魅惑の三平方の定理医療訴訟

2010年6月13日

本年6月3日に、本人尋問を傍聴した事件です。

平成22年(ワ)第61号
原告席にはざっくばらんなおじさんが一人。

本人訴訟だ…

秋吉裁判長から、「弁論更新の手続をいたします。趣旨としては・・・」と、弁論更新手続きにまで説明を付けるサービス。それはさておき。

代理人弁護士がいないから、左陪席(ネーベン)が質問を開始。では、スタート。
(いつものことですが、明示した以外にも、途中結構抜けはありますがご了承を)

左陪席
被告から血管の穿刺を受けるようになったのはいつからか?
—— 3年以上経っています。

A病院から別の病院に転院したのはいつ?
—— 昨年11月

転院するまでに被告から受けた血管穿刺の問題点は?
—— 3つのポイントを上げて書面にまとめました。1、血管は細いくだで、血管を刺した注射針が反対面に突き当たり、血管痛を起こす。2、物理でいうテコの原理。穿刺針では把手が力点、穿刺口が支点、針の先端が作用点。入射角によって、高い角度で指すと、入れてすぐグイと下げないとならない。すると支点に力がかかる。透析患者は動脈圧が静脈に流れる。いつも怒張している。私は触って推測するに、血管内径は3mmあるいはそれより細い。支点による力、あとで直角三角形の定理を説明しますが、圧迫性血管痛を引き起こす。以上3点から・・・

裁判長
ちょ、ちょっとよろしいですか、先ほど3点にまとめたとおっしゃられましたが、今のお話では2点しか話されなかったように思うのですが、
—— 1、血管の反対面に突き当たり血管痛を起こす、2、高い角度で刺入することによるテコの原理、3、1と2の複合による。

3点目は1点目と2点目の複合ということですか
—— はい

左陪席
針の角度は何度とすべきか?
—— 私の考えでは10度。しかし10度だと血管が逃げる。分度器などで図ると15度が相当。

自分で計算した結果か?
—— はい。計算の理由を聞いてくれますか?

理由は? (←左陪席優しい)
—— 直角三角形の定理というか、理想的な直角三角形を外れた場合は必ず・・・(途中不明)、三平方の定理だけが一般的な看護師・・・(途中不明)、加法の定理もあるが、これは難しいので必要ないと思う。

穿刺をどこに受けたか
—— 左の前腕と上腕。

入射角は何度くらいだったか?
—— 測ってやろうと思い、分度器をポケットに入れていって・・・

結論を教えてください。
—— 60度を超していたと思う。

根拠は?
—— 自分で測りました。

(原告がえらく身を乗り出しているのを左陪席が見て) 聞こえにくいですか?
—— いや、聞こえるけれど、慎重に聞こうと思いまして。

枕は必要ですか? (腕枕のこと)
—— 15度の場合は不要。丸太を想定した場合(・・・)、仮に30度で刺入したとしても、斜面によって(・・・)枕をあてがわないと無理が生じる。

被告は枕を使ったか?
—— 私が求めて、枕を使ってもらいました。

いつ頃のことか?
—— 被告が刺入するときは場所による。なるべく低い角度から刺してくれと常日頃から言っていた。だんだん角度が低くなっていったが、15度にはならなかった。

被告代理人
甲A1号証、甲A2号証(陳述書)を作成する際に、医学文献は参照したか?
—— 医学文献は持っていません。

参照していない?
—— していない。医学文献に近いものは図書館で見ました。

それを写したということか?
—— いや、写してなんかいません。

被告の刺入角度は、何度くらいまで低くなっていたか?
—— 30度を超していたと思う。最初は60度を超えていたと思う。

60度を超えると、固定できないのではないか?
—— できません。

乙B3号証(恐らく医学教科書の類)に、30度前後が適切と書いてあるが。
—— 直角三角形の定理・・・

いや、この文献の記載はどう思うか?
—— ナンセンスだと思う。

高角度で刺すことにより、対面壁に突き当たると言ったが、そういうことが被告にあったのか。
—— あった。普通なら、圧迫性血管痛は起こりえない。

裁判長
最後に何か言っておきたいことがあればおっしゃって下さい。
—— 三平方の定理で典型的なところを述べます。斜辺イコール、垂直辺の2乗プラス水平線の2乗、の平方根の長さとなる。この辺をしっかりとご理解頂ければと思います。

何の理解だよw

この後、2~3分間、合議するのでお待ちくださいと言って、裁判官3人が裏に消えまして、何の合議かと思ったら、「合議の結果をお伝えします。原告から鑑定の申請がありましたが、採用しないこととしました。」とのこと。こんな事件で鑑定不採用に合議も何もないだろうと思ったけれども、そこら辺は手続き重視の裁判法廷ですね。

「弁論を終結します。判決は7月29日、木曜日、午後1時10分、場所は611号法廷です。○○さんはいらしてもいらっしゃらなくても構いません。いらっしゃらなかった場合には、書面をお送りします。」

最後まで御丁寧でした。

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