令和4年3月11日: 東日本大震災トリアージ訴訟を掲載
最高裁の医療側逆転勝訴判決が、裁判所判例集に収載されない
2016年9月8日
平成28年7月19日に、最高裁で(わたしの知る限り)久しぶりに医療訴訟の判決が出ました。以下のように報道されています。
なかなか興味深い事例で、裁判所判例集に収載されるのを待っているのですが、一向に収載される気配がありません。しびれを切らして、自ら記録の閲覧に行ってくる予定です。
ここからはちょっと専門的な話になってしまうのですが、この報道を読む限りでは、「患者が適切な医療を受けられなかった場合に医師が責任を負うかどうかは、その行為が著しく不適切な事案に限って検討する」という平成23年2月25日第2小法廷の判例に違反したと読めるのですが、しかしながらこの事件の最高裁での事件番号は平成26年(オ)第1476号となっています。最高裁判例違反を理由として上告審を求める場合には、上告理由とはならず上告受理申立て理由として認められることから、そうであれば事件番号は「(オ)」ではなく、上告受理申立てされたことを示す「(受)」が付されるとかんがえられるのですが、そうはなっていません。この点どのように処理されたのか、非常に興味深いところです。
高裁の判決文は既に閲覧しており、総じてレベルの低い(と言うか患者側主張を丸写したような)判決文になっているのですが、特に気になったのは次の点です。1)医師の注意義務違反について、「術後出血の徴候が認められたら速やかに頭部CTを行って、出血の有無を確認すべきだった」との旨を述べる一方で、「術後の容体の変化をある程度時間をかけて観察しなければ・・・容易ではなかった」と、ある程度時間をかけて観察することもやむを得ない旨述べており、この点が理由の食い違いがあるとも取れること。2)因果関係は認めていないながらも、過失が無ければ障害の程度を少なく抑えることができた可能性があるとしており、形式的には適切な医療を受けられなかったことに対する期待権だけによる責任認定になっておらず、報道の最高裁判示と整合しないこと。
これらについて、よく確認してきたいと思います。