令和4年3月11日: 東日本大震災トリアージ訴訟を掲載
治療方法の説明義務違反で70万円?
2010年5月2日
(平成22年3月18日に他所で話題にしたものです)
この説明義務違反はどうなのよ?? 記録閲覧しておらず、新聞記事だけでは大きなことは言えないけれども書いておきます。
10/03/17 毎日新聞社
室蘭の手術後死亡訴訟:市と執刀医に70万円支払い命令–地裁 /北海道
◇「説明怠った」
03年に市立室蘭総合病院で子宮頸がんの手術を受けた後、がんを再発して死亡した室蘭市の女性(当時41歳)の遺族が「手術に過失があった」などとして、市と執刀医に計約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、札幌地裁であった。杉浦徳宏裁判長は手術に過失を認めなかったものの、治療方法の説明義務違反があったとして、市と執刀医に計70万円の支払いを命じた。
判決によると、女性は02年1月、子宮頸がんの治療のため手術を受けたが、03年1月に再発して死亡。杉浦裁判長は「執刀医の一連の治療に不適切な点はない」としたが、「治療方法として手術以外に放射線療法があったにもかかわらず、その説明を怠り、女性の自己決定権を侵害した」と指摘した。【水戸健一】
で、私が某所に投稿したコメント2本。(一部改変)
司法過誤の可能性が極めて高い
この裁判の問題は、1億円という高額の勝ち目がまずないのに、このような高額の提訴を請け負った原告側弁護士と、過失がないであろうに原告一部勝訴判決を書いた裁判官(注)による司法過誤である可能性が高いと思われるにも関わらず、その尻ぬぐい的賠償金を医療側の財布に求めていることです。司法関係者の尻ぬぐいまで医療のカネで行わせるなんて、こんなバカなことありますか?
注: 実際のところは、裁判記録を見ないことには断言はできません。
放射線治療のほうが予後が明らかに良いのなら
「放射線治療の説明をした方がよい」というのと、「放射線治療の説明をしなかったから賠償しろ」というのは全然別物です。
例えば、だいぶ前の裁判ですが、乳房温存手術の説明義務を認めた最高裁判決は、それを選択していれば乳房喪失という損害を免れた可能性があるのに、その説明をしなかったため、損害を低減できる可能性があったのにその選択機会を奪ったために認められたものと考えられます。
それに対してこの事例の放射線治療は、それを受けることによって、手術療法よりも損害を免れられた可能性があったかどうかが問題です。もし放射線治療のほうが延命していた可能性がそれなりにあるのであれば、今の裁判所の判断基準から言って一部敗訴は有りうるとしても、そのような可能性が極めて薄いのであれば、その説明をしなかったからといって賠償責任を認めることはできないとなるはずです。
私は個々の医療裁判について、傍聴も記録閲覧もせずに報道資料だけで感想を書くことは滅多にしないのですが、この事件は非常に興味があるので中途半端ながら書いておきます。判決文を読む機会があるといいのですが…