2012年4月の記事

裁判記録表紙の取り扱いが杜撰な件

2012年4月23日

今日は東京地裁である裁判記録の閲覧をしていました。

ふと表紙を見ると、原告に対して符号として「甲」、同様に2人の被告に対して「乙」と「丙」が振られていました。これまでの私の経験ではよくあることです。

しかし、その表紙用紙をよく見ると、「当事者欄符号」の凡例として、「原告 甲、被告 乙、参加人 丙、引受人 丁、補助参加人 戊」と注釈が印刷されているのでした。

そうすると今まで見慣れていた、複数の被告に対して、乙、丙、丁・・・との符号を振ることは、凡例に違反しているということになります。

この当事者欄符号は結構重要で、弁論調書の当事者欄にも流用され、表紙を見ないと誰が出頭したのかが分からないほどです。

こういう連綿と続けられている間違いは、大した間違いではないかも知れませんけど、司法慣行ではあるけれども、司法水準ではない例として宜しいでしょうかね。

そもそも、裁判記録の中で表紙の扱いの杜撰さは普段から気になるところで、殴り書きがあるわ、日付が略号で書かれているわ、甚だしくは最高裁では修正にホワイトテープを使うわで、およそ裁判記録としての扱いを受けていないのではないかと、訝しくなるほどです。これも最高裁(平成17年(受)第1612号)でしたが、表紙の「受理・不受理」の欄で、「不受理」にマルがつけられてさらにバツがつけられていて、隣の「受理」にマルがつけられていました。訂正印はありませんでした。

はっきり言ってどうでもいいことなんですが、医療関係者に対しては記録をきちんとするように口酸っぱく言われる法律家が多いので、あんたらはどうなのよ?! と思ってみたりするわけです。

ま、医療訴訟を見る限り、裁判所や原告代理人は、他人(医療関係者)に厳しく自分に甘い傾向があると私は思っているので、嫌味の一つも言ってみたくもなるのだということです。実際に記載しているのは書記官なり事務官の方でしょうがね。

(2012年4月24日、誤記訂正: ×被告人→○被告)

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てんかんの方への運転免許発給

2012年4月13日

てんかんの患者さんによる自動車死亡事故が起きました。

個別の事故のことはさておき、一般的な話をします。

てんかんを持病とする方への免許証が発給されるようになったのは、服薬治療で発作が抑制されていれば大丈夫だから、という理屈のようです。

ところが、そのてんかん治療に用いられる薬の説明書きには、「眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する。」と書かれているというのです。

ということは、発作を抑えようとその薬を飲めば、今度はその薬を飲んでいることによって自動車運転をすべきでないことになります。

てんかんの方が謂れのない差別を受けることは問題ですが、それはそれとして、上記のように危険が予見できるにもかかわらず、厳密な認定を経ずに運転免許を発給することには、大きな問題があると思います。

もし医師が、薬の説明書に背く指導をして、それにより事故を起こすようなことがあれば、被害者から厳しく責任を追求されるであろうことが、昨今の医療訴訟の流れから容易に想像されます。

私は眼科医ですが、視力だって0.7以上でなければ免許が発給されない仕組みになっているのです。てんかんの方への運転免許の発給については、その方法の見直しがされるべきところだと思います。

参考: うろうろドクター先生のブログ

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被害者は8歳、腸生検術後の穿孔で死亡

2012年4月11日

今日傍聴した医療事故の事例です。

被害者は8歳。バイオプシー、内視鏡検査で腸炎を診断され、ステロイド投与で加療していたけれども、それ以前に行なっていたFNA生検で平滑筋腫の疑いとされており、また腸管肥厚も改善しないため、平滑筋肉腫も考えられるとして、腸炎がある程度落ち着いたところで試験開腹を行った。2-3日で退院できる予定が、術後経過が不良で嘔吐など繰り返し、腸炎増悪と思われ、体重減少。毎日エコーを当てて経過観察。術後9日目には腹水を認め吸引1ccで、グラム染色を施行して細菌は認めず。その後も嘔吐など繰り返し体重減少。術後16日目に突然大量の腹水を認め、造影検査施行、腸穿孔が疑われて再開腹。十二指腸に径5-7mm程度の穿孔を認めた。穿孔部位と炎症を認めた大網などを切除し手術終了するも、最初の手術の術後23日目に死亡。術後の病理では線維素性化膿性炎で、腸の平滑筋内にミクロレベルで血栓ができており、大変珍しい症例だったとのこと。

原告側は、最初の試験開腹をすべきでなかったとか、術後9日目に既に腹膜炎であったとか主張し、原告側証人がそれにある程度沿う証言をしていく。しかしその証人、CRPの正常値を知らないし、あまり参考にしないと証言したり、毎日体重を測ってステロイド投与量を調整するのは一般的でないなどと証言するなど、信頼性に疑問を感じさせた。

被告医師は、術前の説明では、麻酔の危険性は説明したと思うが、試験開腹自体の危険性は自分でも認識しておらず、結果もちょっと考えられない結果であったと証言。あと、カルテ記載は不十分だったようで、その点は反省して今は改善しているとのこと。

うーん、傍聴した印象では被告病院の医療水準は非常に高く、むしろ原告側証人の証言に疑問を感じるところが多かったですね。原告側証人は、以前に東京の多摩センターにあった「詐欺まがい」の医院に対する訴訟でも証言したそうで、そこでは活躍したのだろうと思われますが、今回の事件ではむしろ被告病院の診療の正当さを際立たせたように思います。

被害者はイヌであり、腸炎はリンパ球性腸炎でした。原告らはその飼い主、被告病院は動物病院でした。

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心房細動のカテーテルアブレーションで完全房室ブロック合併

2012年4月11日

年度変わって間もない平成24年4月9日。例年、年度初めは裁判がほとんど開かれないので今日もないだろうと高をくくっていたら、予想に反して午前10時から午後5時予定の尋問がありました。

原告は発作性心房細動があり、投薬では抑えきれなくなってきたためにカテーテルアブレーションを希望した方。WPW症候群で、以前にもカテーテルアブレーションを施行されていました。

平成18年に被告病院で、肺静脈隔離術に加えて、三尖弁輪下大静脈峡部線状焼灼術(以下、線状焼灼術)を一期的に施行されたところ、その線状焼灼術中に、突然に完全房室ブロックを来したようです。今はペースメーカーを入れられています。

原告協力医として、東京医科大学八王子医療センターの鵜野起久也准教授が登場です。

大雑把なところを記すと、

・肺静脈隔離術と線状焼灼術を一期的に行うことは許される。

・アブレーションラインが、非常に中隔に寄りすぎている。もうちょっと縦壁側、胸郭側を焼く。一緒にやっている平成10年卒の医師もそう言っている。

・天井が低いから、少し動いただけでも房室結節に当たりうる。

・心内電位の見方に問題がある。これを見たら通電はやめるべきだ。やめていれば完全房室ブロックはなかった。

・指導医としてこういう見方をしているとするとヤバイ。

・チーム全体として注意していれば防げた事故

心電図については、私には荷が重いですが、

・不安定な房室伝導。長くなったり短くなったりしている。一回興奮すると膜電位が下がる。これが出たらやめろと若い医師に言っている。

・dullな電位が見られる。His束近傍にある。

・ノイズがこんなに大きく動くときは、カテーテルの先端が動いている可能性があり、確認しないといけない。

・房室伝導時間が10~20ミリ秒短縮するのは誤差範囲ではない。

・午後4時59分51秒、自律神経興奮の一時的な房室乖離がある。僕なら中止する。

・午後4時59分56秒、午後5時00分09秒、房室伝導回復しているから、午後4時59分54秒の時点では II度またはIII度房室ブロックではない。

・アブレーション、I-IIと III-IVの振幅が小さい。焼けたからだとすれば III-IVは小さくならないが、カテーテルのずれだとIII-IVが小さくなるのでこちらだ。

・心房電位も大きい。

被告病院指導医の主張は、

・dullな電位が His束近傍ということは成書に書いてあることではないと思う。

・午後4時59分31秒~32秒、aVL1,2, His 5,6に電位に変化あり、ノイズがあるのは、カテーテルの干渉、接触と考える。

・その後の変化はなく、透視で位置の変位はない。カテーテルの干渉はよくある。変位がなければ続ける。心電図でも変化がない。

・房室ブロックが出る前の写真、His束よりも随分したにカテーテルがある。

・見かけ上の房室伝導短縮、220ミリ秒→202ミリ秒、これは有意とは取っていない。検査中に判断つけるのは難しい。

・房室乖離が出ている原因は、痛み茂樹、寝室側交感神経↑による。(原告は、洞房結節が傷害されて接合部調律になっていると言っている)

・房室乖離で中止しない。心室が焼けていると判断。blocked PACが出ている。

・房室ブロックかどうかは、1拍では判断しない、できない。数拍見て鑑別して決める。途中でやめるとまた最初から焼灼ラインを引き直さないといけなくなる。

・カテーテル先が中隔に近づきすぎているとの指摘があるが、特に問題がある位置とは考えていない。今回のような房室ブロックは今までにない。

うーん、眼科の私には荷が重いですが、医学論争をそのまま法廷に持ち込んでいるような印象です。つまり、裁判でいえば、最高裁で他の裁判官と異なる反対意見を書いた裁判官に責任を負わせようとするようなものに見えます。

東京地裁民事第14部の高橋譲裁判長では、そのような専門家の判断の機微に触れることなく、有責を出すのではないかという匂いを感じました。

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