こういう受任はどうなんですか…

2010年7月4日

昨日の報告の続きで、記録を閲覧した結果です。

裁判長が「訴状では,個々の過失と死亡との因果関係を述べていないので,個々の過失とのつながりをもうちょっと述べて頂くと良い」と述べられていたわけですが、確かに過失はせっせと書いたのに、因果関係は全くガサツな書き方です。裁判長の言いたい気持ちも分かります。

が、それを置くとしても、この提訴はひどいでしょう・・・

この事件の原告、亡くなった方の婚約者とは言っているけれども、そもそも慰謝料請求権があるのでしょうか? あとから調べてみたところ、親族以外への慰謝料が認められることはそうそうないようなんですが、この事件のように、知りあってから15年も経過していながら結婚もせず、さらには同居しているわけでもなく、お金を借りるにあたって借用書を書き、婚約の証拠が牧師さんの陳述書だけで、遺族である母(亡き妹の相続人でもある)以外の者が慰謝料を求めて提訴するというのは一体なんなのかの疑問です。

そういえば去年、福岡地裁でもなんだかなあ、と思う事例を見ました。被告男性の子(加害者・未成年)が,原告の母(被害者)を自転車で跳ねたという事件で、その被害者の治療費を被告に請求しようと提起した事件でした。しかしそれは跳ねられた被害者(原告の母)が提訴するのが普通じゃないですか。さらに聴いていると、実は被告は離婚していて、加害者(被告の娘)の親権は被告ではなく母親が持っているそうなorz…

ま、そんな事件もあるのだから、今回の婚約者訴訟もアリかとは思わなくもないですが、でも福岡の事例は、本人訴訟だったんですよね。

閲覧メモはかなり要約になっています。

平成22年(ワ)第8189号
原告 X
原告代理人 森利明
被告 Y
被告代理人 小西貞行、Z1、Z2、Z3

訴状 平成22年3月4日
請求 3100万円+遅延損害金

1 当事者等 亡A 昭和29年○月○日生、平成18年9月11日自殺

ア AとXは実質的に配偶者と同視できる。以下の事情から。XはAと平成3年にお見合いし、15年間交際している。当時原告は43歳、Aは36歳で若くなく、結婚前提で交際を開始した。
イ 平成14年○月、原告が脳出血で倒れ、後遺症で右手足麻痺になった。AとXは共に生きていくことを相互に確認した。キリスト教信者であるAが、日本キリスト教団○○教会のD牧師に婚約していると話していた。(D牧師の陳述書あり)
ウ △△市に3LDKマンションを購入、生活を準備していた。
エ XがAの生活を支援していた。Aは家の1階を貸して家賃収入を得ていたが、店子が退去し収入が減少。その減少に見合うくらいの収入のある投資信託を見つけて、XがAに3300万円を援助して購入。借用書あるが担保、返済期限は無い。
オ 精神的に支えていた。
カ Aの姉Bも支援し、財産管理をしていた。
キ Aの死後には、Aの母Cを支援している。
ク Xは証拠保全を申立て、保全の決定がなされた。
ケ まとめ。

2 事案概要
AはYクリニックで平成3年4月6日から精神科治療を受けた。平成18年9月9日最後の受診、同月11日にとびおり自殺。Aの婚約者のXが、自殺はYの診断及び医薬品の副作用などにおける過失が原因と主張して、賠償を求める事案である。

3 経過
平成3年4月6日にYクリニックを初診。Y医師にはそれ以前に○○大学病院で受診していた。初診時から統合失調症と診断された。Yクリニックは院内処方。多数の投薬を受けていた。Aの姉Bは平成10年に大腸癌、その後肝転移した。平成18年8月22日にAは、Bが余命3ヶ月だと聞いた。平成18年9月9日にAはYクリニックを受診した。Yは「医者がそう言うんじゃそうじゃないの」などと言い、極めて冷淡でAの絶望感を誘うような応答をした。その2日後に自殺。

(峰村注:4が抜けているのは私のミスかどうか不明)

5 Yの過失
1)診断の過失
・YがAを診察した間、カルテには診察中に統合失調症症状を目撃・観察したとの記述はない。
・XはAと過ごした15年間に統合失調症症状を見ていない。
・Cも見ていない。
・Bも見ていない。
・社会的に、十分根拠のないまま安易に統合失調症と誤診され、投薬されて抑鬱が強くなる例は数多く、社会的に問題となっている。
2)投薬の過失(添付文書違反)
投薬一覧
・インプロメン 9~12mg 平成14年4月~平成18年7月
・コントミン 25~50mg 平成14年4月~平成16年1月(平成14年5月と、平成15年11月を除く)
・リントン 2.25~3mg 平成15年9月~平成18円9月
・タスモリン 平成14年4月~平成18年9月
・レキソタン 平成14年4月~平成18年9月
・ロヒプノール 平成14年4月~平成18年9月(平成14年5月を除く)
・ベゲタミンB 平成17年10月~平成18年9月
(原告が入手できた診療報酬明細書はこれだけ)
・統合失調症薬の同時投薬時にはクロルプロマジン換算で判断する。インプロメンは1gあたりクロルプロマジン換算で50mg、リントンも同様。コントミンはクロルプロマジンの製品名でありクロルプロマジンそのものである。クロルプロマジンの容量は添付文書上50~450mg。万一仮にAが統合失調症であったとしても、症状は明らかに軽微だったのだから、過剰投与が明らかである。特に平成18年8月から9月。
・ロヒプノールは2~4mg。文書上は0.5~2mgである。米国では禁止薬物。英NHSでは禁止薬物、ドイツでは1mg錠までしかない。
・薬物性肝炎の診断がされている。平成3年9月14日~平成15年迄に採血は3回。
GOT GPT γ-GTP
平成12年 61/71/92
平成15年 70/91/139
平成18年 60/50/136
・レキソタンは適応外。
3)投薬上の過失(医師法違反)
宅急便による医薬品の投与。少なくとも平成17年10月5日~平成18年9月6日までに7回。
カルテに診察記録がない。医師法20条1項に違反する。
4)薬の副作用に関する過失
・肝機能低下。抑鬱が出やすい。
・無診察処方。患者を問診し、直接よく観察することなく処方していた。
・カルテには、電話によるAの発言内容が多数記載されている。診察を電話にて済ませていたことが多かった。
・自殺に至る前の数カ月間の診療録は内容がほとんどない。診察した場合でもYの診察は超短時間(←原文ママ)のおざなり診療だった。
・Yが薬物依存性に無頓着だった。
5)うつ病を見逃し、うつ病対策を取らなかった過失。
6)自殺直前の診察における過失。(峰村注:先述の、冷淡な診察のこと)

6 過失と自殺との因果関係
5で述べた通り、Yには「診断上の過失」「投薬上の過失」「薬の副作用に関する過失」「うつ病を見逃し、うつ病対策を取らなかった過失」「自殺直前の診察における過失」

これらの過失により、もしくはこれらの過失が相まってAはうつ病になり、Yがうつ病対策を何ら講じることなくAは自殺したのであるから、因果関係は明らか。

7 損害額
慰謝料 3000万円
弁護士費用 100万円

—————–

提訴前に証拠保全が執行されたが、カルテ等は被告代理人のところにあったため、検証不能だった。後日原告側は、被告側から任意にカルテの提出を受けた。
甲号証にカルテなどが提出されているが、カルテは初診時分と最後の2ページだけで、途中が提出されていない。
裁判所から原告側への紹介には、「被告との事前交渉は無い」とされている。これは被告側が交渉を拒絶したということかな? (カルテをもらったのだから、そもそも原告側がコンタクトを取らなかったということはあり得ない)

—————–

第1回弁論調書らしきもの(裁判所が作成したもの)

裁判長:
1 甲A2号証の診療報酬明細書に黒塗りがあるが、原告が塗ったものか。
2 Aの死亡と個々の過失のつながりの主張を。
3 甲B1、甲B2(いずれも医学文献)は平成3年当時のものではないが、過失とのつながりを検討してもらいたい。

原告側:
1 甲A2は、最初から黒塗りされていた。(恐らく統合失調症の病名)
2 上記2,3について検討する。
3 書証の原本は次回持参する。

—————–

平成14年3月の、診療報酬明細書の記載
病名
〓〓〓〓〓 平成3年4月6日 (峰村注:黒塗り)
薬剤性肝炎 平成3年9月14日
慢性鼻炎  平成6年11月2日
胃潰瘍   平成11年11月6日

レセプトに「電話再診」の記載あり。

(平成22年7月6日、文意を分かりやすくするための軽微な修正)

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