令和4年3月11日: 東日本大震災トリアージ訴訟を掲載
医療裁判傍聴記
医療裁判傍聴および記録閲覧を通じて得た知見をはじめ,その他裁判関係の話題をご紹介。このブログでラフ・スケッチを掲載し,後日正式記事としてまとめた場合は,拙サイトの医療裁判・医療訴訟コーナーに上梓します。
8/15, 8/20
2008年8月15日
63年前の8月15日,玉音放送が流れたといいます。
我々は,8月20日,福島地方裁判所で,判決を聴きます。
そもそも比較するようなものではないのですが,なぜか重なるものを感じるここ数日です。
8月20日の大野病院事件の判決に注目してください。
医療ミス・司法ミス
2008年5月21日
備忘録的に書いておきます。北海道新聞より
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/93337.html
誤って執行猶予判決 地裁北見支部、適用外の罰金額(05/17 15:41)
【北見】釧路地裁北見支部が言い渡した刑事裁判の有罪判決で、刑法では適用できないケースなのに執行猶予を付けていたことが、十七日までに分かった。同地裁は誤りを認め、「あってはならないミス。おわびし、再発防止に努める」としている。
同支部の植田智彦裁判官は十五日の判決公判で、出資法違反などに問われた被告三人に実刑を含む有罪判決を下した。このうち一人に「懲役二年、罰金百五十万円、執行猶予五年」を言い渡した。
しかし、刑法は執行猶予を付けられる場合を「三年以下の懲役もしくは禁固または五十万円以下の罰金」と規定。今回の額の罰金にも執行猶予を付けたのは、規定外だった。
同地裁によると、判決後に地裁内で判決内容を精査した結果、誤りが分かった。判決は言い渡し時点で効力が生じるため、変更には控訴が必要。同地裁は十六日に釧路地検と弁護人に事情説明しており、「今後の対応を待ちたい」としている。
医療で同レベルのミス(例:投薬量間違い)をしたら、患者さんが一人亡くなってもおかしくないでしょう。その場合医師は、刑罰、賠償責任、行政処分(医師免許停止)などをすべて喰らう可能性があります。
この判決ミスをした裁判官の処分・責任はどうでしょう。個人にかかる責任は全くないでしょう。この落差はなんなんでしょうね。
腑に落ちないものを感じます。いや、この裁判官を罰せよというのではなく、医師への過剰な責任追及について。
医療裁判の判決のうち、医学的な部分は参考にすべきでない
2008年5月4日
以下の記事にコメントした医療問題弁護団の鈴木利広という方は、医療裁判の判決における医学的な事柄に関する指摘が、医療事故を減らすとは限らず、逆に医療事故を増やすことがあることをわかっていないようです。
2008年5月4日、NIKKEI NETより
——————————–
過失認定の出産医療事故、4割が陣痛促進剤使う
出産時に胎児が死亡したり、脳性まひになった医療事故で、裁判所が医療機関側の責任を認めたケースの4割は陣痛を促進するための子宮収縮剤を使っていたことが、医療問題弁護団(鈴木利広代表)の調査で分かった。裁判所は不適正使用のほか、胎児の心拍を監視する装置を使わなかったミスを認定しており、弁護団は「判決の指摘を再発防止に役立ててほしい」と求めている。
事故後に妊婦や胎児の状態や薬剤の投与量などを書き直すカルテの改ざんを認定されたケースも1割強あった。(07:00)
——————————-
少し前に書いた『裁判所が拡大に加担した「薬害肝炎」』のような例があります。
http://kaleidoscopeworld.at.webry.info/200801/article_3.html
恐ろしいことは、判決が医療事故を増やすときはその規模が甚大になる場合があるということです。
医療問題弁護団問題は、引き続き追いかけて行きたいと思います。
亀田テオフィリン中毒事件
2008年2月25日
今日、亀田テオフィリン中毒事件の症例検討会が開かれました。
事件は、千葉県の亀田総合病院という大きな病院で、テオフィリンという喘息の薬を常識外の大量服用したと思われる救急患者が、医師の努力むなしく死亡したという事例です。遺族が医療ミスだとして裁判を起こし、東京高等裁判所の判決で7000万円あまり(+利息)の損害賠償の判決が下りています。
その症例検討会を聴いてきたわけですが、亀田総合病院の治療には問題がなく、医療ミスなどというものとは無縁の、亡くなるべくして亡くなった事例だと確信しました。
それなのになぜ裁判では病院が負けたかといえば、一言で言えば裁判自体がお粗末だからです。この裁判の最大のお粗末さは、この裁判の病院側敗訴を決定付けた鑑定書を書いた医師を、裁判所で証人尋問していないことです。鑑定書を書いた医師たちが書きたい放題書いておきながら、反対側からの質問を十分に受け付けていないのです。(ちなみに鑑定書きは公務でしょうから、実名公開しても構わないと思うのですが、さしあたりは控えておきます。)
裁判がお粗末であるために、本来なら他の人々の医療使われるべき7000万円あまり(+利息)のカネが、本来受け取る資格がないと思われる人々に流れていきます。みんなのために使われるべきカネが、ごく一部の特定の人々に持っていかれるのです。
こんなことがまかり通るようでは医療が崩壊するのは当然です。
ところで、この裁判の原告側弁護士として福地直樹氏が筆頭に書いてあります。C型肝炎訴訟にもかかわる、医療問題弁護団に属する弁護士です。私は自分の中で勝手に「医療破壊弁護団」と読み替えています。
症例検討会の様子はこちらをご参照ください。
http://lohasmedical.jp/blog/2008/02/post_1088.php
判決文についてはこちらをご参照ください。
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20071225
REMEMBER 2.18 ~第2章~
2008年2月18日
福島大野病院事件で医師が逮捕されて2年がたちました。
「癒着胎盤の経験もなく、帝王切開で女性を死に至らしめた」との容疑で医師が逮捕され刑事訴訟になり、長い時間をかけて結審に向けて動いています。
刑事裁判でのやり取りを読めばわかりますが、逮捕された医師になんら落ち度はなく、女性は出産にまつわる自分自身の病気が原因で亡くなったのであることがほぼ確実です。
http://lohasmedical.jp/blog/2007/11/101.php
例えば、大怪我をした人が病院に駆け込んだからといって、必ず助かるものではないですし、ほかの病気だって同じことです。病気というのはそういうものです。医師の努力むなしく命を落とすことなど日常茶飯事です。
要はこの事件もそういうものだったということです。それを医療過誤だと糾弾され、逮捕・起訴されるようでは、医療行為などというものをやる人がいなくなるのは当然と言えます。
この女性の死亡原因究明はなかなか難しいところがあるようですが、逮捕された医師の医療行為が妥当であったことは、学会シンポジウムなどで検討すれば、それこそ十数分~数時間程度で明らかになる簡単なものだったと思われます。
ところがそんな簡単な結論を出すのに、逮捕・起訴して何年も裁判に時間をかけて、当該医師の医師生命を縮めて、その他大勢の医師を恐怖に落とし入れたため、危険を伴う分野から医師が逃げる結果となり、医療崩壊を急速に推し進めました。当の福島県では、県立病院からついに産婦人科が完全撤退することとなったそうです。
それにも関わらず亡くなった女性の遺族は、終盤に突入した法廷ですら、
「言い訳や責任転嫁せず、何をミスしたかを真正面から受け止め、責任を取ってほしい」
「なぜ妻が死んだのか疑問に思う。自分の行動・言動に責任を持つのは大人の人間として当然のことだ」
「○○先生の行為は許せない」
などと、相変わらず医師を非難するばかりなのです。これらの発言が、事件を見守る全国の医師をさらに激怒させています。
女性が亡くなられたことは本当に残念なことですが、医療は病死を完全に防げるものではありません。いまだに医師の責任を追及しようという遺族には、病死であることを認めることなく医療過誤だと誤信して、警察に相談して逮捕・起訴に結びつけ、今の医療崩壊の最大の引きがねを引いた責任を取って欲しいとすら思います。
一方検察の振る舞いについては、昨年も書きましたが最後まで監視し続ける必要があります。また、実名公開される刑事事件にならって、この事件を起こした人物として、当時の福島地検の最高責任者であった宮成正典(みやなり まさのり)検事正の名前は、記録しておいて良いのではないかと思います。
また、この事件で医師が逮捕・起訴されることが不当であったこと、そしてこの遺族の態度が医療崩壊の原因になっていることを、医療関係者でない一般の人々が理解しない限り、現在進行中の医療崩壊は止まることはないと言っても過言ではないと思います。
次はあなたが医療崩壊の影響を受ける番かもしれません。