令和4年3月11日: 東日本大震災トリアージ訴訟を掲載
医療裁判傍聴記
医療裁判傍聴および記録閲覧を通じて得た知見をはじめ,その他裁判関係の話題をご紹介。このブログでラフ・スケッチを掲載し,後日正式記事としてまとめた場合は,拙サイトの医療裁判・医療訴訟コーナーに上梓します。
東京女子医大心臓血管外科事件、本日高裁判決
2009年3月27日
大野病院事件、割りばし事件と並ぶ、検察によるトンデモ起訴3羽烏の残り一つである、東京女子医大心臓血管外科事件の高裁判決の日が今日となりました。
紫色の顔の友達を助けたい
東京女子医大、警察、検察、マスメディアの失当
http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-e422.html
勝負は下駄を履くまでわからないとは言いますが、それでもこの事件の無罪は間違いないものと思われます。まあ結果を待ちたいと思います。
高松高等検察庁のホームページが…
2009年3月23日
たまたま閲覧した高松高等検察庁のホームページ
検察庁と言えば、要は犯罪容疑者を選別して起訴する厳しい組織ナわけですが…
http://www.kensatsu.go.jp/kakuchou/h_takamatsu/
タヌキキャラクター「へんろちゃん」がお出迎え。
ブログまである…
そして、各種案内の「刑事事件記録の閲覧・謄写」のページには、
http://www.kensatsu.go.jp/kakuchou/h_takamatsu/annai/kiroku.html
なぜかマウスポインタが常駐…
気になる…
「わずか半日」で快挙扱いされても…
2009年3月15日
共同ニュースより
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031401000512.html
即日審判で父母の親権停止 家裁、息子への治療拒否で
2009年3月15日(日)02:07
東日本で2008年夏、消化管内の大量出血で重体となった1歳男児への輸血を拒んだ両親について、親権を一時的に停止するよう求めた児童相談所(児相)の保全処分請求を家庭裁判所がわずか半日で認め、男児が救命されていたことが14日、分かった。
子供の治療には通常、親の同意が必要で、主治医は緊急輸血が必要だと両親を再三説得したが「宗教上の理由」として拒否された。病院から通報を受けた児相は、児童虐待の一種である「医療ネグレクト」と判断した。
医療ネグレクトに対しては過去に1週間程度で親権停止が認められた例があるが、即日審判は異例のスピード。児相と病院、家裁が連携して法的手続きを進め、一刻を争う治療につなげたケースとして注目される。
関係者によると、当時1歳だった男児は吐き気などを訴えてショック状態となり、何らかの原因による消化管からの大量出血と診断された。
病院は「生命の危険がある」と児相に通告。児相はすぐに必要書類をそろえて翌日昼、両親の親権喪失宣告を申し立てるとともに、それまでの緊急措置として親権者の職務執行停止(親権停止)の保全処分を求めた。
こうした輸血拒否への対応については日本小児科学会など関連学会が08年2月、合同で指針をまとめており、今回のケースでも病院側はこの指針に従って対応した。
お産の事故の裁判で,裁判所が「緊急時には30分以内に帝王切開できないとならない」という判断をしたことがありました。いわゆる30分ルールです。
今回の場合,救命されたから良かったものの,事態発生から親権停止決定まで半日もかかっています。「一刻を争う治療」なのに重要な決定に半日もかかって,さも快挙であるかのような物言いには強い違和感を覚えます。人命に関わることですので,最初から親権停止手続きを踏まなくても免責となるような法整備をするか,そうでなければ親権停止手続きにも30分ルールのような義務を課すべきだろうと思います。
注目すべき福島県立病院の和解協議
2009年1月21日
毎日新聞地方版
http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20090121ddlk07040247000c.html
の記事です。
県立医大病院医療過誤訴訟:双方とも和解に前向きな意向--控訴審 /福島
県立医大付属病院で出産した次女が重度脳性まひになり、4年9カ月後に死亡したのは医療ミスが原因として、福島市の両親が同大を相手取り、約1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、初の和解協議が20日、仙台高裁(大橋弘裁判長)で開かれた。再発防止策などを条件に、双方とも和解に前向きな意向を示した。
1審の福島地裁判決は、医大側の過失を認め約7340万円の支払いを命じた。医大側が控訴し、高裁は昨年12月25日の口頭弁論で、和解を勧告していた。
原告の幕田智広さん(42)によると、原告側は和解条件として慰謝料のほか、医療事故の再発防止策の策定を求めたという。幕田さんは協議後、「互いに方向性に食い違いはない。次回は良い結果が出ることを期待している」と語った。医大は取材に対し「和解に向けて進んでいる。次回の協議に備え、内部で検討している」と話した。
次回協議は2月13日の予定。【神保圭作】
毎日新聞 2009年1月21日 地方版
1審では高額な賠償金をもって原告側が勝訴しましたが,そもそも原告側が勝訴した一審判決がトンデモ判決なのであって,標準的な法的判断をできる普通の裁判官であれば原告敗訴が出て当然の裁判であったと考えます。一審の鑑定(原告側でも被告側でもない,裁判所が依頼した鑑定)を読んでみても,どうしてこれで原告勝訴の判決を書く気になったのかが不思議でなりません。
http://www.orcaland.gr.jp/kaleido/iryosaiban/H14wa114_kanteisho.html
「和解」の中には「ゼロ和解」と言って病院側からの和解金を支払わないような和解もあるので,今回の事件も和解内容を確認しないままには病院側の対応を批判することはできませんが,和解で終わった場合にはその和解内容を確認するべきだと思われました。
http://www.orcaland.gr.jp/kaleido/iryosaiban/H14wa114.html
尊厳死を認め,人口呼吸器をはずすよう命じた判決。但し韓国で。
2008年11月29日
朝鮮日報より。原文は韓国語。
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2008/11/28/2008112801416.html
[社説] 国会が尊厳死を認める法を作る時が来た
ソウル西部地方裁判所が,脳死状態の75歳女性患者の家族が延命治療を中断するよう病院に対して起こした訴訟で “患者の回復可能性がなく生命維持治療が無意味であり,患者に苦痛だけを与えると判断される”と人工呼吸器を外すよう判決した. 問題の患者は去る2月,病院で気管支内視鏡手術を受けている最中に,肺血管が裂けて意識不明に陥った. 今回の判決は一審ではあるが,回復の可能性のない患者が延命治療なしに人間らしく死ぬことができる尊厳死の権利を認めた初の判決だ.
最高裁判所は1997年,保護者の要求で脳手術患者を退院させたポラメ病院の医師らに対して殺人幇助罪を適用して執行猶予の有罪判決を下したことがある. しかしその後尊厳死を認めなければならないという社会雰囲気が形成されるにしたがって,国内の大規模病院では末期患者が延命治療を受けないという ‘蘇生術拒否(Do Not Resuscitate・DNR) 誓約’をすればその意思を認める制度を慣行的に施行して来た. ソウル牙山病院の場合,毎年 150~200人の末期患者が DNR 誓約を通じて自然な死を迎えている.
今回の場合は,患者が手術の過程で一瞬のうちに脳死状態に陷り,尊厳死に関する自分の意思を明らかにした経緯がないことから訴訟に至った. これに対し裁判所は “患者が 3年前心臓病を病んだ夫の生命延長のための気管切除術(切開術?)を拒否した点と,平素から生命維持装置に依存することは嫌だと語っていたという事実を勘案すると,意識があれば延命治療を拒否したことが推定される”と治療中断判決を下した.
アメリカでは1989年,末期患者権利法が制定された後,不治の病や認知症にかかった時,どの程度まで治療を受けるかについて自分の意思を表明しておく ‘生前遺言(living will)’が活発になった. 日本も尊厳死宣言に署名した人が 10万名を越えると言う. 我が国民も 88%が尊厳死に賛成している.
回復の可能性が全くない患者に心肺蘇生術, 強心剤, 人工呼吸器などの延命治療をすることは無意味だ. 機械装置を何本も体に取り付けて苦痛の中で惨めな死を迎えることを望む人はほとんどいないだろう. 末期患者の蘇生術拒否誓約制度まで一般化しているというのに国会が尊厳死を認める立法をこれ以上先延ばす理由はない. 立法を通じて,どのような状況でどのような方法の治療中断が可能なのかを明確にしておくことが, 法と現実が異なるために生ずる混線を無くす道である.
日本の医療訴訟の判決文をいろいろ見ている立場から考えると,勇敢な判決だと感じました。