○○看護師が母を殺したと思っています

2010年5月31日

1年前にちょっとだけ傍聴した事件なんですが、遺族の「私は今でも○○看護師が母を殺したと思っています」という証言が鮮烈で、気になっていた事件を閲覧してきました。
で、結末なんですが、和解でした。見舞金100万円で、病院側の反省文は無し。経過は後回しにして、その証言の最後をまず紹介。

秋吉裁判長
この件に関して、話しておきたいことがあればおっしゃって下さい。
—— いいですか。私の母は91まで生きて、引き上げてきて、乳飲み子の私を今まで育ててくれたんですね。正直者で嘘をつくことが大嫌いで、家に帰りたい、帰りたいって孫に言っていたくらいですので、さぞ無念だったと思います。私は今でも看護師のXさんが母を殺したと思っています。

なんだかなぁ、と思いつつ、原告の準備書面をパラパラ見ていると、また別の「なんだかなぁ」が。

訴状 平成19年12月30日

原告準備書面1 平成20年6月3日
「なお、本件義務違反の具体的内容と結果との因果関係については、文献収集とその内容による検討がなお不十分であるので、次回書面にて再整理を行いたいので、今一度、次回までの準備の時間をお借りしたい。」

最初に検討しろっつーの。つーか一体なにを検討して受任したのかと小一時間。

原告準備書面2 平成20年7月7日
「因果関係について
  次回書面において主張する。」

もう2回目だっつーの。

結局同年9月2日提出の準備書面3で主張が出たものの、こんな調子だから箸にも棒にも引っかからない。弁護士を確認したら、二人とも医療問題弁護団なんでまた驚きですよ。勘弁してよホントに。

以下、訴状と、裁判所作成の争点整理案から抜粋した事実経過等です。


平成19年(ワ)第35365号
原告 B、C
原告代理人 宮城朗、宮川倫子
被告 Y
被告代理人 平沼髙明、平沼直人、加治一毅、柳澤聡、平沼大輔、小高健太郎、金子玄、渡辺周

亡A 明治45年○月○日生、平成16年1月8日死亡、当時91歳

昭和53年から慢性腎不全で通院

平成15年
5月31日 自宅で転倒して整形外科受診。
6月4日 慢性腎不全に対して、人工透析と腹膜透析の説明をした。
10月29日~11月22日 入院、シャント造設。(訴状と争点整理案とに日程の食い違いあり)
11月29日~ 嘔気、食欲低下で内科入院。
12月4日 8:45 病室でベッド上端に座位となっていたところ、病室内のポータブルトイレへ移動しようとして、転倒。靴下を履いていたため滑った様子だった。

平成16年
1月7日 3:35 トイレへ行きたいと看護師を呼び、病室外のトイレへ移動。担当看護師がAのそばを離れた際にAはトイレの個室内で転倒。左大腿骨頚部骨折。
1月14日 左大腿骨人工骨頭置換術(全身麻酔下)
1月16日 リハビリ開始
1月26日 朝レントゲンを施行したところ、左股関節が上方へ脱臼していた。
     9:15 透視下で整復を試行するも困難。
     全身麻酔下に非観血的に整復施行するも筋拘縮が強く困難。
     16:03 全身麻酔下で観血的に脱臼を整復。
1月28日 透析中にシャント閉塞。
1月29日 16:25 全身麻酔下にシャント再作。
2月1日 2:00 Aは強い不穏状態に。レントゲンで人工骨頭脱臼再発を確認。
     4:50 非観血的に整復施行するも不能。
     9:20 全身麻酔下で非観血的に整復。
2月2日 10:40 透析中に意識障害、血圧低下。血中ガス酸素分圧も測定できず。
その後意識状態は徐々に改善するも、2月4日 0:20容態が急変、心停止し1:45分に死亡。

争点
1) 転倒、転落防止義務違反
原告らの主張 3:45~3:50までAを放置した。
被告の主張 他の患者からナースコールがあった。Aの足がトイレで地面に付くことを確認し、終了後にコールをするように指示、Aの了解を得てその場を離れた。予見は不可能だった。
2) 人工骨頭置換術後の脱臼および再脱臼防止の管理義務違反
3) 損害額
慰謝料 1650万円
遺族固有の損害 葬儀代各75万円、固有慰謝料100万円、弁護士費用100万円
原告一人あたり (1650万円÷2)+75万円+100万円+100万円=1100万円

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