そこまで言っておいて,逸失利益は請求しないの?

30歳女性の両側卵巣腫瘍を,婦人科専門でない外科医が摘出し,過失があって生殖機能が失われたという極めて残念な事例です。まずは原告の方に心よりお見舞いを申し上げます。事件番号は東京地裁平成20(ワ)19347号です。

細かい点に議論はあるものの,過失があって生殖機能が失われたことについては,被告も認めています。ですからその点についてはここでは触れません。

気になったのは原告からの損害額の主張です。原告には代理人弁護士がついています。健康被害があった場合に参照される後遺障害等級表には,両側の卵巣を失った場合についての記載がありません。そのためこの原告は,後遺障害等級表の7級に掲げられている「両側の睾丸を失つたもの」を参照して,以下のように主張しました。

後遺障害等級表・労働能力喪失率によれば,男性における生殖能力の喪失の障害に当たる「両側の睾丸を失ったもの」は7級と位置付けられ,労働能力喪失率は56%,慰謝料額は1051万円である。婚姻前の女性が妊娠及び出産の可能性を奪われることは,人生設計を狂わされることでもあり,障害等級7級の精神的損害を上回るものであることは明らかである。

そして慰謝料として3000万円を請求しました。後遺障害7級の基準にされる1051万円よりも増額されていることについては,その理由が主張されており,増額幅の程度はさておき,あまり違和感は感じませんでした。実際,判決でも慰謝料として通常よりも高額の1300万円が認められました。

ところでその慰謝料増額理由の中には,このような主張もありました。

また,原告は,今後10年から20年の間,ホルモン補充療法を行う必要があり(甲A4),同療法の副作用による体重増加のため,○○における○○としての仕事の継続が困難となっている。

・・・そこまで述べておいて,なぜ逸失利益を請求しなかった?!

↓後遺障害等級表のリンクです。
http://www5d.biglobe.ne.jp/Jusl/IssituRieki/Sousituritu.html

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