カテゴリー「医療訴訟」の記事

「因果関係がなくても慰謝料を認定できる」そうです

2016年3月17日

本日東京高裁で傍聴した事例です。事件番号は平成27年(ネ)第3174号。裁判体は富田善範裁判長、武田美和子裁判官、大須賀寛之裁判官です。

高裁で改めてそれなりの審議をして、本日結審するというのですが、裁判所が心証を開示しながら被告側に和解を勧めていました。

裁判所は、「当時に注意義務の水準が存在していたが、被控訴人(病院側)は反論ができていない。ただし因果関係のところは考慮する。」との旨を述べつつ、「最高裁で、『医療訴訟では、因果関係がなくても過失がある場合に責任を認める』という判断が出ている」などと言うのです。

因果関係がない場合の医療側の責任判断についての最高裁の最新の判断は、「当該医療行為が著しく不適切なものである事案について検討し得るにとどまるべきものである」としているのですが、法廷での発言に依る限り、富田裁判長の理解が不十分ではないかとの印象を持ちました。

この心証を今日初めて聞いたいたという被告側の弁護士は、「(患者に)急にショックが来て、万全とはいえなくとも出来る限りのことはした」のであって、これに責任を負わせられるのはかなわないというような内容だったようです。

記録を見てみないことにはなんともいえませんが、東京高裁のこの裁判官の方々の司法水準がどうなのか、判断が著しく不適切ではないのかどうか、よく調べてみたいと思うような事例でした。

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訴訟提起の権利は誰にでもあるけれど…

2016年1月26日

富士山で遭難して、救助が出たもののうまくいかずに亡くなり、救助に過失があったと遺族が訴えた事件がありました。まとめ的なものがこちらにあります。

で、「そんなことするならもう救助は行かない、勝手に死んでください」という意見に対して文句をいう人がいるようです。

裁判を起こす権利は誰にでもありますが、この事件の根本的な問題は、「家族が無茶して救助が来て、救助がうまくいかなかったからといって金を出せと迫る遺族がいる」という事実であって、訴訟はそれを実行するための手段にすぎないわけです。

医療でも訴訟リスクを問題視されているけれども、根本的な問題は訴訟云々以前の話のように思う次第です。

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今日の医療訴訟第一回弁論、東京地裁平成27年(ワ)第30870号

2016年1月21日

私のメモは曖昧ですが…

裁判長:具体的な過失の内容は?
原告代理人:答弁書が、訴状の内容の表現を変えているだけで認めているのか?
裁判長:被告は、筋層剥離の段階で損傷が生じたと言っています。
原告代理人:動脈を誤って切断した。
被告代理人:認めません。
原告代理人:一般的にわかりやすいように説明して下さい。
被告代理人:(首をかしげる)
裁判長:原告は手技ミスという。被告は合併症という。
原告代理人:合併症って…だから日本語で、堂々巡りにならないように説明して下さい云々かんぬん・・・
被告代理人or裁判長:読めば分かるでしょう。
以下時間切れで傍聴終了

感想:原告代理人ヤバイよ。

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主張が成り立ってないと裁判長から指摘されて

2015年12月18日

本日東京地裁で傍聴した医療訴訟です。事件番号は平成27年(ワ)第30340号

以下、要旨のまとめです。乱雑なメモ書きからのものであり、特に言葉尻などは違うものが多いと思います。

 

[発言者失念]:  訴状では、過失の特定がされてない。検査義務の根拠、いつまでにどういう検査をということが書かれていない。

被告代理人(被): 認否は原告がその点を補充してもらってからしたい。

原告代理人(原): 訴訟前にもやり取りしてますし、認否は今にでもできると思います。

被: できないというわけではなくて、主張が成り立っていないので、今認否して、補充されてまた認否するのは効率が悪いということで。

原: いや成り立っていると思います。

裁判長: いや成り立っていないと思いますので、補充してもらってからという話になってるので…

 

医師の過失を追求することを代理する原告代理人が、こんなことでいいのかな、と思いました。一体どんな主張をしているのか、記録を見てみたいと思います。

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今どきレーシック集団訴訟

2015年11月3日

医療訴訟患者側弁護士の一部が、レーシック集団訴訟で頑張っているようです。

「レーシック手術で後遺症」新たに9人が集団提訴

しかし昔ならともかく、今どきどれほどの勝算があって裁判起こすんでしょうかね? 説明義務とか想定内の合併症とかでは、これまで敗訴事例が並んでいることは、このような事例に携わる弁護士ならご存知だと思うのですが。

上のニュース記事のコメント欄を見ると、どちらかと言うと原告に対する賛同よりは批判のほうが多いように見受けられます。時代は変わったのではないでしょうかね。

原告側弁護士は受任するにあたって、「勝つか負けるかは賭けである」と、きちんと説明しているのでしょうかね? でないと、裁判が進んで思うようにいかなかった場合に、原告らに「こんなはずじゃなかった」と言われてしまうでしょうからね。

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