老健で高齢者の脱水を見逃し有責となった訴訟

2020年9月25日

老健施設で73歳女性の脱水を見逃し,敗血症性ショックで亡くなり,裁判で3000万円余りの賠償を認められた事件です。事件番号は東京地裁平成28年(ワ)第13150号。
 
原告は亡くなった73歳女性の遺族で,被告は入所していた被告施設(老健)と,救急対応をした別組織の被告病院でした。一審では被告施設と被告病院双方が有責となりましたが,控訴審は被告施設のみ有責となりました。
 
この記事は,事例紹介のための記事です。後日削除する可能性があります。

2014年

1月6日,被告施設に入所。既往:下肢閉塞性動脈硬化症,2型糖尿病,慢性腎機能低下,高血圧,高脂血症,慢性うっ血性心不全等。慢性下痢の状態。軽度認知症あるもADLは見守りないし一部解除レベル。体重39~43kg程度。3食完食。お茶120ml×4回のほか,ペットボトルのお茶を1日1000mL。排尿1日3~8回,排便1日2~7回。軟便,泥状便,不消化便,水溶便がほとんど。ジャヌビア,ラシックス,アルダクトンA,ブロプレス,アロシトール,プレタールOD,クレストール,ラックB-Nを服用。

 

11月11日 少量の軟便1回,多量の水様便1回,排尿3回

 

11月12日 多量の普通便1回,多量の水様便1回,少量の泥状便1回,多量の不消化便1回,排尿8回。

08:30頃 多量の嘔吐。BT 36.4,PR90, BP99/64, SPO2 98%

その後吐き気はなくなるが,下痢続く。口渇,食欲不振,倦怠感などあり。

 

11月13日

多量の水様便あるいは不消化便2回,排尿3回

10:00頃 BT36.7, PR68, BP100/62, SPO2 98%

10:00頃 口渇を訴えお茶を飲む。看護師の指示で朝食は禁食。医師の判断で昼食から全粥と刻み食に変更。

14:00頃 昼食,通常量の半分の昼食を3割しか食べず。

17:30頃 夕食は食べず。500mLの補液を施行。

 

11月14日

少量の軟便1回,多量の粘液便1回,多量の泥状便1回,排尿4回

10:00頃 BT36.3, PR 72, BP138/80, SPO2 98%

朝食食べず,口渇を訴えて時々飲み物を飲んだ。

11:45頃 500mLの補液。昼食は食べず,お茶を1杯飲んだ。ボーッとした様子。

15:00頃 BT36.5, PR 60, BP93/67, SPO2 97%。間食,お茶は拒否。活気なし。

20:30頃 BT36.7, PR 106, BP128/87, SPO2 85%。うつろでボーッとしていた。声掛けに反応するがすぐ閉眼。看護師判断で酸素3L投与決定。SPO2は一時93~94%に。その後85~98%の間で上下。

22:55頃 胸苦あり。SPO2 85%。酸素投与を5Lに増量。時折体が痙攣様にぴくつく。

23:30頃 看護師判断で病院への搬送を決定。被告病院以外の2施設に打診したが断られ,被告病院に搬送決定。

 

11月15日

排便,排尿状況不明。

00:30頃 点滴をつないだまま,被告施設の看護師が付添って搬送。

00:55頃 被告病院を受診(それまで受診歴なし)。胸部X-p施行。酸素3L投与にてSPO2は手指で92%,足指で100%。BT 36.7, PR 93, BP 139/114. 苦しくないか尋ねられ,特に大丈夫と返答。肺雑音,心雑音認めず。胸部X-pも異常陰影,心拡大認めず。呼吸状態安定。足のむくみ認めず。被告病院医師:意識レベル問題なし,心疾患肺疾患否定。被告施設に帰した。この間被告病院の医師は,付添していた被告施設の看護師に病状経過をしっかり尋ねなかった。

01:30頃 点滴漏れあり,抜針。

05:00頃 BT 36.4, PR 103, BP 107/94, SPO2 83%,その後は80~96%で推移。

08:00頃 朝食食べず,内服薬服用せず。

09:30頃 BT 37.6, PR 90, BP 78/67, SPO2 80%,意識状態悪化(レベル I-3),酸素投与2L再開。外部受診必要と判断。被告病院以外の4病院に断られ,救急車を要請し,結局12:00頃,再度被告病院に搬送することを決定。

12:23頃までに,ECG,採血,胸部X-p,胸部・頭部CT施行。診察。BT 37.4, PR 106, BP 63/43, SPO2 86%,その後BT 37.3, PR 49~54, BP 72/51, SPO2 73%。胸部X-p,胸部CTで気管支炎を疑い,またWBC 26000, TropT陽性から,急性心筋梗塞を疑い,13:25頃,災害医療センターに転送決定。他の生化学 BUN 176.9, Cre 11.75, UA 11.3等。

搬送中,酸素10L ,SPO2 77%から97%に上昇。

13:39頃 災害医療センターに到着。BT 36.6, PR 102, BP 80/42, SPO2 測定不能。心雑音なし,呼吸音正常。貧血,口腔内乾燥,末梢冷感著明。

約2000mL急速輸液,昇圧剤投与。ECG,採血,尿,頭部CT,胸腹部CT施行。心原性の病態を否定し,脱水及び尿路感染等による敗血症によるショック状態と判断。

73%敗血症性ショック,循環血漿量減少生ショック,慢性腎不全急性増悪等と判断。血栓形成傾向となり塞栓症,腸管壊死につながっていると指摘。

 

救命病棟に入院。入院中 BT 34.3~36.8,人工呼吸器,人工透析管理,2698mL~6005mL/日の補液,昇圧剤,輸血等施行。VT,PSVT発症に対しカウンターショック施行等。

 

11月19日 死亡。死亡診断書の直接死因欄には敗血症性ショックと記載あり。

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