カテゴリー「医療訴訟」の記事

ステント治療で死亡の事例、第一回弁論

2015年6月1日

今日の東京地裁民事第14部、医療訴訟の第1回弁論期日。傍聴しようと法廷に入るとTV局のカメラが・・・

有名人の名誉毀損でもないのに、医療訴訟でここまでされるのははじめてでちょっと興奮した。カメラにはテレビ朝日のロゴが貼ってあった。冒頭の2分ぐらいでじっと撮影していたけれども、こんな画像取る暇があるくらいだったら、裁判記録の閲覧でもして内容をしっかり把握しなさいよと、報道関係者には言いたいですね。

さて、内容。海外から取り寄せた未承認ステントの治療で患者がお亡くなりになり、遺族が訴えた事例。まずは亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。

どうやら以前に報道もされたことがある事例のようです。「名医に殺される!遺族に訴えられた「神の手」慈恵医大・大木隆生教授・・・手術のリスク説明手抜き?」(注:違う可能性もあります)

しかし法廷の方は・・・

原告ら代理人から「ステントの説明書等は当然診療録と一体をなすものと思われるので、被告側から出してもらえるのですよね」と言った旨の発言があったり、実は証拠保全の段階では別の弁護士がやっていたとか、主要な争点は説明義務違反だとか。本当に先に上げた記事の中の事例だとしたら、8700万円を説明義務違反で争うというのは、かなり無理がある印象だし、それ以前に弁護士が変わっていることだけを見ても、おいおい本当に大丈夫かという気も。原告代理人の一人はかなり積極的に発言していたけれども、はてさて。

先に上げた記事の中の事例だとしたら、それだけ公にされたほどの事例だし、一丁しっかり追いかけてみようという気にもなるというものです。主な視点は、原告代理人や裁判所が、人のことを言えるほどの仕事をしているかという点になりますかね。

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訴訟件数さらに増加、平成26年医事関連訴訟統計

2015年5月21日

平成26年の、医事関係訴訟関連の統計が更新されました。

新受件数がさらに増えて、877件になりました。
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201505ijikankei1.pdf

平成26年の終局の態様はあまり変わらないものの、今回は「取下」が結構増えました。それから「その他」が増えていますが、その他ってなんでしょう?
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201505ijikankei2.pdf

平成26年の判決では、原告勝訴率は20.4%で、ちょっと下がりました。
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201505ijikankei3.pdf
ちなみに勝訴数+和解数は、計算したところ、既済件数のうちの約54%のようで、例年60%ぐらいだったところから若干下がりました。

各科別状況ですが、どの科も傾向を語るようなものはなさそうです。
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201505ijikankei4.pdf
産婦人科は平成18年の161件から大きく減少しましたが、下げ止まった感じでしょうか。

産科医療補償制度で訴訟が増えるという予測は、相変わらずハズレています。

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訴訟件数また増加、平成25年医事関連訴訟統計

2014年5月26日

平成25年の、医事関係訴訟関連の統計が更新されました。

新受件数がまた増えて、5年ぶりの800件台です。
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201405izitoukei1.pdf

終局の態様はあまり変わらないようです。
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201405izitoukei2.pdf

平成25年の判決では、原告勝訴率は24.7%で、ここ数年の傾向が変わっていないようです。
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201405izitoukei3.pdf
ちなみに勝訴数+和解数は、計算したところ、既済件数のうちの約59%のようで、これも傾向に変わりはないです。

各科別状況
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201405izitoukei4.pdf
平成24年に産婦人科が減少して、それが維持されている印象です。他の科では傾向を語るようなものはなさそうです。

産科医療補償制度で訴訟が増えるという予測は、今のところ引き続きハズレです。

ちなみに眼科は減りました。

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産科医療訴訟が大幅減少、平成24年医療訴訟統計

2013年5月11日

平成24年の統計が、昨日に最高裁サイトに出されたようです。
定点観測していましたが、確か一昨日は出ていませんでした。

新規受理件数は若干増えて793件ですが、ここ数年あまり変わりがないです。
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201305izitoukei1.pdf

判決・和解等の終わり方の傾向も、あまり変わりないです。
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201305izitoukei2.pdf

認容率(少しでも賠償が認められた事件の割合)も、ここ5年間著変ないです。
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201305izitoukei3.pdf

科別の件数(新規受理ではなくて、終わった事件の数)、産婦人科がだいぶ減りました。ここには出ていませんが、平成18年には161件だったようです。産科医療補償制度創 設の効果が出ている可能性があります。
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/201305izitoukei4.pdf

産科医療補償制度では、脳性麻痺児に総額3000万円の補償が出ますが、裁判を提起して勝訴したとしても普通は1000万円程度しか認められない事例がほとんどと考えられ 、その場合でも勝訴した分を補償額から減額されてしまうので、裁判を起こしても金銭的メリットがありません。

「脳性麻痺で裁判で負けたら、1億円以上」と聞くことがあるかも知れませんが、それは「医師に過失があり、そのせいで脳性麻痺を発症したのは恐らく間違いがない」場合です 。「医師に過失があり、そのせいで脳性麻痺を発症した可能性はそれなりにある」程度の場合には、1000万円程度にしかならないので、余程のことでないと、1億を超える事 態にはならないわけです。裁判抑止対策という点では、産科医療補償制度の補償額を中途半端に上げる意味は薄く、またもし1億円を超える金額にするとなると、例えば出産後に 自宅でうつぶせ寝等をして低酸素脳症を来したけれどもどこからも補償がない児との公平性が、現状であっても著しく不公平であるのに、さらに不公平感を広げることになってしまい、良案とは言えないと思っ ています。

いやぁ、眼科が増えたなぁ・・・

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ある医療事故調シンポジウムでの、小宮英美NHKラジオセンターチーフディレクターの放言

2013年4月21日

第45回比較法制シンポジウム「医療事故に関する第三者機関のあり方」というのを聴きに行って来ました。

真相究明と再発防止を目的として、刑事罰とか補償とかを切り離して医療事故調査機構を作ることは、悪いことではないと思うんですが、なんかこう、それを推し進めようとする非医療者の、「病院はそもそも安全な場所」みたいな思いは如何なものかと思いますね。むしろ「病院なんてそもそも危険な場所」というのが正しい捉え方でしょう。だからこそ昔は手術の終了を待っていた家族の第一声は「成功しましたか?」だったわけで、それは時代が変わって危険度は減った可能性はあっても、安全な場所になることはありえないわけです。第一、所詮は人間は体が壊れて死んでいくものなわけで、それを何とか治そうとしている病院において、ある部分で安全性が向上すれば、今度はその安全性が向上したことによって、後日にその振り替えとして発生する別の不具合に対処しないとならないわけで、そうすればその部分ではかえって危険性が増すのは当然の理なわけですよ。

そういう基本的な限界を全く無視して、あるいは見ないふりをして、一般市民に聞こえのいい事ばかりを並べ立てていた人がいました。NHKラジオセンターチーフディレクターの小宮英美氏なんですが、なんか自分の周囲の人が病院で骨折の手術を受けたら予期せず亡くなった、ありえないみたいな話を延々として、しまいには、病院に逃げ道を作らせるなとか、事故調査の結果は最終的には匿名ではなく顕名で報告させて、事故の多い病院を避ける権利を消費者側に持たせろとか言い出していましたね。

げんなりしながら聞いていました。

まず、この人は放送局でチーフディレクターまでされているというのに、自分の発表時間には無頓着。延々と時間オーバーして「すみません」とか言っていましたけど、こんなのはプロの仕事ではないですよ。こういう人が医者をやっていたら、さぞかし医療事故調のお世話になる機会が多いんだろうな、と思いましたよ。

骨折の手術を受けたら予期せず亡くなったという話は、それは大変悲しい話で深く同情しますが、そこでいきなり医療ミスとかに直結させて考えるようなのは、一般人ならやむを得ないとしても、マスコミの頭じゃないと思いますね。元々手術とか医療とかは危険がつきものなわけで、それをあたかも安全なものかのような、現実を無視した聞こえのいい話を広めてきたのはあなた方マスコミでしょう。イレッサだって「夢の新薬」だとか言っていたのはむしろマスコミの方で、現実の厳しさを広めずに甘言ばかり垂れ流して誤った認識を広めたわけでしょう。

事故の多い病院を避ける権利を消費者側に持たせろに至っては、受像機を持てば有無を言わさず受信料を頂戴して、その金で仕事をしている人が吐くセリフかと思いましたけどね。そうでなかったら皆保険制度を全廃して、自由診療にするような運動をしてから言えと思いますよ。

他にも色々と喋っていましたが、「どの口が言うか」と思い続けるばかりでした。

ところで、しばらく前から思っているのですが、医療事故調の次は、弁護事故調、そして司法事故調ですね。医療事故は常に悪い結果が見えるものなので、事故の存在が明瞭であるのに対して、弁護事故と司法事故は、悪い結果を被る人がいる一方で、得をする人もいるものであることから、事故の存在が明瞭でない場合が非常に多いですから、医療事故にも増してその事件把握と原因究明、そして再発防止には力を入れるべきだろうと思います。

空前絶後のインチキ裁判を行った大橋弘裁判長(現・首都大学東京法科大学院教授)のこの事件に対して、本質的な問題をきちんと指摘できないような最高裁の態度を見ると、強くそう思います。

(平成29年12月17日,日本語表現の不適切を修正。)

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