
23:00-23:10頃,ブスコパン40mg i.m.
症状改善見るも,再度pain訴えあり。
ソセゴン30mg, マーロックス20ml 投与
pain↓
入院勧めるも,原告が翌日に雇用保険の手続をする必要があったので,帰宅を希望。担当医もそれに反対せず,8月12日0時過ぎに病院を出た。

8月12日
1:00頃,帰宅,
2:45頃,救急再来
2:52頃,担当医が入院を指示。
BP 112/88, PR 121, 嘔気+,顔色不良
聴診,肺うっ血-,III音-, IV音-, gallop rhythm-
ST3 500ml, タガメット200mg, ブスコパン20mgを1日4回指示,直ちに開始。
採血入院時一式オーダー(朝の始業後に施行)
pain colickyに持続
lung clear, heart no sign, やや tympanic
# Gastric pain? epigastralgiaの訴え強い割には所見乏しい。
WBC↑,ALP↑も含め,origin不明。NPOにてfollow. GF, echo, 採血再検。

指示 pain時 ソセゴン30mg 1日3回まで
3:10 pain訴え→ソセゴン注
5:30 pain訴え
5:52 我慢出来ないとのこと→ソセゴン15mg注
6:00 採血→結果が出たのは10時頃,医師に伝わったのは12:00過ぎ
WBC 20200, ALP 601, GOT 342, GPT 79, LDH 1900, γ-GTP 131, CPK 3994, CRP 0.6, TG 151, T-Chol 131, BS 177

7:30 七転八倒のpain
8:20 腹部エコー n.p.
胃カメラ,腹部CT指示
8:30 担当医は外来診療へ。
8:45 ソセゴン30mg, BP 134/100
8:50 腹部CT,胸水露出極少量
9:21 ECG自動判定 AMI(?)前壁中隔(V1-V4でQ幅40ms以上)
9:00以降,尿
11:10 胸腹部X-p
11:40 胃カメラ 胃炎のみ

12:00過ぎ 採血結果とECG結果を担当医が知る。循環器内科医に依頼。
聴診,肺うっ血-,III音-, IV音-, gallop rhythm-
13:00頃,循環器内科医 IVH, ウロキナーゼ96万単位
(被告病院はPCIに非対応)

8月29日まで入院,8月29日に大学病院に転院。左前下行枝起始部100%狭窄p/o
10月15日 バルーンにて狭窄25%以下に拡張。再灌流を得る。
同日,EF 43%
平成9年1月30日 EF 27%
平成20年9月1日 LVEF stress 27%

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森功意見書より

初診時,心筋梗塞など鑑別が必須だった。入院させるべきだった。
平成8年では,PCIを適応する期間は多かったが,平成10年のガイドラインまでは,血栓溶解療法も選択肢だった。

心電図などは,心疾患の鑑別が念頭になかったためにルーチン検査としてしか実施されなかったものと思われる。

心電図で急性心筋梗塞が出てからの報告は遅いと言わざるを得ないが,医師に連絡が無かったのだろうか。結果を技師が理解する知識が乏しかった可能性がある。

8月12日 9:21 心電図で既に abnormal Q +
12時間前後は経過していた。

心筋梗塞の時期は,初診時 CPK, GOT, LDHが正常であったことから,数日前であったということはない。

結果回避の可能性
初診時に入院し,その後6時間以内に診断されれば,PCI適応で,壊死進展防止の可能性はあった。X病院はPCI施行不能なので,転院していただろう。PCIがエビデンスを以て他の療法より有効との認識が確立するのは,2年後のガイドライン制定後と言わざるを得ない。

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カンファレンス鑑定意見
三宅一昌医師(日本医科大消化器内科,以下ミ),山下尋史医師(東大循環器内科,以下ヤ),吉原克則医師(東邦大大森救急,以下ヨ)

1回目の受診時の診察は不適切か?
イ,カ,ヨ 不適切とは言えない。

2回目の受診時の診察は不適切か?
イ 最適ではないが,適切な範疇。
カ 著しく不適切とは言えない。
ヨ 心電図をすべきだった。

心電図結果判明後の治療開始までの時間について
イ 技師が異常値を報告するような法的義務は存しない。担当医も外来診療に当たっていたので難しかった。
ヨ 速やかに診断をして,治療に着手すべきだった。

心筋梗塞発症の時機は?
イ 専門外で意見を控える。
カ 8月11日20:45頃。
ヨ 8月11日20:00頃。

治療方針
イ 専門外で意見を控える。
カ PTCA。PCIは「6時間以内が適応」というが6時間というのは目安に過ぎない。
ヨ PTCAなど。12時間以内なら血栓溶解療法。先駆病院ではPCI

結果回避の可能性
イ 専門外で意見を控える。
カ 可能性はあるが,程度は不明。
ヨ 左室駆出率50%以上となった可能性はある。最大の決定因子は虚血時間。

左室駆出率43→27の低下の原因は?
イ 専門外で意見を控える。
カ 平成8年10月15日と平成9年1月30日の左室駆出率は左室造影,平成20年9月1日の左室駆出率は核医学で,単純に比較できない。平成8年10月15日と平成9年1月30日の左室駆出率は計測者間のばらつきが多く,低下したと確実に判断できない。
ヨ 心筋リモデリング

カンファレンス鑑定での吉原克則医師の発言。治療について
「今の時点ではそういうことがあるかも知れませんけど,その当時の救急の一般ではできないんじゃないかとは思います。」

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裁判所の判断

過失
8月11日21:50 心電図施行の義務なし
8月12日2:52 心電図か採血の再検査をすべきだった(吉原医師)
三宅医師,山下医師の意見
(1)改めて心筋梗塞を疑う所見がなかった
(2)二次救急における当直医師の大変さ(これは吉原医師も指摘している)
しかし,(1)については,心窩部の激痛が更に続き,初診時CPKでは心筋梗塞が除外できない。担当医がその気になれば心電図やCPK再検等を指示することができた。三宅,山下医師の意見は採用できない。(2)については,担当医が心電図や採血の指示をすることさえできなかったことを首肯させるに足る事情の主張,立証がない。

因果関係
早期心電図で心筋梗塞の診断ができた。
異常Q波は,前壁梗塞で
1時間以内に14%に,3時間以内に54%に,12時間以内に92%に出現。
異常Q波が出現以前でも,77%でST上昇がある。(16%でST変化なし)
別の報告では,急性心筋梗塞の心電図感度は60~80%程度。
このうち,異常Q波や 1mm以上のST上昇など,確実な所見を呈するものは1/3~1/2程度である。

PCIは原則6時間以内を適応。ウロキナーゼ有効は3-4時間以内。心電図上 R波残る例,共通が残る例は6時間以降も対象になる。遅くとも8月12日6:00ころにはB病院にてPTCA等のPCIを受けることができた。

原告が8月11日の急性心筋梗塞以前に正常成人の駆出率を下回る状況にあったことを認めるに足る証拠はない。

平成8年10月15日 左室駆出率43%→平成9年1月30日,平成20年9月1日の左室駆出率27%への低下の原因は心筋リモデリング。

山下医師意見
「一般に急性心筋梗塞は動脈硬化病変部に血栓がついて閉塞することにより発症すると考えられているが,実際には血栓は形成,溶解を繰り返し,血流が途絶したり再灌流したりするため,症状が増悪,軽快を繰り返す場合もあると考えられている。このような場合には,症状の初発から時間が経過していても,一部には生き残っている心筋があり,緊急カテーテル,PTCAにより,心筋壊死をある程度減らすことができると考えられている。発症後6時間で適応を区切ることは,大雑把な目安である。」

実際に8月12日13:00(急性心筋梗塞後16時間15分)のウロキナーゼで 10月15日に左室駆出率43%であった。

この事実から,8月12日 6:00頃にPTCA等が実施されていれば,その後に生じる心筋リモデリングを考慮しても,原告の心機能の低下は左室駆出率40%(中等度)に留まっていたと認められる。(注:左室駆出率40%は後遺障害等級9級,左室駆出率27%は後遺障害等級5級)

損害

平成7年に金融機関を退職,不動産業を始めた。当時51歳。就労の十分な意欲がああった。原告主張の月40万円,年間480万円,向こう9年6ヶ月間の就労が可能であったと思われる。
480×(0.79[5級の労働能力喪失率]-0.56[9級の労働能力喪失率])×(7.1078[9年のライプニッツ係数]+7.7217[10年のライプニッツ係数])÷2= 818万5884円
慰謝料 370万円
弁護士費用 120万円
計 1308万5884円

参考:訴状での請求額
逸失利益 480万円×9.5年×0.79= 3602万4000円
(疑問:480万円はセンサスより安い?,60歳までの就労9.5年の主張も,通常認められる期間よりも短い?,ライプニッツ係数がかかっていない!)
慰謝料 1400万円
計5002万4000円
このうち3600万円を求めて,弁護士費用400万円と合わせて計4000万円の請求。

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宮川光治裁判官の余計な一言

2010年11月16日

日航機ニアミス事故の最高裁棄却決定書の話です。
 事件そのものは,管制官の言い間違いを端緒として,コンピュータによる事故防止機構であるTCASもうまく機能せず,結果的にニアミスを引き起こしたというもので,言い間違いという過失は明らかであり,それがニアミスにつながったという判断は,TCASの介在があったとはいえ,誤っているとも言えないもののようです。事件については町村先生のブログからご確認下さい。
 私はこの事件で被告人らの有罪が確定したことには憂慮をしますが,しかし過失と因果関係の有無という点では,一般的な刑事司法の判断方法からすれば,有罪という結論になることには止むを得ない面があり,その点では高裁判決を出した裁判官らや,棄却決定を出した最高裁裁判官らを責めても仕方がないのかも知れないと思います。
 しかしそうは言ってもこの有罪確定が何とも腑に落ちないのは,言い間違いという,誰しもが日常生活で犯しうるちょっとした間違いが犯罪と認定されたということです。宮川光治裁判官は「緊張感をもって,意識を集中して仕事をしていれば,起こり得なかった事態である」などと断定しています。確かに緊張感をもって仕事をすれば間違いを減らせる可能性はあるかも知れませんが,それでも間違いを完全にゼロにできるとは言い切れないというほうが,むしろ一般的な感覚ではないかと思います。むしろ,緊張感を持っている時こそ,その緊張感が仇となって,かえって間違いに気づかない可能性すらあるのではないかと思われます。「緊張感を持って仕事をすれば,間違いなど起こさない」という考えは,証拠を伴わない単なる空想なのであり,現実に即していない単なる願望に過ぎないのです。もし本当に,緊張感をもって意識を集中して仕事をしていれば,間違いは起こさないものだというのであれば,例えば,2年もかけてお粗末な矛盾判決を含んだ判決を書いた,一宮身体拘束裁判の高裁裁判官らなどは,緊張感を持たずに仕事をしていたということになるでしょう。その裁判官らは法的に罰せられることはないにしても,緊張感をもって意識を集中して仕事していないような裁判官なのですから,左遷されるなどの不利益があってしかるべきだと思われます。
 どんなに重要な場面であっても間違いを起こす場合があることは,それはもう人間の限界なのであって,そのようなヒューマンエラーを低減すべくコンピュータを用いて対策を講じたところ,それがかえって事故を導き出した可能性があったというのが,今回の事件です。そのような事故で,事故の端緒となったからといって,単なる言い間違いをした管制官(およびそれに気付かなかった管制官)だけを刑罰に付すことが,一体何の正義なのか理解不能です。既に述べたように,言い間違いなどというものは日常誰もが起こしうるミスでしかないのですが,それに対して結果が悪ければ刑罰を与えるというシステムは,恐怖政治であり,強権司法なのではないかと考えます。百歩譲って,そのようにすることが安全向上に資するという確証があるのであれば,渋々ながら首肯せざるを得ないのかも知れませんが,単なる言い間違いを罰することが安全向上に資するという証拠はどこにもないでしょう。わざと言い間違いをしようなどという悪意を持った人間は別として,通常業務において言い間違いを犯してしまう瞬間というのは,一種の心神喪失状態であると捉えることもできるでしょう。そのような状態で犯した所業を罰することは,却って人権侵害とすら言えるのではないかと思います。
 業務上過失致死傷罪の存在に異議を唱える人がほとんどいない日本の法曹界は,総じて人権意識が希薄であるかのように,私には映ります。少なくとも,今回のようなシステムエラーが問題となる事故において,その端緒となった被告人を有罪とすることについて,「緊張感を持って仕事をすれば,間違いなど起こさない」などと,実生活上の現実と異なる前提を持ち出して肯定しようという人が,最高裁判事を務めているような国においては,業務上過失致死傷罪などというものは,ナントカに刃物になりかねない恐怖の悪法であると思われます。ま,上記のような意見を書いてしまった宮川光治裁判官も,単に緊張感を持って仕事をしていなかっただけなのかな,と想像することもできますが,そうであればその点は赦すとしても,その現実直視力の貧困は,裁判官として働くには不適格なのではないかと思う次第です。
 単なる言い間違いを刑法犯として処分することに,一点の疑義も抱かないような法律家は,法律家であることを辞めたほうが良いと思います。
 そういえば,落合洋司弁護士が書いたこの記事も酷いものがありますね。恐らく人権意識に乏しいのでしょう。

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日航機ニアミス事故・最高裁決定書読後感

2010年11月3日

医療事故の過失責任とも通じるところがあり,気になっていた事件ですが,最高裁の棄却決定書をようやく読みました。

で,感想なんですが…

・ 言い間違えているのだから,過失があったという判断は正しいでしょう。

・ でも907便機長が自己判断で,航空機衝突防止装置からの指示(RA)に従わずに管制官からの誤指示に従ったことにも,不適切かも知れない面があったわけでしょう。

・ そうすると,過失と損害との因果関係を肯定しないという櫻井裁判官の判断にも一理あるというか,「それって,907便機長の判断が違っていれば事故にならなかったってことじゃね?」ということで,「高度の蓋然性」は否定されるのが普通だと思われますが。(「高度の蓋然性」は民事で多用される用語かな…?)

・ ただ,管制官と907便機長をまとめて起訴されていたとしたらどうなるのでしょう。907便機長の判断は過失には当たらなさそうで,そうすると「過失+非過失行為」と損害との因果関係が認められるわけですが…

・ 宮川裁判官の補足意見の「航空管制官として緊張感をもって,意識を集中して仕事をしていれば,起こり得なかった事態である。」という文言,これはいいですね。「航空管制官」を「医師」に替えても使えるのは勿論ですが,さらに「裁判官」や「弁護士」に替えても使えることは分かっているのかなぁ。まずは一宮身体拘束裁判の裁判長あたりに投げかけたい言葉です。

・ 一番不快な部分は,宮川裁判官の補足意見の,「本件のような行為について,刑事責任を問わないことが,事故調査を有効に機能させ,システムの安全性の向上に資する旨の所論は,政策論・立法論としても,現代社会における国民の常識に適うものであるとは考え難く,相当とは思われない。」として,国民の常識を決めつけている部分です。それは確かにそうかも知れないけれども,なんでそれをわざわざ裁判所が言うのよ? ということと,そもそもそういう「国民の常識」を裁判所がリードしちゃってる面もあるでしょうに,という点。

・ ま,ただし,このような事例を刑事事件に問わないことによって調査機能がより有効になるかならないかという部分は,実際のところ大差は無いのではないかと思います。実際,この事件のあとに対策は取られたわででしょう。そういえば竹の塚踏切事故のあとも,対策は取られたわけでしょう。尤もこのような事例を刑事事件化することが,現場を萎縮させているのは確かでしょうし,そしてそれは大局的にはその領域の安全を損なうことに繋がると思いますが。参考:「業務上過失人権侵害罪」の立法を

・ この事件の場合は,907便機長の迷判断が因果関係判断に介在するので,無罪という判断もあり得たと思うけれども,専門領域の事例では一発アウトの事例もいくらでもあるでしょうから(例えば医療において,塩化カルシウムと塩化カリウムを間違えて投与して死亡させた,とか),もしこの事件が無罪にしていたとしても,それは根本的な解決ではないでしょう。

・ 結局,僕の思いは,「特殊技能を要する職業を,一歩誤れば刑法犯に陥れるような環境下で働かせることは,人権侵害じゃないの?」というところに至るわけです。

・ ところで,「…と思われる」なんていう曖昧な語の連発で有罪認定するってのは,一体どうなのよ?

町村先生が意見を書かれています。これも参考にどうぞ。
http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2010/10/arret-e243.html

平成24年4月27日追記: 宮川光治裁判官の余計な一言もご覧ください。

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医療裁判・医療訴訟
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