カテゴリー「医療訴訟」の記事

顔を洗って出直して来い!

2010年7月3日

2010年4月22日のことです。東京地裁と東京高裁の第1回口頭弁論を傍聴してきました。

一つ目は東京地裁民事第14部,平成22年(ワ)第8189号。原告本人と代理人弁護士が出廷。
裁判長から原告代理人に対して「訴状では,個々の過失と死亡との因果関係を述べていないので,個々の過失とのつながりをもうちょっと述べて頂くと良い」旨の発言あり。

二つ目は東京高裁民事第21部,平成22年(ネ)第364号。開廷直前まで,原告側に弁護士らしき人がいないなぁ…と思っていたら,普段着の比較的若めの男性が登場。

本人訴訟だ…

裁判長「控訴理由書に,1, 2, 3, 4…と理由が述べられていて,7からは, 7, 8, 9, 10 とあるけれども何も書いてありませんが…」
原告「…思いつきませんでした」
裁判長「ではこれは削除ということで宜しいですか?」
原告「はい」
で,地裁で主張は尽くされているということで,裁判長は結審しようと思ったようですが,原告側から「後医の私的意見書を依頼している」との発言があり,弁論続行になりました。しかし私的意見書について,後医は匿名で書くという意向だったようで,その旨を原告が述べると裁判長から「それでは尋問もできないし」みたいなツッコミあり。

ここでふと思うことは,二つ目の「控訴理由を思いつかなかった」本人訴訟の控訴審と,「過失と死亡との因果関係を述べていない」代理人弁護士がついた東京地裁の訴訟とで,ダメさ加減にどれほどの差異があるのだろうか,と思ってしまったわけです。

(続く)

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魅惑の三平方の定理医療訴訟

2010年6月13日

本年6月3日に、本人尋問を傍聴した事件です。

平成22年(ワ)第61号
原告席にはざっくばらんなおじさんが一人。

本人訴訟だ…

秋吉裁判長から、「弁論更新の手続をいたします。趣旨としては・・・」と、弁論更新手続きにまで説明を付けるサービス。それはさておき。

代理人弁護士がいないから、左陪席(ネーベン)が質問を開始。では、スタート。
(いつものことですが、明示した以外にも、途中結構抜けはありますがご了承を)

左陪席
被告から血管の穿刺を受けるようになったのはいつからか?
—— 3年以上経っています。

A病院から別の病院に転院したのはいつ?
—— 昨年11月

転院するまでに被告から受けた血管穿刺の問題点は?
—— 3つのポイントを上げて書面にまとめました。1、血管は細いくだで、血管を刺した注射針が反対面に突き当たり、血管痛を起こす。2、物理でいうテコの原理。穿刺針では把手が力点、穿刺口が支点、針の先端が作用点。入射角によって、高い角度で指すと、入れてすぐグイと下げないとならない。すると支点に力がかかる。透析患者は動脈圧が静脈に流れる。いつも怒張している。私は触って推測するに、血管内径は3mmあるいはそれより細い。支点による力、あとで直角三角形の定理を説明しますが、圧迫性血管痛を引き起こす。以上3点から・・・

裁判長
ちょ、ちょっとよろしいですか、先ほど3点にまとめたとおっしゃられましたが、今のお話では2点しか話されなかったように思うのですが、
—— 1、血管の反対面に突き当たり血管痛を起こす、2、高い角度で刺入することによるテコの原理、3、1と2の複合による。

3点目は1点目と2点目の複合ということですか
—— はい

左陪席
針の角度は何度とすべきか?
—— 私の考えでは10度。しかし10度だと血管が逃げる。分度器などで図ると15度が相当。

自分で計算した結果か?
—— はい。計算の理由を聞いてくれますか?

理由は? (←左陪席優しい)
—— 直角三角形の定理というか、理想的な直角三角形を外れた場合は必ず・・・(途中不明)、三平方の定理だけが一般的な看護師・・・(途中不明)、加法の定理もあるが、これは難しいので必要ないと思う。

穿刺をどこに受けたか
—— 左の前腕と上腕。

入射角は何度くらいだったか?
—— 測ってやろうと思い、分度器をポケットに入れていって・・・

結論を教えてください。
—— 60度を超していたと思う。

根拠は?
—— 自分で測りました。

(原告がえらく身を乗り出しているのを左陪席が見て) 聞こえにくいですか?
—— いや、聞こえるけれど、慎重に聞こうと思いまして。

枕は必要ですか? (腕枕のこと)
—— 15度の場合は不要。丸太を想定した場合(・・・)、仮に30度で刺入したとしても、斜面によって(・・・)枕をあてがわないと無理が生じる。

被告は枕を使ったか?
—— 私が求めて、枕を使ってもらいました。

いつ頃のことか?
—— 被告が刺入するときは場所による。なるべく低い角度から刺してくれと常日頃から言っていた。だんだん角度が低くなっていったが、15度にはならなかった。

被告代理人
甲A1号証、甲A2号証(陳述書)を作成する際に、医学文献は参照したか?
—— 医学文献は持っていません。

参照していない?
—— していない。医学文献に近いものは図書館で見ました。

それを写したということか?
—— いや、写してなんかいません。

被告の刺入角度は、何度くらいまで低くなっていたか?
—— 30度を超していたと思う。最初は60度を超えていたと思う。

60度を超えると、固定できないのではないか?
—— できません。

乙B3号証(恐らく医学教科書の類)に、30度前後が適切と書いてあるが。
—— 直角三角形の定理・・・

いや、この文献の記載はどう思うか?
—— ナンセンスだと思う。

高角度で刺すことにより、対面壁に突き当たると言ったが、そういうことが被告にあったのか。
—— あった。普通なら、圧迫性血管痛は起こりえない。

裁判長
最後に何か言っておきたいことがあればおっしゃって下さい。
—— 三平方の定理で典型的なところを述べます。斜辺イコール、垂直辺の2乗プラス水平線の2乗、の平方根の長さとなる。この辺をしっかりとご理解頂ければと思います。

何の理解だよw

この後、2~3分間、合議するのでお待ちくださいと言って、裁判官3人が裏に消えまして、何の合議かと思ったら、「合議の結果をお伝えします。原告から鑑定の申請がありましたが、採用しないこととしました。」とのこと。こんな事件で鑑定不採用に合議も何もないだろうと思ったけれども、そこら辺は手続き重視の裁判法廷ですね。

「弁論を終結します。判決は7月29日、木曜日、午後1時10分、場所は611号法廷です。○○さんはいらしてもいらっしゃらなくても構いません。いらっしゃらなかった場合には、書面をお送りします。」

最後まで御丁寧でした。

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○○看護師が母を殺したと思っています

2010年5月31日

1年前にちょっとだけ傍聴した事件なんですが、遺族の「私は今でも○○看護師が母を殺したと思っています」という証言が鮮烈で、気になっていた事件を閲覧してきました。
で、結末なんですが、和解でした。見舞金100万円で、病院側の反省文は無し。経過は後回しにして、その証言の最後をまず紹介。

秋吉裁判長
この件に関して、話しておきたいことがあればおっしゃって下さい。
—— いいですか。私の母は91まで生きて、引き上げてきて、乳飲み子の私を今まで育ててくれたんですね。正直者で嘘をつくことが大嫌いで、家に帰りたい、帰りたいって孫に言っていたくらいですので、さぞ無念だったと思います。私は今でも看護師のXさんが母を殺したと思っています。

なんだかなぁ、と思いつつ、原告の準備書面をパラパラ見ていると、また別の「なんだかなぁ」が。

訴状 平成19年12月30日

原告準備書面1 平成20年6月3日
「なお、本件義務違反の具体的内容と結果との因果関係については、文献収集とその内容による検討がなお不十分であるので、次回書面にて再整理を行いたいので、今一度、次回までの準備の時間をお借りしたい。」

最初に検討しろっつーの。つーか一体なにを検討して受任したのかと小一時間。

原告準備書面2 平成20年7月7日
「因果関係について
  次回書面において主張する。」

もう2回目だっつーの。

結局同年9月2日提出の準備書面3で主張が出たものの、こんな調子だから箸にも棒にも引っかからない。弁護士を確認したら、二人とも医療問題弁護団なんでまた驚きですよ。勘弁してよホントに。

以下、訴状と、裁判所作成の争点整理案から抜粋した事実経過等です。


平成19年(ワ)第35365号
原告 B、C
原告代理人 宮城朗、宮川倫子
被告 Y
被告代理人 平沼髙明、平沼直人、加治一毅、柳澤聡、平沼大輔、小高健太郎、金子玄、渡辺周

亡A 明治45年○月○日生、平成16年1月8日死亡、当時91歳

昭和53年から慢性腎不全で通院

平成15年
5月31日 自宅で転倒して整形外科受診。
6月4日 慢性腎不全に対して、人工透析と腹膜透析の説明をした。
10月29日~11月22日 入院、シャント造設。(訴状と争点整理案とに日程の食い違いあり)
11月29日~ 嘔気、食欲低下で内科入院。
12月4日 8:45 病室でベッド上端に座位となっていたところ、病室内のポータブルトイレへ移動しようとして、転倒。靴下を履いていたため滑った様子だった。

平成16年
1月7日 3:35 トイレへ行きたいと看護師を呼び、病室外のトイレへ移動。担当看護師がAのそばを離れた際にAはトイレの個室内で転倒。左大腿骨頚部骨折。
1月14日 左大腿骨人工骨頭置換術(全身麻酔下)
1月16日 リハビリ開始
1月26日 朝レントゲンを施行したところ、左股関節が上方へ脱臼していた。
     9:15 透視下で整復を試行するも困難。
     全身麻酔下に非観血的に整復施行するも筋拘縮が強く困難。
     16:03 全身麻酔下で観血的に脱臼を整復。
1月28日 透析中にシャント閉塞。
1月29日 16:25 全身麻酔下にシャント再作。
2月1日 2:00 Aは強い不穏状態に。レントゲンで人工骨頭脱臼再発を確認。
     4:50 非観血的に整復施行するも不能。
     9:20 全身麻酔下で非観血的に整復。
2月2日 10:40 透析中に意識障害、血圧低下。血中ガス酸素分圧も測定できず。
その後意識状態は徐々に改善するも、2月4日 0:20容態が急変、心停止し1:45分に死亡。

争点
1) 転倒、転落防止義務違反
原告らの主張 3:45~3:50までAを放置した。
被告の主張 他の患者からナースコールがあった。Aの足がトイレで地面に付くことを確認し、終了後にコールをするように指示、Aの了解を得てその場を離れた。予見は不可能だった。
2) 人工骨頭置換術後の脱臼および再脱臼防止の管理義務違反
3) 損害額
慰謝料 1650万円
遺族固有の損害 葬儀代各75万円、固有慰謝料100万円、弁護士費用100万円
原告一人あたり (1650万円÷2)+75万円+100万円+100万円=1100万円

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モナリザもびっくり

2010年5月23日

平成20年1月に一審判決が出た、眼科の医療訴訟です。

http://kanz.jp/hanrei/detail.html?idx=2842

なにが凄いかって、請求金額が5億円超…

遅延損害金を無視して、着手金を一般的な弁護士報酬表にしたがって普通に計算すると、

5億8628万5586円×2%+369万円=1541万5711円

標準的には着手金だけでこの額だということです。

訴訟自体は、これはもう普通に眼科医の意見をちょっと聞けばわかることですが、箸にも棒にも引っかからないような、提訴した瞬間に敗訴が確定しているような無理筋な訴訟と映りました。

どこの誰がどうやってこの裁判を仕掛けたのか。

一審判決の約3週間後、東京地裁で記録を閲覧しようとしたら、なんとこんな勝ち目のない裁判で控訴しているため、記録の整理中だとか。

そのため全部記録を閲覧することはできず、とりあえず判決文だけを閲覧することに。

そしたら、

被告には、いつもお世話になっている先生方の名が… (汗)

そして、原告側弁護士は…
伊藤芳朗 …
聞いたことがない名前なので早速ググる
なんかいろいろと書いてあります。
彼の事務所の報酬規定(現在は削除されているようです)は、一般的な報酬規定+消費税になっているので、遅延損害金を無視して普通に計算すると、
5億8628万5586円×2.1%+387万4500円=1618万6497円
となるようです。すごいですね。

あ、でも wikipediaで以前に書いてあった、「金と名声がほしくて弁護士になった」という考えは、否定すべきものではないと思います。

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骨髄減圧術・説明不足の合併症訴訟

2010年5月13日

 平成21年2月4日に傍聴した事件です。東京地裁民事第35部、事件番号平成19年(ワ)第16046号。骨髄減圧術という、痛みをとるための特殊な治療に関する事件です。詳細はこちら

 原告Fは、A病院、平成18年8月29日初診。「痛くて歩けない」と。
 同年9月19日および12月5日に、骨髄減圧術を施行された。9月19日の治療ではある程度効果があったがその後効果が消失。
12月5日の骨髄穿刺で非常に強い圧がかかり、出血。臀部血腫となって歩くこともできず、しばらく入院となった。その期間の収入減少などについての請求で、後から確認したところ請求額2700万円余り。同意書はなく、危険に関する説明は不十分だった模様。
 病院側弁護士が尋問している最中に、原告側弁護士から「異議あり!」を連発されていた。その原告側弁護士は、例の弘中淳一郎弁護士とその娘である弘中絵里弁護士の揃い踏み。弘中絵里弁護士は父親譲りか、尋問中の目つきと発声が鋭く映った。内容にも判決にも興味深い一戦。久しぶりに歯ごたえのある訴訟を見たという印象。

 以下は傍聴メモですが、かなり杜撰です。参考までに。
 Bは術施行者、Cはその師匠で事件後に病院辞任しその後死亡、Dは同僚?、Eは別の病院で骨髄減圧術を手がけている証人。Fは原告本人です。

原告本人尋問

(質問書き取りなし)
—— 原告が知らないうちにやってしまった。話がないうちにやられた。9月19日は腰から下が痛くて病院に行った。減圧術の話は聞いていない。

乙A3号証(カルテ)18ページ、「10月3日、前回減圧術で効果+」と書いてある。効いたか効いていないかを言ったか否か?
—— 記憶にない。

12月5日にも骨髄減圧術をやった。これもはじめから神経根ブロックだけでは効かないので2回にわたって、10月27日と11月21日に打ち合わせをしたが。
—— 記憶にない。私はいつもの神経根ブロックだと思っていた。

減圧術を医師に申し入れたことはあったか?
—— ない。

11月7日に減圧術の申し入れをしたことは?
—— 減圧術自体を私が理解していないので、申し入れた憶えもない。

「予 寛骨臼蓋減圧術」と(書いてある?)。打ち合わせをしたことは?
—— 記憶にない。

減圧術後はどうだったのか?
—— 2~3日はよかった。日にちが経つにつれて元に戻ってしまう。退院した後のほうが(痛くて)50mくらいしか歩くことができなかった。

脊柱管狭窄症を持っている。

8月29日、この日の検査では300歩だった。
—— 背中が痛くて。

12月5日から12月26日の間に脊柱管狭窄症の治療は何回受けたか?
—— 1回しかやっていないんじゃないですか?

もっとやっているんじゃないですか?

内出血の痛みが止まったのは?
—— 退院の2~3日前。内出血は脊柱管狭窄症の治療から来ている。

平成18年10月3日、減圧術は効果があった、減圧術との意識はないにしても軽快したと言ったか?
—— 言った。(峰村注:さっきは「記憶にない」って言ったのに…

裁判長
模型を用いての説明は?
—— 2~3分。良くわからなかった。

————————
D医師尋問
平成18年、診察開始時は?
—— C医師→亡くなられた。

薬の一覧表は渡されたか?
—— 全く見ていない。

9月19日、減圧術。
—— 詳細は陳述書に。

いつ、どこで、減圧術についての説明は?
—— 当日。5番椎体に穴あけをすれば痛みが楽になる、と。12月5日は、1人目の患者で時間がかかって大変だった。いらいらした。有効率、合併症発症率の説明はしていない。

手順の話は?
—— していない。

臀部血腫→硬膜外ブロックをしていたが。
—— はじめは非常によく効いていたが、だんだん効かなくなってきた。脊柱管狭窄症。

第2腰椎神経根やってみてどうだった?
—— 仙骨ではなく第2腰椎疼痛と考え、著効した。

平成19年2月1日、退院前に脚が悪かった。原因は?
—— 臀部血腫。

平成19年2月13日に悪化していたが。
—— 驚いた。

原告代理人。弘中絵里
腰下の痛み。大抵の方は5~6回受けている。

C医師は12月に、「もう辞めます」と言って来なくなった。

骨髄減圧術はF氏の合併症以来止(と)められている。B医師は12月5日で終了。C医師は他院ではやっていた。

メリット、合併症のパンフレットは?
—— みんなに配るまでは渡していない。合併症については良くわからなかった。あまり書かれていないと思う。口頭のみだった。

同意書は?
—— 同意書は取っていません。

求めた治療は?
—— C医師は減圧術ばかりをやっていた。

診察室の広さは?
—— 4~5畳くらいか。

減圧術についてF氏は知っていたか?
—— 「穴あけ」という言葉は知っていた。

C医師がしたのではない。被爆して手が黒くなっている。自分ではできない。

対症療法か?
—— 中間。

効果は?
—— 2~3ヶ月。穴が塞がるまで。

F氏はお尻の痛みを伝えなかった。

9月19日、脊柱管狭窄症の治療ではないが効いたので、第2腰椎に効いても寛骨には効くとは限らない。
仙骨ブロックをしても痛みがあったので減圧した。

痛みを2つに分類。

ペインクリニックでは一般的。C医師の圧痛点診断法。

歴史は、若杉医師、40年。浅い。

治療法もどんどん変わる。

神経根性疼痛、骨膜性疼痛。

臀部に血腫ができた例は、F氏より前に1例あった。寛骨臼蓋に穴を開けた。開けた場所は…レントゲンを見ていません。

かんこつ臼蓋に穴を開けた、という論文はなかったか?
—— ありませんでした。訴訟には出していません。

こんな大きな血腫ができるとは考えていませんでした。こんなに強い疼痛が起きるとは考えていませんでした。12×8×17cmの血腫が筋肉内に。12月 13日が一番大きかったです。

12月2日以降、ずっと出血し続けていたのか?
—— 可能性はあります。

12月11日にご家族に説明。

出血がおきてから。

想像もつかない、理解できないことだった。初めての経験でした。私が刺して疼痛が非常に強くなり、私も舞い上がっていました。骨髄が、今回は噴いた感じでした。

説明時は「動脈を刺したと思う」と。
—— 何が起こっているのかわからなかった。少し血腫が。

動脈の圧が体重をかけないと入らないとか、押さえていないとポンと戻ってくるとか、信じられない事態だった。骨髄圧がメチャメチャ高かった。血腫がびまん性に拡大された。

骨髄圧が非常に高かった症例は?
—— C医師の1500症例中2例でした。

投薬一覧は?
—— 見ていません。見ていれば書いていました。

———————–
E医師
骨髄減圧術の有効性は?
—— 治る症例をたくさん経験した。重篤な合併症は経験していない。

減圧術はいつから?
—— アイデア自体は新しいものではない。それを復興したものだ。

血腫は?
—— 経時的に小さくなる。特殊な例を除いて治癒する。

本件は?
—— 血腫発生後も病院内で診ている。危険は少なく、生命の危険はなかった。

で、結末なんですが、250万円での和解でした。説明などについて、いろいろと考えさせられる事例でした。

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医療裁判・医療訴訟
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