令和4年3月11日: 東日本大震災トリアージ訴訟を掲載
被害者は8歳、腸生検術後の穿孔で死亡
2012年4月11日
今日傍聴した医療事故の事例です。
被害者は8歳。バイオプシー、内視鏡検査で腸炎を診断され、ステロイド投与で加療していたけれども、それ以前に行なっていたFNA生検で平滑筋腫の疑いとされており、また腸管肥厚も改善しないため、平滑筋肉腫も考えられるとして、腸炎がある程度落ち着いたところで試験開腹を行った。2-3日で退院できる予定が、術後経過が不良で嘔吐など繰り返し、腸炎増悪と思われ、体重減少。毎日エコーを当てて経過観察。術後9日目には腹水を認め吸引1ccで、グラム染色を施行して細菌は認めず。その後も嘔吐など繰り返し体重減少。術後16日目に突然大量の腹水を認め、造影検査施行、腸穿孔が疑われて再開腹。十二指腸に径5-7mm程度の穿孔を認めた。穿孔部位と炎症を認めた大網などを切除し手術終了するも、最初の手術の術後23日目に死亡。術後の病理では線維素性化膿性炎で、腸の平滑筋内にミクロレベルで血栓ができており、大変珍しい症例だったとのこと。
原告側は、最初の試験開腹をすべきでなかったとか、術後9日目に既に腹膜炎であったとか主張し、原告側証人がそれにある程度沿う証言をしていく。しかしその証人、CRPの正常値を知らないし、あまり参考にしないと証言したり、毎日体重を測ってステロイド投与量を調整するのは一般的でないなどと証言するなど、信頼性に疑問を感じさせた。
被告医師は、術前の説明では、麻酔の危険性は説明したと思うが、試験開腹自体の危険性は自分でも認識しておらず、結果もちょっと考えられない結果であったと証言。あと、カルテ記載は不十分だったようで、その点は反省して今は改善しているとのこと。
うーん、傍聴した印象では被告病院の医療水準は非常に高く、むしろ原告側証人の証言に疑問を感じるところが多かったですね。原告側証人は、以前に東京の多摩センターにあった「詐欺まがい」の医院に対する訴訟でも証言したそうで、そこでは活躍したのだろうと思われますが、今回の事件ではむしろ被告病院の診療の正当さを際立たせたように思います。
被害者はイヌであり、腸炎はリンパ球性腸炎でした。原告らはその飼い主、被告病院は動物病院でした。