静岡羊水塞栓症訴訟(一審判決文)

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主文

1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1 請求の趣旨
被告らは,原告X1に対し,6174万9784円,原告X2に対し,3087万4892円並びにこれらに対する平成20年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
本件は,分娩のためにa病院(以下「被告病院」という。)を受診し,同病院での治療中に死亡したB(以下「B」という)の法定相続分を有する親族である原告らが,上記Bの死は,被告病院の担当医師の治療行為上の過失(当時のBには,常位胎盤早期剥離による大量出血に基づく出血性ショックの兆候があったにもかかわらず,十分な輸血等の措置を行わなかったなど)に基づくものである旨を主張して,被告病院を運営する被告静岡県Y1組合連合会(以下「被告Y1」という。)に対しては診療契約上の債務不履行又は不法行為(使用者責任)による損害賠償請求として,被告病院の担当医師であるその余の被告らに対しては不法行為による損害賠償請求として,Bの死亡により生じた損害(慰謝料及び逸失利益等)の合計9262万4677円について,原告X1(以下「原告X1」という。)に対し6174万9784円,原告X2(以下「原告X2」という。)に対し3087万4892円の連帯支払及びこれらに対するBの死亡した日である平成20年4月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求めた事案である。

1 前提事実等(末尾に証拠を掲げたもの以外については,当事者間に争いがない。)
(1) 当事者等
ア Bは,昭和59年○月○日生の女性であり,平成20年4月27日被告病院で死亡した(死亡当時24歳)。原告X1はBの夫であり,原告X2はBの母親である。(甲A1)
イ 被告Y1は,被告病院を運営する法人である。
ウ 被告Y3(以下「被告Y3」という。),被告Y2(以下「被告Y2」という。)及び被告Y4(以下「被告Y4」といい,被告Y3,被告Y2及び被告Y4を合わせて「被告医師ら」という。)は,いずれも産婦人科の医師であって被告病院の勤務医であり,Bの診療を担当した者である。
(2) 被告病院の産婦人科の診察日及び診察時間は,月曜日から金曜日の午前8時30分から午後0時であり,火曜日及び木曜日については午後も診察を行っている。なお,婦人科については土曜日の午前8時30分から午後0時も診察を行っている。(甲B64)
(3) 診療経過等(以下において,時刻のみ表記している場合は,平成20年4月27日を指す。)
ア Bは,午前0時,被告病院に電話し,陣痛を訴えた。看護師は,陣痛が強くなったら再度電話するように伝えた。
イ Bは,午前6時20分頃,被告病院に再度電話した。その後,Bは,原告X1の運転する車で被告病院に向かった。
ウ B及び原告X1は,午前7時20分頃,被告病院に到着した。被告病院では,当初,助産師が対応した。Bは,来院時から,口唇色がやや不良で,発汗が著明であった。
エ Bの担当医である被告Y3は,午前8時頃,被告病院に到着した。被告Y3は,Bをエコーで診察し,帝王切開で児を出産させることを決定した(以下「本件手術」という。)。被告Y3は,本件手術をすることを原告X1に話し,原告X1は帝王切開手術と輸血の同意書にサインした。その際被告Y3は,胎動がほとんどなく児の生存は難しい旨を説明した。Bは,午前8時45分頃,手術室に入った。原告X1が手術室にBを送ると,すぐに被告Y3が手術室から出てきて,原告X1に,最悪の場合Bの子宮を切除する旨を話し,原告X1は了解した。
オ 本件手術は,被告Y3が執刀医を,被告Y2が助手をそれぞれ務め,被告Y3及び被告Y4が麻酔を担当して行われた。被告医師らは,午前9時24分に児を娩出し,午前9時27分に児の死亡を確認した。
カ Bは,午前9時30分頃,ショックに陥った(以下「本件ショック」という。)。
キ 被告医師らは,午前10時45分頃,本件手術を終了した。
ク 被告Y3は,午前11時過ぎ,待合室へ行き,原告X1及び親族に対し,児は死産であったこと,Bの子宮は残したこと,痙攣等があるため鎮静剤等の投与を行ったこと,脳内出血の可能性があるためCT検査をすることを説明した。Bは,午前11時15分,CT室に移された。同18分に頭部CT検査が施行された。その後,被告Y3は,原告X1及び親族に対し,Bに脳内出血はなかったことを報告したが,Bの血圧は計測できないほど低く,人工呼吸器をつけると説明した。
ケ Bは,午前11時30分ころ,普通病棟に移された。原告X1,原告X1の両親及び原告X2は,午後1時10分頃,面会のために病室に入ったところ,Bは人工呼吸器をつけていた。同19分には,医師が心臓マッサージを施した。
コ 午後1時40分にBの死亡が確認された。
サ その余の被告病院におけるBの診療等の内容及び経過は,別紙「診療経過一覧表」のとおりである(ただし,争いのある部分を除く。)。

2 争点
(1) 初期治療の実施についての注意義務違反の有無(争点1)
(2) 輸血の準備及び実施についての注意義務違反の有無(争点2)
(3) 保温についての注意義務違反の有無(争点3)
(4) 巨大子宮への対処についての注意義務違反の有無(争点4)
(5) 転送義務違反の有無(争点5)
(6) 上記被告医師らの注意義務違反とBの死亡との間の相当因果関係の有無(争点6)
(7) B及び原告らの損害の有無並びに損害額(争点7)

3 争点に対する当事者の主張(以下において,時刻のみ表記している場合は,平成20年4月27日を指す。)
(1) 争点1(初期治療の実施についての注意義務違反の有無)について
(原告らの主張)
被告医師らは,Bが被告病院に来院した午前7時20分には,Bに蒼白,冷汗,脈拍の軽度上昇という出血性ショックの初期症状(ClassⅠ)があることを確認し,かつ,午前8時以降には常位胎盤早期剥離を確認していたのであるから,出血性ショックの重症化あるいは産科DICの発症を防止すべく,午前7時20分から午前8時過ぎまでの時点で,Bの出血性ショックを疑い,その重症化あるいは産科DICの発症を防止するために,①酸素投与,②Trendelenburg体位の確保,③急速輸液(乳酸リンゲル液の投与)を行うべき注意義務があったのに,これを怠った。
(被告らの主張)
Bは,被告病院に来院した午前7時20分頃には既に常位胎盤早期剥離を発症していたものと考えられるところ,原告らが指摘する蒼白や冷汗は,この常位胎盤早期剥離の発症により当然にみられるものであり,出血性ショックの初期症状であったとはいえない。なお,原告らが指摘する出血性ショックの初期症状(ClassⅠ)の基準は,外傷性出血に関するものであり,本件に当てはまるものではない。したがって,被告医師らに,午前7時20分頃から午前8時過ぎまでの間に,①酸素投与,②Trendelenburg体位の確保,③急速輸液(乳酸リンゲル液の投与)を行うべき注意義務があったとはいえず,被告医師らにこの点についての過失はない。

(2) 争点2(輸血の準備及び実施についての注意義務違反の有無)
(原告らの主張)
被告医師らは,午前9時30分以降,Bの出血量,SI(ショック指数)及びDICスコア等から,直ちにBに対して輸血を開始し,かつ,十分な量の輸血をすべき注意義務があったのに,これを怠った。被告医師らが,Bに対して輸血を開始したのは午前10時30分頃であり,本件手術における総輸血量もわずか1320mlであるから,被告医師らの上記注意義務違反は明らかである。その理由の詳細は以下のとおりである。
ア 出血量及びSIに基づく輸血についての注意義務違反分娩時の手術における出血量が約1500mlを越えた場合には,輸血を開始すべきであるとされているところ,本件手術が開始されて45分が経過した午前9時30分には,Bの出血量は1489mlであった。また,SIとは,心拍数を収縮期血圧で除した数値であって,出血量ないしは出血性ショックの重症度を測るための指標である。SIが1.5以上となった時点で直ちに輸血を開始するとされているところ,午前9時30分におけるBのSIは1.6(心拍数135/分,収縮期血圧85mmHg)であった。そうすると,被告医師らは,Bの出血量及びSIからして,遅くとも午前9時30分には,ただちに輸血を開始し,かつ,RCC(人赤血球濃厚液。MAPともいう。以下「RCC」という。)だけではなくFFP(新鮮凍結血人漿。以下「FFP」という。)を投与し,血小板濃厚液,アルブミン,抗DIC製剤などを投与すべきであったのに,これを怠った。
イ 抗ショック療法及び抗DIC療法についての注意義務違反
(ア) Bは,午前8時頃に常位胎盤早期剥離を発症している。常位胎盤早期剥離とは分娩経過中の胎児娩出前に子宮や胎盤が剥離してしまう疾患で,母体には出血性ショック,羊水塞栓症あるいは産科DIC等の合併症を発症させる危険性が高い産科救急疾患である。産科DICとは,産科的基礎疾患を原因として血液の凝固線溶の平衡が崩れ,血管内の過凝固と二次線溶が交互に繰り返されて,全身的な微少血栓の形成と出血傾向をきたす疾患である。妊産婦が常位胎盤早期剥離を発症した場合,産科DICを発症する可能性が高いところ,産科DICが発症すると深刻な病態となるため,発症を未然に防ぐ,あるいは重症化を防ぐために,短時間に産科DICであると診断するための手段として産科DICスコアが設けられている。産科DICスコアが8点以上であれば,今後産科DICに進展する可能性が高いため,少なくとも抗DIC療法の準備をする又は治療を開始する必要があるとされ,13点以上となった場合は産科DICであるとして治療を行う必要があるとされている。産科DICを発症した場合の治療法は,抗ショック療法としては輸血,輸液及び副腎皮質ホルモンの各大量投与,並びに,抗DIC療法としてはATⅢ製剤(アンチトロンビンⅢ製剤。以下「ATⅢ製剤」という。),ヘパリンの投与であり,輸血を行う場合,出血量と同等以上の量を輸血することが目安とされ,特に産科出血においては,出血量と同等量のFFPを投与することが必須である。これらは,平成20年4月27日当時,産科医にとって基礎的な知識であった。そうすると,被告医師らは,Bが常位胎盤早期剥離を発症したことを認識していたのだから,産科DICを未然に防ぐあるいは重症化を防止するため,Bの産科DICスコアを計測し,産科DICが8点以上になった時点から抗ショック療法及び抗DIC療法の準備ないし開始をすべき注意義務があったものというべきである。なお,本件においてBが羊水塞栓症を発症していたとしても,Bに対して行うべき治療は抗ショック療法及び抗DIC療法であるから,被告医師らにBが羊水塞栓症を発症していたことについての認識がなかったとしても,抗ショック療法及び抗DIC療法を行わなくてよい理由にはならない。
(イ) 午前8時45分頃から午前9時15分頃のBの産科DICスコアは9点(常位胎盤早期剥離・胎児死亡:5点,冷汗:1点,蒼白:1点,頻脈:1点,出血時間延長≧5:1点)であったから,被告医師らは少なくとも抗ショック療法及び抗DIC療法の準備を行う必要があった。しかし,被告医師らは,そもそもBの産科DICスコアのカウントを怠り,本件手術開始時点において,輸血(RCC,FFP)及びATⅢ製剤の手配,輸血・採血用ルートの確保等の準備を十分に行わなかった。なお,FFPについては,被告Y3が,被告病院の看護師に対して,日赤センターに発注するよう指示をしたにもかかわらず,同看護師のミスにより,日赤センターに発注されなかった。また,産科DICスコア算出のための規則項目として凝固系の血液検査が必要であり,一般的な検査項目としてプロトロンビン時間,フィブリノーゲン,血清FDP等が挙げられるが,被告医師らは本件手術終了までこれらの血液検査を行っていない。
(ウ) 午前9時30分頃,Bの収縮期血圧は90を下回り,Bは,いわゆるショック状態(本件ショック)に陥った。この時点におけるBの産科DICスコアは10点(上記(イ)の9点に加え,収縮期血圧<90:1点)であったこと,出血量も1500mlを越えていたこと,血圧は輸液に対して無反応であったこと等からすれば,被告医師らには,上記時刻頃,Bに対して抗ショック療法及び抗DIC療法を開始すべき注意義務があったのに,被告医師らはこれを怠った。被告医師らは,本件手術中,輸液,酸素投与及び午前9時50分からのドーパミン投与,午前10時30分のRCC2単位(1単位:140ml,合計280ml)の投与及び午前10時55分のRCC2単位の投与をしたものの,抗DIC療法としての副腎皮質ステロイド,FFP,ATⅢ製剤等の投与を行っていないから,上記義務に違反している。加えて,本件手術におけるBの総出血量は3438mlであったことからすると,RCCの投与の量としても著しく不十分である。
(エ) 手術終了時点の午前10時45分から手術室退室の午前11時頃におけるBの産科DICスコアは13点であったこと,上記のとおりBの総出血量は3438mlであったこと及び午前10時30分及び午前10時55分の各RCC2単位の投与では十分な血圧の改善がみられなかったことなどからすると,被告医師らには,Bに対して,十分な量のRCC及びFFPを投与すべき注意義務があった。しかし,被告医師らは,輸血よりCT撮影を優先させ,Bに対して,午前11時18分にFFP2単位(1単位:120ml,合計240ml)を,午前11時40分にRCC2単位を,午前11時45分にFFP2単位をそれぞれ追加投与しただけであり,合計しても1320mlの輸血がされたにすぎないから,上記注意義務を怠っていたということができる。
(オ) 被告らは,Bに対して十分な輸液を行っており,輸血は不要であった旨の主張をするが,輸液のうち乳酸リンゲル液(ラクテック)は,投与量の1/3から1/4しか血管内に留まらず,残りは血管外に移行してしまうため,そもそも十分な輸液量であったとはいえない。Bの総出血量は3438mlであるから,出血への対処が必要であり,その対策として酸素を全身に供給するためのヘモグロビンの補充が必要であるところ,これをなし得るのはRCCの投与であって,輸液だけでは補うことができないし,産科DICは凝固因子の低下を伴う出血傾向のある疾患であるところ,輸液だけではむしろ凝固因子不足を助長してしまうだけであって,むしろFFP等の投与が必要であるから,上記被告らの主張に理由がないことは明らかである。
(カ) 以上によれば,被告医師らには,Bに対して,産科DICスコアを計測し,本件手術前に抗ショック療法及び抗DIC療法の準備をしておき,Bにショックが生じた午前9時30分以降,抗ショック療法及び抗DIC療法としての輸血,輸液及び副腎皮質ホルモンの各大量投与,ATⅢ製剤並びにヘパリンの投与を行うべき注意義務があったにもかかわらず,被告医師らはこれを怠り,産科DICスコアの計測を行わなかったために,産科DIC発症の危険性を認識することができず,その結果として,抗ショック療法及び抗DIC療法の準備を行っていなかったことから,これらの療法の開始も遅れ,輸血量も不十分なものであった。以上のとおりであり,被告医師らに,抗ショック療法及び抗DIC療法の実施についての注意義務違反があったことは明らかである。
(被告らの主張)
本件ショックは出血性ショックではないため,被告医師らには,Bに出血性ショックが生じたことを前提とした治療を行うべき注意義務は存しない。また,被告医師らの輸血の開始時期に遅滞はなく,輸血量も不足はないため,Bに対する治療について被告医師らに注意義務違反(治療行為上の過失)はない。その理由の詳細は以下のとおりである。
ア 出血量及びSIに基づく輸血について
(ア) 出血性ショックは,出血量が循環血液量の35%から40%に達する場合に初めて収縮期血圧が低下することにより生じるものであるところ,本件手術時におけるBの循環血液量が7256mlであったと仮定すると,午前9時30分までのBの出血量は1489mlであったから,出血量が循環血液量に占める割合は約20%であって,午前9時30分に生じた本件ショックは出血性ショックではありえない。被告医師らは,本件ショックが生じた午前9時30分頃までの間に,Bに対し合計1350mlの輸液(ヴィーンD注:100ml,ヘスパンダー:1000ml,ラクテック:250ml)を行っており,細胞外液であるヴィーンD注及びラクテックが血管内に1/3から1/4程度しか留まらないとしても,循環血液量の減少は500ml程度でしかなく,これにより出血性ショックが起きたとも考え難い。そうすると,以下で詳述するとおり,本件ショックは出血性ショックではなく,羊水塞栓症に起因するショックであったというべきである。
(イ) 原告らは,Bの出血量が1489mlであったこと,SIの数値が1.6であったことから,被告医師らは午前9時30分にBに対して輸血(RCC及びFFPの投与)を行うべきであった旨の主張をする。しかし,本件の直後に公表された「産科危機的出血への対応ガイドライン」には,帝王切開手術において母体の出血量が2リットルを超えたら輸血の準備を行うとされていることからすれば,本件当時の被告医師らには,Bの出血量が1500mlを越えた時点で輸血を開始しなければならない義務はなかったというべきである。また,SIは出血性ショックの重症度を測るための基準であるのに対し,本件ではBに出血性ショックは生じていないのであるから,被告医師らに,SIに基づいて輸血を開始しなければならない注意義務はないし,本件手術当時,臨床現場の産科管理において,SIは一般的に使用されていなかったから,SIが1.6を超えていたからといって被告医師らに輸血を開始すべき注意義務があったともいえない。
(ウ) したがって,被告医師らには,出血性ショックを前提とした注意義務は課せられておらず,かかる点についての原告らの主張には理由がない。
イ 抗ショック療法及び抗DIC療法について
(ア) 被告医師らが手術室に入室した午前8時40分頃のBの産科DICスコアは7点(常位胎盤早期剥離・胎児死亡:5点,冷汗:1点,出血時間延長≧5:1点)であり,直ちに抗ショック療法及び抗DIC療法を行わなければならないというほどの状態ではなかった。
(イ) 被告医師らに,本件ショックに対して迅速かつ十分なDIC対策を講ずるべき注意義務があったことは否定できない。しかし,本件手術当時の産科DICに対する治療法は,①原則治療としての基礎疾患の除去,②補充療法として出血性ショックがあるときは輸液と輸血,③酵素阻害療法であったところ,本件ではBに出血性ショックは生じていなかったのであるから,被告医師らがBに対して上記②の輸血(RCC及びFFPの投与)を必ず実施しなければならない根拠はない。また,上記のとおり本件手術時には「産科危機的出血への対応ガイドライン」は公表されておらず,産科DIC対策について産婦人科医への周知は十分ではない状況であったのだから,被告医師らにおいて,本件手術前に抗ショック療法及び抗DIC療法を行うための十分な準備をしていなかったからといって,このことが直ちに注意義務違反になるとはいえないし,当日は日曜日であって,準備できる内容も限られていた。被告医師らは,産科DIC対策として最も重要な胎児の娩出を最優先したのであり,そのことにより抗ショック療法及び抗DIC療法の準備が後手に回ってしまったことについて非難されるいわれはない。
(ウ) したがって,被告医師らについて,抗ショック療法及び抗DIC療法についての注意義務違反も認められない。
ウ よって,被告医師らに,Bに対する輸血の準備及び実施についての注意義務違反は認められない。

(3) 争点3(保温についての注意義務違反の有無)について
(原告らの主張)
ア 出血性疾患において,出血に低体温が加わると代謝性アシドーシスが加速し,「死の3徴」と呼ばれる状況に陥ってしまうため,出血性ショックを助長・悪化させることがないよう,ショックに陥った患者の保温に努めることは極めて重要な治療行為である。具体的には,手術室の室温を上げる,患者に対してブランケットで体表を覆う,輸液を加温する等の措置をする必要がある。
イ Bが出血性疾患を引き起こす可能性の高い常位胎盤早期剥離を発症していたこと,Bは出血性疾患である産科DICを発症していたこと,本件手術におけるBの総出血量は3438mlであったこと等からすれば,被告医師らには,Bがショックに陥った時点で,Bに対して保温の措置を採る注意義務があった。ところが,被告医師らにおいて,手術室の室温をあげたり,輸血や輸液の加温をしたりした形跡はないから,被告医師らがかかる注意義務に違反したことは明らかである。
(被告らの主張)
争う。

(4) 争点4(巨大子宮への対処についての注意義務違反の有無)について
(原告らの主張)
ア 午前11時に撮影されたBの腹部CTの画像によれば,Bの子宮は巨大であったから,被告医師らは,本件手術において閉腹をした午前10時45分頃には,Bの子宮が巨大であったことを容易に認識し得たというべきである。ところが,被告医師らは,上記のとおり容易に確認し得たはずの巨大子宮という異常所見を見落としている。
イ Bの子宮が巨大化していたということは,すなわち弛緩出血をしていたことにほかならないが,この場合の医師の注意義務は,双手圧迫や子宮収縮剤の継続投与及び抗DIC療法であり,これらの治療が功を奏さない場合には子宮全摘出術を行うべき注意義務があるところ,被告医師らは,上記のとおりBの巨大子宮の存在に気付くことなく,これに対する治療を行わなかった。
ウ したがって,被告医師らがBの巨大子宮への対処についての注意義務に違反していることは明らかである。
(被告らの主張)
原告らは,被告医師らには,Bの子宮が巨大化していたことについて対処する注意義務があった旨の主張をするところ,かかる注意義務はBに弛緩出血が生じていたことを前提としている。しかし,本件手術終了後に,被告Y2が施行したBの腹部超音波検査の結果によれば,Bの子宮内及び腹腔内には明らかな血液貯留の所見はなく,膣鏡診でも異常はみられなかったこと,午前11時18分に撮影されたBの腹部CTの画像においても,子宮内にわずかに出血と思われる液体貯留が認められたにすぎないこと等からすると,Bに弛緩出血が生じていたとはいえない。そうすると,被告医師らには,Bに弛緩出血が生じていたことを前提として巨大子宮に対処する注意義務は課されていなかったものというべきであり,被告医師らにおいて,Bに対して双手圧迫や子宮収縮剤の継続投与及び抗DIC療法や子宮全摘出術を行わなければならない注意義務はなかった。したがって,この点について,被告医師らには注意義務違反は認められない。

(5) 争点5(転送義務違反の有無)について
(原告らの主張)
被告医師らは,Bに対して抗ショック療法及び抗DIC療法を十分に実施し,又は巨大子宮に対する対処を十分に行い,必要がある場合にはICUを有する高次医療施設に転送する義務があったが,被告医師らはこれを怠った。
(被告らの主張)
争う。

(6) 争点6(被告医師らの注意義務違反とBの死亡との間の相当因果関係の有無)について
(原告らの主張)
Bは,常位胎盤早期剥離を発症した後,出血性ショックに陥り,その後産科DICを発症し,多臓器不全で死亡したところ,Bの輸血に対する反応の良さに鑑みれば,被告医師らがBに対して十分なRCC及びFFPの投与をし,かつ,抗DIC療法等を行っていれば,Bを救命することができた。仮にBが羊水塞栓症を発症していたとしても,それは肺塞栓類似の劇症型の羊水塞栓症ではなく,産科DICの発生機序になったにとどまるものであり,この場合の治療法は産科DICのそれと同じであるから,同様にBを救命することができた。したがって,被告医師らの注意義務違反(治療行為上の過失)とBの死亡との間には相当因果関係が認められる。その理由の詳細は以下のとおりである。
ア 午前8時25分の血液検査のデータにおいて,赤血球数の低下がみられ,午前10時51分には更に急激に低下している。これらの検査結果は,多量の出血があったことを示している。午前10時51分の血液検査の結果によれば,大量の出血に伴う出血性ショックが存在していたことは明らかである。また,Bの午前9時30分時点でのSIは1.5を超えており,本件ショックを説明できるのは出血性ショックのみである。本件手術におけるBの総出血量は3438mlであるところ,この出血量のみで考えたとしても,出血性ショックにおけるClassⅡとⅢの境界点であり,ショックに陥ることが十分に考えられる出血量である。被告らは,Bが羊水塞栓症を発症した旨の主張をし,その根拠としてBの死後の剖検により,Bの肺組織から羊水や胎児成分が見つかったことを挙げるが,本件で母体への流入が確認されているのは扁平上皮細胞であり,羊水塞栓症においてもっとも高率に見いだされるはずのムチンは見つかっておらず,扁平上皮細胞は,カテーテル挿入時に高頻度に母体に流入するものであって,本件でも中心静脈カテーテルが挿入されているため,Bの血管内から扁平上皮細胞が発見されたとしても,羊水塞栓症を発症していたことの根拠とはなり得ない。また,アナフィラキシー様反応の関与を確認するためのアナフィラトキシンの染色も行われていない。そうすると,本件におけるBの死因は,羊水塞栓症を発症したことを直接の原因とするものではなく,常位胎盤早期剥離を出発点とした産科出血,産科DICないし弛緩出血を経由しての失血死であったというべきである。
イ 産科DICが重症化した場合,消費性凝固障害によって凝固因子・血小板が消費されるため,さらさらとした非凝固性の出血がみられるはずであるところ,午前10時45分にBの腹膜の縫合がされるまで,Bにはこの所見がない(仮にさらさらとした非凝固性の出血が既に起きていれば,閉腹している最中に被告医師らが見逃すことは考え難い。)。出血性ショックの原因は,不十分な補液による循環血液量不足と,出血によって血管外にヘモグロビンが流出したことで諸臓器への酸素の運搬不足となったことによる諸臓器の低酸素である。この場合は,十分な輸液及びRCCの投与により,Bに生じていたショックは容易に回復していたはずである。午前10時以降,被告医師らの治療懈怠により,Bに重症の低血圧が常態化し,午前10時30分のRCCの投与により一旦血圧が上昇したが,その効果も短時間で消失している。このことから,午前10時30分頃には,産科DICが重症化していたものと考えられるところ,BがRCCの投与により血圧が一時上昇していることに鑑みれば,被告医師らがBに対してRCCを投与し,消費性凝固障害によって失われた止血能力を回復させるためのFFPの投与を継続していれば,Bの容態は安定したものと考えられる。
ウ 羊水塞栓症には,①肺血管に胎児成分等による機械的塞栓が起こり,心肺虚脱,意識消失などを主症状とする羊水塞栓症(以下「心肺虚脱型羊水塞栓症」という。)と,②DIC・弛緩出血,胎児機能不全などを主症状とする羊水塞栓症(以下「DIC型羊水塞栓症」という。)があるところ,心肺虚脱型羊水塞栓症は,短時間のうちに死亡に至る救命困難な羊水塞栓症である。仮にBが羊水塞栓症を発症し,午前9時30分のショックが羊水塞栓症に由来するものであったとしても,このショックからBの死亡までは約3時間あるため,Bが発症した羊水塞栓症は心肺虚脱型羊水塞栓症ではないことは明らかである。DIC型羊水塞栓症は,結局のところ産科DICの発生機序にしかならないため,その治療法は,産科DICに対するものと同じである上,両型を含む羊水塞栓症を発症した場合の救命率は,平均的に87%であり,羊水塞栓症の死亡率を引き上げているのは心肺虚脱型羊水塞栓症であるから,DIC型羊水塞栓症の場合の救命率は90%を上回ることになる。
エ したがって,被告医師らが,Bに対して午前9時30分以降に,十分な量のRCC及びFFPの投与等の抗ショック療法及び抗DIC療法を行っていれば,Bを救命することはできたというべきである。
(被告らの主張)
Bの死因は出血性ショックではなく,羊水塞栓症に起因するショックであるところ,Bが発症した羊水塞栓症は,極めて短時間で全身に強烈なアナフィラキシー様反応(ショック)が起きて,全身性の血管攣縮,血管透過亢進性,浮腫をもたらすタイプのものであり,このタイプの羊水塞栓症には適切な治療法はなく,被告医師らがBに対する治療行為につき注意義務を尽くしていたとしてもBを救命することは困難であった。したがって,仮に,被告医師らに何らかの注意義務違反があったとしても,この注意義務違反(治療行為上の過失)とBの死亡との間には相当因果関係は認められない。その理由の詳細は以下のとおりである。
ア 日本産婦人科学会では死後の解剖により臓器に羊水及び胎児成分が見いだされた場合を「確定羊水塞栓症」と分類しているところ,本件ではBの死後の解剖により,Bの肺から羊水成分と認められる細胞が確認されており,また,血漿中から亜鉛プロプルフィリンが高値に測定され,解剖医により羊水塞栓症と推定されているため,Bが羊水塞栓症を発症していたことは明らかである。原告らは,本件ショックは出血性ショックである旨の主張をしているが,この主張に理由がないことは上記(2)の(被告らの主張)ア(ア)に記載したとおりである。
イ DIC型羊水塞栓症は,母体循環に流入した羊水が母体肺動脈などの血管に血管攣縮を惹起させる,すなわちアナフィラキシー様反応を起こすものであり,この場合,母体に血管攣縮,血管透過亢進性,浮腫を引き起こす。DIC型羊水塞栓症によるアナフィラキシー様反応は,いきなり全身にあらわれる場合と最初に子宮にあらわれる場合があり,後者であっても後に全身に波及するのが一般的である。午前11時過ぎのBの腹部CT画像によれば,子宮は概算で約1300gと巨大化しており,同腹部CT画像によれば,腹部大動脈,下大静脈という大血管が虚脱している。これは,羊水塞栓症によるアナフィラキシー様反応により子宮の浮腫が生じたのみならず全身性の浮腫が生じたために大血管が虚脱したものといえ,これらの事実からBには本件手術終了直後の時点においてDIC型羊水塞栓症のうち激烈な全身性のアナフィラキシー様反応が起きた(すなわち急激な全身にわたる血管攣縮,血管透過亢進,浮腫が生じた)ことは明らかである。
ウ Bが発症した羊水塞栓症に対しては,その救命のためにはDICに対する治療だけでなく,アナフィラキシー様ショックに対する有効な治療を行うことが必要であるところ,現状として,血管透過亢進性及び浮腫に対する決定的な治療法は存在しない。したがって,Bに対して抗ショック療法及び抗DIC療法を行っただけでは救命することが困難であったのだから,被告医師らのBに対する治療について注意義務違反(治療行為上の過失)が認められたとしても,Bの死亡との間に相当因果関係は認められない。

(7) 争点7(B及び原告らの損害の有無並びに損害額)について
(原告らの主張)
ア 損害額
(ア) 解剖検案料 10万円
(イ) 葬儀費 150万円
(ウ) 死亡慰謝料 3000万円
(エ) 死亡逸失利益 4260万4252円
(オ) 胎児死亡慰謝料 1000万円
(カ) 弁護士費用 842万0425円
(キ) 合計 9262万4677円
イ Bの相続人は,夫である原告X1及び母親である原告X2であり,その相続分はそれぞれ3分の2,3分の1である。よって,相続した損害賠償請求権は,原告X1が6174万9784円,原告X2が3087万4892円である。
(被告らの主張)
争う。

第3 当裁判所の判断

1 認定事実前提事実並びに証拠(甲A,甲B5ないし7,16,24,29,30,36,133,乙A1ないし3,6,8,乙B9,13,18,被告Y3,被告Y2,被告Y4,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,次のとおりの事実が認められる。
(1) 診療経過
ア Bの身長は164.0cm,Bの妊娠前の体重は61.0kg,平成20年4月27日(以下において,時刻のみ表記している場合は,平成20年4月27日を指す。)の体重は78.2kgであった。
イ Bは,午前7時頃被告病院に来院した。この日は日曜日であり,被告病院では通常の診察を行っていなかった。被告病院の助産師は,午前7時50分頃,Bの主治医であった被告Y3に電話をかけ,Bの胎児の心拍が取れない旨を伝えた。被告Y3は,上記電話を受けた後,すぐに被告病院へ向かい,午前8時11分頃,被告病院に到着した。
ウ 被告Y3は,Bの腹部エコー検査を行ったところ,Bの胎盤と子宮壁の間に血液と思われる胎盤後血腫の像があり,胎盤自体が厚くなっていたこと,胎児の心拍も認められなかったこと,Bの腹部が非常に硬くなっていたこと等から,Bが常位胎盤早期剥離を発症したと判断し,緊急帝王切開にて胎児を娩出すること(本件手術)を決定した。その際,被告Y3は,Bに対し,血液検査のための採血を行ったが,日曜日であったことから,検査技師が1人しかおらず,検査項目も限られていた。なお,被告病院の産婦人科病棟にICUはなかった。
エ 被告医師らは,午前8時40分に手術室に入室し,Bは午前8時45分に手術室に入室した。手術室に入った時のBの顔色はやや不良であり,冷汗があった。
オ 本件手術の際,手術室には被告医師らのほかに清潔担当の看護師1名がおり,また手術室の外に不潔担当の看護師が1名いた。
カ 本件手術を開始した当時,被告病院にはRCC及びFFPそれぞれ4単位ずつの在庫があったところ,被告Y3は,今後輸血が必要となることを想定し,午前9時,日赤血液センターにRCC10単位の追加のオーダーをするように看護師に指示をしたが,FFPについては追加のオーダーをしなかった。
キ 被告Y3は,午前9時5分,Bに対して脊柱麻酔を行った。被告Y4は,麻酔によって血管が拡張し血圧が下がることを予想し,血圧が下がることを防止するため,午前9時10分,Bに対してエフェドリン4mlを静脈に注入した。
ク 午前8時25分のBの血液検査の結果は午前9時12分に出た。同結果によると,ヘモグロビンが8.2g/dL(基準範囲は12~15g/dL),ヘマトクリットが25.4%(基準範囲は34~45%)であり,Bは軽度の出血をしていることがうかがわれた。
ケ 被告医師らは,午前9時15分,本件手術を開始した。被告Y3が,本件手術の執刀医を務め,被告Y2は助手,被告Y4はBの全身管理を担当した。被告医師らは,午前9時23分,Bの子宮を切開し,人工破膜をさせ,午前9時24分に胎児を,午前9時26分に胎盤を娩出した。胎児は,午前9時27分に死亡が確認された。
コ 被告Y3は,Bに対して輪状マッサージを行い,子宮の収縮がやや良好となったとして,Bの子宮を温存することにし,午前9時30分頃から,Bの子宮の切開創を閉じる縫合を開始した。
サ 被告医師らは,本件手術中,Bの子宮内に溜まった血液(なお,羊水も含む。)を吸引しているところ,午前9時30分時点での吸引量の合計は1200mlであった。また,Bの子宮内にあった凝血塊は289gであった。
シ 被告医師らは,Bに対して,午前9時30分までに,合計約1350mlの輸液(ヴィーンD100ml,ヘスパンダー1000ml,ラクテック約250ml)を行った。
ス Bの血圧は,午前9時30分頃に85/35まで低下し,午前9時45分頃には58/35となったことから,被告Y4は,その頃Bに対し,血圧を上げる作用のあるエフェドリンを8ml投薬し,午前9時50分頃からはカコージンを継続的に投与したが,午前10時30分まで,Bの収縮期血圧が90mmHgを超えることはなかった。
セ 被告Y3は,午前10時頃までにBの子宮切開創の縫合を終え,同時刻頃,Bの子宮を腹腔内に戻し,閉腹を開始した。
ソ Bは,午前10時頃に痙攣を起こした。被告Y4は,Bの痙攣に気が付き,アレビアチンを投与した。この当時のBは,下顎の開口が困難な状況になっていたことから,被告Y4は,舌を圧挫する恐れがあると考え,Bにバイトブロックを使用した。しかし,被告Y3及び被告Y2は,上記Bの痙攣に気付かなかった。
タ 被告Y4は,Bの血圧が依然として低い状態のままであったため,昇圧目的で,末梢血管を拡張する効果のある(すなわち血圧を下げる効果のある)笑気ガスを切ったが,Bの血圧は回復しなかった。
チ 被告Y3は,午前10時30分頃,被告Y4に対して,Bに輸血を行っているかを確認したところ,行っていないとのことであったため,輸血を行うようにとの指示をした。被告Y4は,上記指示を受けて,午前10時30分頃,Bに対してRCC2単位をポンピング(注射器に入れて,手で注入する方法)により約10分かけて投与した。このRCC2単位の輸血を行った後,Bの血圧は一時的に上昇し,午前10時35分には102/75となったが,午前10時47分には55/28と再び低下した。
ツ 被告医師らは,午前10時45分頃,本件手術を終了(Bの閉腹の完了)した。この頃までに,Bにさらさらとした非凝固性の性器出血は見られなかった。被告Y4は,午前10時55分,再度Bに対してRCC2単位を投与したところ,午前11時におけるBの血圧は97/77となった。
テ 被告Y3は,Bの血圧の推移について,本件手術中に十分に把握をしていなかった。
ト 午前11時頃のBの総出血量は3438ml(吸引:1500ml,ガーゼ等:1938ml)であった。
ナ 被告Y4が,被告Y3及び被告Y2に,本件手術中にBが痙攣を起こしたことを報告したところ,被告医師らはBに脳内出血の可能性があるとして,本件手術終了後すぐに,CT検査のためにBをCT室に移動させた。この時,看護師は,被告医師らに対して,Bが下顎呼吸になっていると報告した。被告医師らは,Bに人工呼吸器を装着し,午前11時15分頃,BのCT撮影を行い,その後病室へ移動した。
ニ 帝王切開後の産褥の子宮の大きさは,通常500g程度であるところ,午前11時頃のBの子宮の大きさは,約1300gであった。
ヌ 午前11時頃のBの腹部大動脈及び下大静脈は虚脱していた。
ネ 被告医師らは,Bに対して,午前11時18分にFFP2単位を,午前11時40分にRCC2単位を,午前11時45分にFFP2単位をそれぞれ投与した。
ノ 午後1時24分,Bの心拍は停止し,午後1時40分,Bは死亡した。
ハ 平成20年4月30日,浜松医科大学法医学教室のD医師(以下「D医師」という。)がBの解剖を行ったところ,Bには著名な貧血所見が認められるが,それに相当する出血や血液貯留は認められず,病理組織検査の結果,肺の血管内に羊水成分とみられる細胞(サイトケラチンAE1/AE3)が確認された。また,Bの血漿について亜鉛コプロポルフィリン(胎児の便中に多量に存在するとされている物質)を測定したところ,高値を示した。以上のとおり,Bの肺の血管内に羊水成分とみられる細胞が確認されたこと,Bの血漿について亜鉛コプロポルフィリンの測定結果が高値であったことなどから,D医師は,Bの死因について,羊水塞栓症であると判定した。
ヒ D医師は,上記同日,Bから娩出された胎児の解剖も行い,胎児について常位胎盤早期剥離により死亡したとして矛盾しない旨の鑑定をした。
(2) 医学的知見等
ア 常位胎盤早期剥離正常位置(子宮体部)に付着している胎盤が,妊娠中または分娩経過中の胎児娩出前に子宮壁から剥離した状態をいう。胎盤が子宮壁から剥離すると,剥離面から出血が起こり,この出血を止めるために,母体では凝固因子を大量に消費するため,産科DIC(播種性血管内凝固)を発症しやすく,産科DICをきたす原因の中で最多(約50%)である。常位胎盤早期剥離は,上記のとおり剥離面から出血が起こるため,臨床上,急性貧血,止血のための子宮異常収縮,子宮腔への血液の流出,胎児の低酸素血症等の症状を呈する。急性貧血では,顔面蒼白や冷感という症状を呈することがある。常位胎盤早期剥離は,胎盤剥離面積,出血量,胎児の状況等により軽症,中等度及び重症の3類型に分類され,胎児の死亡が確認された場合,母体の条件により帝王切開又は経膣分娩を選択するとされ,出血性ショックやDICを呈した場合には,それぞれの治療を行う。
イ 弛緩出血分娩第3期または胎盤娩出後の子宮筋の収縮不良による異常出血(500ml以上)をいう。胎児と胎盤が娩出されると,通常子宮は強く収縮して胎盤剥離面からの出血が減少し,やがて出血は止むところ,何らかの原因によって子宮の収縮が妨げられたり,減弱したりすると,胎盤剥離面からの出血が止まらないことがあり,この状態を弛緩出血という。出血量が多くなればショック症状を呈し,DICを併発することがある。出血性ショックを発症した場合は,抗ショック療法(輸液,輸血など)及び抗DIC療法(ATⅢ製剤の投与など)を行う。
ウ 産科ショック広義には偶発合併症によるものを含め妊産褥婦がショック状態に陥った場合すべてをいうが,一般的には妊娠もしくは分娩に伴って発生した病的状態に起因するショックをいう。産科ショックの約90%は出血による出血性ショックであり,残りの10%は非出血性ショック(羊水塞栓症,肺血栓塞栓症,仰臥位低血圧症候群,敗血症性ショック等)である。常位胎盤早期剥離,羊水塞栓症,敗血症性ショックの場合は,DICを伴いやすい。分娩時の異常出血では,一般に800mlから1000mlを超えてなお出血が多めに持続するときは,輸血用血液を注文するべきである。輸血の基準としては,以下のとおりである。
(ア) 循環血液量の15~20%の出血乳酸(酢酸)加リンゲル液(出血量の2~3倍量)
(イ) 循環血液量の20~50%の出血乳酸(酢酸)加リンゲル液とともにRCC
(ウ) 循環血液量の50~100%の出血赤血球濃厚液及び膠質輸液・アルブミン製剤
(エ) 循環血液量の100%以上の出血FFP,濃厚血小板の併用非妊娠時の成人の循環血液量(l)は体重(kg)×0.071で求められる(より正確な循環血液量の算出方法は,0.25×身長(m)3+0.0625×体重(kg)-0.662である。)が,妊娠中は血液量が35%増加するため非妊娠時の循環血液量とは相違がある。
エ 産科DIC産科的基礎疾患によって血液の凝固線溶の平衡が崩れ,血管内の過凝固と二次線溶が交互に繰り返されて,全身的な微少血栓の形成と出血傾向をきたす疾患をいう。特にDICを発症しやすいものとして,児が死亡した常位胎盤早期剥離,2000ml以上の出血による出血性ショック,重度感染症,羊水塞栓症が挙げられる。産科DICの治療は,原則としてショック自体の治療(抗ショック療法)とともに原因疾患の除去や止血を並行して行う。DICでは凝固・線溶系の亢進だけでなく,補体系の活性やサイトカイン・好中球活性化などの炎症性病態も関与しているため,これらの是正を行うための抗DIC療法も必要となる。抗DIC療法には,補充療法として,FFP,濃厚血小板の投与があり,酵素阻害療法として,ATⅢ(アンチトロンビン)製剤,合成抗トロンビン薬の投与がある。経過観察のための検査・措置として,出血量に見合った輸血を行う,具体的には出血量が800mlに達し止血傾向がなければ輸血を準備し,1000mlになれば輸血を開始する。なお輸液も併用する。
オ 産科DICスコア産科DICは突発的に発生し経過が急性であり,診断に時間的な余裕がないことが多いため,基礎疾患の重篤性と臨床症状に重点を置いてスコア化し,早期に治療に踏み切るため,産科DICスコアがある。産科DICスコアが7点以下である場合は,その時点ではDICとはいえず,8点~12点の場合は,DICに進展する可能性が高く,13点以上であれば,DICとしてよい,とされている(ただし,DICと確診するためには,13点中2点,またはそれ以上の検査成績スコアが含まれる必要がある。実際にはスコアの合計が8点以上となったらDICとして治療を開始する。)。産科DICスコアは以下のとおりである。
(ア) 基礎疾患a 常位胎盤早期剥離・ 子宮硬直,児死亡 5点・ 子宮硬直,児生存 5点・ 超音波断層所見及びCTG所見による早剥の診断 4点b 羊水塞栓症・ 急性肺性心 4点・ 人工換気 3点・ 補助呼吸 2点・ 酸素放流のみ 1点c DIC型後産期出血・ 子宮から出血した血液または採血血液が低凝固性の場合 4点・ 2000ml以上の出血(出血開始から24時間以内) 3点・ 1000ml以上2000ml未満の出血(出血開始から24時間以内)1点d 子癇・ 子癇発作 4点e その他の基礎疾患 1点
(イ) 臨床症状a 急性腎不全・ 無尿(≦5ml/時間) 4点・ 欠尿(5<~≦20ml/時間) 3点b 急性呼吸不全・ 人工換気または時々の補助呼吸 4点・ 酸素放流のみ 1点c 心・肝・脳・消化管などに重篤な障害がある場合・ 心(ラ音または縫 盛の喀痰など) 4点・ 肝(可視黄疸など) 4点・ 脳(意識障害および痙攣など) 4点・ 消化管(壊死性腸炎など) 4点d 出血傾向・ 肉眼的血尿およびメレナ,紫斑,皮膚粘膜,歯肉,注射部位などからの出血4点e ショック症状・ 脈拍≧100/分 1点・ 血圧≦90mmHg(収縮期)または40%以上の低下 1点・ 冷汗 1点・ 蒼白 1点
(ウ) 検査項目・ 血清FDP≧10μg/ml 1点・ 血小板数≦10×104/μl 1点・ フィブリノーゲン≦150mg/dl 1点・ プロトロンビン時間(PT)≧15秒(≦50%)またはヘパプラスチンテスト≦50% 1点・ 赤沈≦4mm/15分または≦15mm/時間 1点・ 出血時間≧5分 1点・ その他の凝固・線溶・キニン系因子(例,AT-Ⅲ≦18mg/dlまたは≦60% プレカリクレイン,アルファ2Pl,プラスミノーゲンその他の凝固因子≦50%) 1点
カ 出血性ショック内外出血に伴って循環血液量が大量かつ持続的に喪失する病態であり,血圧が低下する結果,抹消組織が低灌流状態になって,正常な細胞活動を維持できなくなるものをいう。ただし,このような病態に陥る前に,副腎が刺激されカテコラミンが分泌されることによる代償機転が働く,すなわち交感神経作用としての頻脈と血管収縮による蒼白,冷汗などの体表所見が,出血性ショックの早期兆候として出現する。出血量が,循環血液量の15%未満の場合は軽度,循環血液量の15%~30%の場合は中等度,循環血液量の30%を超える場合は高度の出血とされ,ショックが生じるのは循環血液量の30%を超える場合である。出血性ショックでは,意識障害,蒼白,冷汗,チアノーゼ,血管系の虚脱,脈拍触知不能(血圧低下),欠尿又は無尿,四肢冷感等の症状が現れる。出血性ショックの治療は,原則として,ショック自体の治療(抗ショック療法)とともに原因疾患の除去や止血を並行する。抗ショック療法としては,①気道,体位の確保(Trendelenburg体位),②輸液(乳酸リンゲル液の急速輸液),③輸血(失血量と同量の血液の補充),④薬剤の投与(昇圧薬,強心薬,抗不整脈薬,利尿薬,ステロイドなど)である。
キ 羊水塞栓症
(ア) 定義等分娩時,何らかの原因によって,羊水成分(羊水,羊水中胎児由来細胞,胎便など)が母体血中に流入し,母体に突発的な呼吸器不全,ショック,DICなどを引き起こす極めて重篤な病態。約2~3万(文献により約6~8万)分娩に1例と非常にまれな疾患であって,平成19年当時根本的な治療法が見出されておらず,母児ともにきわめて予後不良な疾患であるとされていた。症状として呼吸困難,胸痛,ショック症状などの心肺虚脱を主体とするもの(心肺虚脱型羊水塞栓症)と,DIC,弛緩出血を主体とするもの(DIC型羊水塞栓症)がある。原因は,前者では羊水の固形成分が多数の肺動脈に塞栓しているかあるいは全身性のアナフィラキシー様反応,後者は子宮主体のアナフィラキシー様反応と考えられている。アナフィラキシー様反応を起こした場合,血管攣縮,浮腫,血管透過亢進性といった症状を呈することがある。心肺虚脱型羊水塞栓症は,突然胸内苦悶を訴え,不穏状態を呈し,チアノーゼ,呼吸困難,咳,痙攣発作を起こす。心肺虚脱型羊水塞栓症は10%~15%の患者に発症し,一旦発症すると短時間で生命危機に瀕する重篤な疾患となる。DIC型羊水塞栓症の特徴は,分娩後に「凝固しないさらさらした血液」から始まり,その後弛緩出血→大量出血→ショックの経過を辿る。なお,アメリカにおいては,羊水塞栓症について,心肺虚脱型羊水塞栓症をclassic type,DIC型羊水塞栓症をDIC type,さらにアナフィラキシー反応による血管攣縮・低血圧・痙攣・心停止を主症状とするものをanaphylaxy type(以下「アナフィラキシータイプの羊水塞栓症」という。)として3つに分類しており,心肺虚脱型羊水塞栓症とアナフィラキシータイプの羊水塞栓症は,発症後短時間(多くは1時間以内)に死に至るとされている。
(イ) 診断死亡症例において羊水塞栓症であると診断するためには,死後の剖検で肺組織に羊水や胎児成分が確認されることが必要とされている。救命例では肺の組織は得られないため,以下の臨床的診断方法がある。a 妊娠中または分娩後12時間以内に発症した場合b 下記に示した症状・疾患(1つまたはそれ以上でも可)に対して集中的な医学治療が行われた場合・ 心停止・ 分娩後2時間以内の原因不明の大量出血(1500ml以上)・ DIC・ 呼吸不全c 観察された所見や症状が他の疾患で説明できないとき
(ウ) 治療破水後に,突然呼吸困難,胸痛などを訴え,数分以内に痙攣,チアノーゼ,呼吸停止などをきたし,ショック状態,DICを併発した場合には,羊水塞栓症を疑い,羊水塞栓症を疑った場合には,①酸素投与,②抗ショック療法,③抗DIC療法を開始する。
(エ) 症例a 2003年8月から2007年2月までに浜松医科大学周産母子センターにおいて羊水塞栓症であると診断された症例は109例あり,そのうち75例が生存例,31例が死亡例であった。b 1992年から2006年までに浜松医科大学に集積された135例において,死亡例は65例(48%),生存例は70例(52%)であり,死亡率をタイプ別にみると,心肺虚脱型羊水塞栓症では65.1%,アナフィラキシータイプの羊水塞栓症では51.0%,DIC型羊水塞栓症では44.0%であった。
ク 「産科危機的出血への対応ガイドライン」本件手術より後に,日本産婦人科学会等が公表した,「産科危機的出血への対応ガイドライン」の内容の要旨は以下のとおりである。
(ア) 基礎疾患(常位胎盤早期剥離,妊娠高血圧症候群,子癇,羊水塞栓,癒着胎盤など)を持つ産科出血では中等量の出血でも容易にDICを併発するため,計測された出血量のみにとらわれることなく,SIに留意して管理することが必要である。
(イ) SIが1となった時点で,一次施設では高次施設への搬送も考慮し,出血量が経膣分娩では1リットル,帝王切開では2リットルを目安として輸血の準備を行う。
(ウ) 各種対応にも拘わらず,SIが1.5以上,産科DICスコアが8点以上となれば,「産科危機的出血」として直ちに輸血を開始する。一次施設であれば,高次施設への搬送が望ましく,産科危機的出血の特徴を考慮し,赤血球製剤だけではなくFFPを投与し,血小板濃厚液,アルブミン,抗DIC製剤などの投与も躊躇しない。
ケ 「『輸血療法の実施に関する指針』(改定版)及び『血液製剤の使用指針』(改定版)平成17年9月」輸血を行うべき基準について,貧血の面から,循環血液が正常な場合の急性貧血に対する耐性についての明確なエビデンスはなく,ヘモグロビン(Hb)値が10g/dLを超える場合は輸血を必要とすることはないが,6g/dL以下では輸血はほぼ必須である。Hb値が6~10g/dLの時の輸血の必要性は患者の状態や合併症によって異なるので,Hb値のみで輸血の開始を決定することは適切ではない。
コ 輸液乳酸リンゲル液(ラクテック,ハルトマン液)や酢酸リンゲル液(ヴィーンF,ヴィーンD)は投与量の1/3~1/4しか血管内に留まらず,残りは血管外へ移行する。

2 争点1(初期治療の実施についての注意義務違反の有無)について
(1) 認定事実(2)アによれば,妊産婦が常位胎盤早期剥離を発症した場合,剥離面からの出血の影響により,顔面蒼白や冷感といった貧血の症状を呈することがあるところ,Bが被告病院に来院した際に唇色やや不良で発汗が顕著であったことは,Bが常位胎盤早期剥離を発症し,内出血が生じていることをうかがわせる事情である。
(2) しかし,Bが被告病院に来院したのは,日曜日である平成20年4月27日の午前7時20分頃であって,被告病院の産科の通常の診察時間ではなく,被告医師らがBの来院後直ちに診察を行うことができなかったことはやむを得ないこと,被告Y3が助産師から連絡を受けて被告病院に来院したのは,連絡を受けてから約20分後の午前8時11分頃であり,その後Bの腹部のエコー検査を行い,午前8時25分には輸液(ヴィーンD)の投与を開始していることからすれば,被告Y3のBに対する初期の治療措置に遅滞及び懈怠はなかったものというべきである。
(3) したがって,Bに対する初期治療の点について,被告医師らに注意義務違反(治療行為上の過失)があったとは認めるに足りない。

3 争点2(輸血の準備及び実施についての注意義務違反の有無)について
(1) 出血量及びSIに基づく輸血実施についての注意義務違反原告らは,分娩時の手術における出血量が約1500mlを超えた場合には輸血を開始すべきであると主張しているが,本件手術後に公表された「産科危機的出血への対応ガイドライン」においても,帝王切開時の出血量が21を超えた場合には輸血の準備を行うとされているに留まることからすれば,本件手術当時において,「分娩時の出血量が1500mlを超えた場合には直ちに輸血を行わなければならないこと」は,医療水準となっていなかったものというべきである。医学文献の中には,認定事実(2)エのとおり,出血量が1000mlに達した場合,輸血を開始するとしているもの(甲B7)も存在するが,上記文献は,その記載内容からして,平成20年(2008年)中に公刊されたものと推認されるものの,これについて本件手術が実施された平成20年4月27日より以前に公刊され,その記載内容が当時の医療水準となっていたことを認めるに足りるだけの証拠はないことからすると,上記ガイドラインの記載内容とも齟齬している上記文献を採用することはできない。原告らは,午前9時30分のBのSIが1.6となったことから直ちに輸血を開始すべきであった旨の主張をしているが,産科出血の際にSIに留意して管理すべきとされたのは,「産科危機的出血への対応ガイドライン」公表後であったというべきであるから,同ガイドラインが公表される前の本件手術時において,SIが1.5を超えた場合には直ちに輸血をすべきであるということが医療水準となっていたとまでいうことはできない。そうすると,本件手術当時の医療水準に照らせば,被告医師らにおいて,午前9時30分の時点でのBの出血量及びSI値から判断して,直ちに輸血を行うべき注意義務があったとまでは認めるに足りないものというべきであり,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。よって,被告医師らに注意義務違反(治療行為上の過失)があったということはできない。なお,証拠(甲B40)は,産婦人科の専門医の意見書であり,上記原告らの主張に沿うものであるが,SIが1.5を超えていること,出血量が1500mlに達していることなどを理由に,直ちに輸血等を開始すべきであったとするものであるから,この点において既に,これまで説示したところに照らして採用することはできない(上記意見書は,常位胎盤早期剥離から羊水塞栓症を発症した事例の救命例として3例を挙げているが,いずれの事例も,ICUにおける治療やCHDF(持続的血液濾過透析)によって救命されたものであるとされている。被告病院にICUがないことは上記のとおりであるし,本件手術当日の被告病院においてCHDFを行うことが可能であったことの主張立証はない。)。
(2) 抗ショック療法及び抗DIC療法についての注意義務違反
ア 認定事実(1)ウ及びヒのとおり,Bは,腹部エコーの結果から常位胎盤早期剥離を発症したことがうかがわれること,胎児の解剖結果において,その死因が常位胎盤早期剥離であるとして矛盾しない旨の鑑定がされたことに照らせば,Bは,午前8時頃には常位胎盤早期剥離を発症していたものと推認される。常位胎盤早期剥離を発症すると,剥離面からの出血を止めるため,母体では凝固因子を大量に消費し,その結果産科DICを発症しやすい(胎児が死亡した場合には特に発症しやすい)とされているところ,このことは本件手術当時の産科医にとって通常身に付けておくべき知識であったといえる。そうすると,被告医師らは,Bが常位胎盤早期剥離を発症したことを認識した時点において,今後Bが産科DICを発症することを想定し,Bが産科DICを発症した場合には直ちに治療を開始することができるよう準備を行う注意義務があったものというべきである。
イ 産科DICは突発的に発生し,その経過は急性であって,一旦発症すれば短時間のうちに重症化する恐れがあり,早期の治療が重要であるところ,治療を速やかに開始するための一助として産科DICスコアが定められていることは,既に説示したとおりである。本件手術の日である平成20年4月27日は日曜日であり,被告病院の医師及び看護師の数が通常よりも少なく,行うことのできる血液検査も限られていたことからすると,被告医師らとしては,Bが産科DICを発症した場合には,早期に治療を開始することができるよう,産科DICスコアを計算するべきであったところ,Bのカルテ(乙A1,2)には,被告医師らがBの産科DICスコアを計算していたことをうかがわせる記載はない。
ウ 被告医師らが手術室に入った午前8時40分頃のBの産科DICスコアは8点であった(常位胎盤早期剥離・胎児死亡:5点,冷汗:1点,蒼白:1点,出血時間延長≧5:1点の合計。なお,被告らはBに蒼白があったことについて否定しているが,証拠(乙A1,2)によれば,午前7時20分には「口唇色やや不良」,午前8時45分には「顔色やや不良」とカルテに記載されていることからすれば,Bは蒼白であったといえるし,産科DICスコアは早期に治療を開始できるように定められていることからすれば,よりスコアが高くなるように解釈すべきであるといえるから,被告らの計算を採用することはできない。)ところ,産科DICスコアが8点から12点の場合は,今後DICに進展する可能性が高いとされているのであるから,被告らは本件手術に際して,少なくとも抗DIC療法のうち補充療法としてのATⅢ製剤の準備や,RCC10単位,FFP10単位程度を準備しておくことが必要であったというべきである(なお,証拠(甲B36)によれば,「実際にはスコアの合計が8点以上となったらDICとして治療を開始する。」との記載があるが,8点以上となった場合に直ちに産科DICの治療を開始すべき注意義務まで生じるとは解されない。)。
エ 別紙「診療経過一覧表」及び認定事実(1)スのとおり,午前9時30分のBの血圧は,85/35となり,収縮期血圧が90mmHgを下回っていることから,同時点でBにショック(本件ショック)が生じたと解されるところ,原告らは,同時点から直ちに抗ショック療法及び抗DIC療法を開始すべきであった旨の主張をする。しかし,午前9時30分時点でのBの産科DICスコアは10点(常位胎盤早期剥離・胎児死亡:5点,冷汗:1点,蒼白:1点,頻脈:1点,出血時間延長≧5:1点,収縮期血圧<90:1点の合計。)であって,未だ産科DICが発症したものとはいえないこと,同時点の出血量はおよそ1500ml程度であったと考えられるところ,上記アのとおり,本件手術当時の医療水準に照らせば,1500mlの出血で直ちに輸血を開始すべき義務があったとまではいえないこと,被告医師らはBに対して合計2500mlの輸液(抗ショック療法の一つ)を行っていることからすれば,被告医師らが午前9時30分時点において,直ちに抗ショック療法及び抗DIC療法としてのRCC及びFFPの投与並びにATⅢ製剤等の投与を行わなかったとしても,そのことから直ちに被告医師らに注意義務違反(治療行為上の過失)があったとまで評価することはできない。
オ 別紙「診療経過一覧表」及び認定事実(1)ナのとおり,Bは,手術室を退出した午前11時には下顎呼吸をし,人工呼吸器を装着しているのであるから,この時点での産科DICスコアは14点(常位胎盤早期剥離・胎児死亡:5点,人工換気または時々の補助呼吸:4点,冷汗:1点,蒼白:1点,頻脈:1点,出血時間延長≧5:1点,収縮期血圧<90:1点の合計。)であったと認めることができるのであって,Bは,この時点で産科DICを発症したものと推認することができる。加えて,本件手術が終了した午前10時45分のBの総出血量は3438mlであったことを考慮すれば,被告医師らには,午前11時の時点で,Bに対して抗ショック療法及び抗DIC療法としてRCC,FFP及びATⅢ製剤の投与等を開始すべき注意義務があったというべきである。
カ しかし,被告医師らが午前11時の時点でBに行った抗ショック療法及び抗DIC療法は,合計5600mlの輸液,RCC4単位(560ml)の投与及びエフェドリン等の昇圧剤の投与のみであり,抗DIC療法のうち補充療法であるFFPの投与及び酵素阻害療法であるATⅢ製剤等の抗DIC薬の投与は行われていないのである。そうすると,被告医師らが上記注意義務に違反したこと(治療行為上の過失があったこと)は明らかであり,Bの出血量が3438mlであったことからすれば輸血の量がRCC4単位(560ml)というのも少なすぎるものであったというべきである。なお,FFPについては,被告Y3による看護師への指示が十分ではなく,日赤血液センターに追加のオーダーを行うことができておらず,また,被告病院内にあった在庫4単位(480ml)も,午前9時に取り寄せを依頼してから午前10時30分まで手術室に届けられていないところ,これらのFFPの準備不足等についても,上記アないしウのとおり被告医師らは本件手術前にBが産科DICを発症した場合に直ちに治療を開始できるよう準備しておく注意義務があったのであるから,この点についても,被告医師らには注意義務違反(治療行為上の過失)があったものといわざるをえない。
キ 以上によれば,被告医師らは,Bが常位胎盤早期剥離を発症したことを把握しながら,その後進展する可能性のある産科DICに対する治療の準備が遅れた結果,午前11時において十分な抗ショック療法及び抗DIC療法(RCC及びFFPの投与等)を行うことができなかったものというべきであり,被告医師らの治療には注意義務違反(治療行為上の過失)があったものというべきである。

4 争点3(保温義務違反の有無)について原告らは,被告医師らが本件手術の際,室温を上げたり,輸液及び輸血の加温をしたりする義務があったにもかかわらず,これらを行っていなかった旨の主張をする。しかし,本件の事案に照らして,本件手術当時の被告医師らに,上記原告らが主張するような義務があったことを認めるに足りる証拠はないし,後記7(争点6についての判断)で説示するとおりのBの死因に照らすと,少なくとも,被告医師らにおいて原告らが主張する義務を履行していたからといって,これによってBを救命することができたとすることについては,これを認めるに足りるだけの証拠はないというべきである。よって,原告らの上記主張を採用することはできない。

5 争点4(巨大子宮に対する対処義務違反の有無)について
(1) 認定事実(1)ニのとおり,午前11時15分頃撮影されたBの腹部CTによれば,Bの子宮は約1300gであり,これは通常の子宮の大きさである約500グラムと比較すると巨大な子宮であるといえる。
(2) 認定事実(1)コ及びセのとおり,被告Y3は,午前9時30分頃から午前10時頃までの間に子宮切開創の縫合を終え,午前10時頃から腹部切開創の縫合を開始しているところ,午前10時頃においてBの子宮が既に巨大化していたことを認めるに足りる証拠はなく,同時点で被告医師らに,原告らが主張するような対処義務があったとはいえない。また,別紙「診療経過一覧表」のとおり,被告医師らは,胎盤を娩出した午前9時26分に,子宮収縮剤であるアトニンの投与をしており,また,Bが初産であること,被告Y3が輪状マッサージを行い,収縮がやや良好となったことからすれば,被告Y3がBの子宮を温存することを判断したことに誤りがあったとはいえない。したがって,被告医師らに原告らが主張するような対処義務違反(治療行為上の過失)があったことは認めるに足りないものというべきである。

6 以上説示のとおり,被告医師らには午前11時の時点でBに対して抗ショック療法及び抗DIC療法を開始すべき義務があったのに,被告医師らはこの義務に違反したものとして,被告医師らのBに対する治療には注意義務違反(治療行為上の過失)があったと認めるのが相当である。なお,原告らは被告らに転送義務違反があった旨の主張をするが(争点6),本件の事案に照らして,被告医師らに,どの時点において転送義務があったとしているのか,その主張自体からは不明であるし,上記主張は,被告医師らがBに対して適切な抗ショック療法及び抗DIC療法を行った上で転送すべき義務があったというものであるところ,既に説示したとおり,被告医師らは,適切に抗ショック療法及び抗DIC療法を行うべき注意義務に違反しているのであるから,被告医師らに転送義務が発生する前提を欠いているものというべきである。

7 争点6(被告医師らの注意義務違反とBの死亡との間の相当因果関係の有無)について
(1) Bの死因について
ア 上記3(2)エのとおり,Bは午前9時30分にショックを生じているところ,同ショックが出血性ショックであるのか,羊水塞栓症によるショックであるのかについて争いがあるため,検討する。
(ア) 認定事実(1)ア及び(2)ウのとおり,Bの非妊娠時の身長は164.0cm,体重は61.0kgであり,その推定循環血液量は約4.253l(0.25×1.643+0.0625×61.0-0.662)であったとするのが相当である。妊娠時は血液量が約35%増加することからすれば,Bの妊娠時の推定循環血液量は約5.742lであったと解される。午前9時30分のBの総出血量は1489mlであるところ,上記Bの推定循環血液量からすると,午前9時30分時点でBの血液は約26%が失われていたことになる。
(イ) 認定事実(2)カのとおり,出血性ショックが生じるのは循環血液量の30%を超える場合とされているところ,本件では上記(ア)のとおりBにショックが生じた午前9時30分時点におけるBの出血は,循環血液量の約26%に相当する量であって,直ちに出血性ショックが生じる出血量であったとはいえない。加えて,認定事実(1)シのとおり,被告医師らは,午前9時30分までの間に合計約1350mlの輸液を行っており,このうち乳酸リンゲル液(ラクテック等)や酢酸リンゲル液(ヴィーンD等)は血管内に1/3~1/4しか留まらないとされていることを考慮しても,循環血液量の減少は500ml程度であったと考えられることからすると,午前9時30分のショックは出血性ショックであったとは言い難い。原告らは,午前8時25分のBの血液検査の結果,ヘモグロビンが8.2g/dL,ヘマトクリットが25.4%であり,いずれも基準値より低く,赤血球の低下がみられるところ,これはBが出血をしていたことを示しており,またBの午前9時30分のSIが1.5を超えており,これを説明できるのは出血性ショックのみである旨の主張をする。しかし,Bは午前8時25分の時点では常位胎盤早期剥離により既に子宮内において出血をしていたものと考えられ,上記ヘモグロビン及びヘマトクリットの値はこの出血に由来するものであるといえるし,赤血球が低下しているとはいっても,軽度の貧血程度であるから,このことから午前9時30分のショックが出血性ショックであったともいえないというべきである。
(ウ) 一方で,羊水塞栓症は,分娩時に,何らかの原因によって羊水成分が母体血中に流入することで,子宮又は全身にアナフィラキシー様反応が生じるとされているところ,被告Y3は,午前9時23分に,子宮を切開し人工破膜を生じさせ,この時点で母体血液と羊水成分との接触が生じている。上記破水が生じた7分後である午前9時30分にBにショックが生じており,これは羊水成分が母体血中に流入したためにショックを生じたとして矛盾しないこと,上記(イ)のとおり午前9時30分時点のショックが出血性ショックであったとは言い難いこと,認定事実(1)ハのとおりBの死後の剖検結果によればBの肺から羊水成分が検出されていること等からすると,午前9時30分にBに生じたショックは,羊水塞栓症に起因するものであったと認めるのが相当である。原告らは,Bの肺から検出された羊水成分は扁平上皮細胞であり,これは胎児由来のものであるとは限らないため,D医師による剖検結果(乙A6)が羊水塞栓症であると鑑定していることは,本件でBが羊水塞栓症を発症していたことの裏付けにはならない旨の主張をする。しかし,Bの肺から検出された扁平上皮細胞が胎児由来のものであると確定判断することができないとしても,他方で,母体由来のものであると確定判断することもできないのであって,胎児由来のものである可能性もあることに加えて,上記説示したとおり,本件においてBに生じたショックが出血性ショックとはいえないことに照らすと,上記D医師の判断が誤りであったということはできない。
イ(ア) 認定事実(2)キのとおり,羊水塞栓症には心肺虚脱型羊水塞栓症とDIC型羊水塞栓症があり,心肺虚脱型羊水塞栓症の場合には,呼吸困難,胸痛,ショック症状を呈することが主症状であり,短時間のうちに生命危機に瀕する重篤な疾患となるとされているところ,午前9時30分のBのショックの時点におけるBのSpO2は100を維持しており,呼吸困難の症状がみられていないこと,証拠(乙A1,2)によればBが胸痛を訴えたことはうかがわれないこと及びBが本件ショックに陥った午前9時30分頃から被告医師らは抗ショック療法及び抗DIC療法を十分に行っていない(ただし,前述のとおり被告医師らには午前11時までに抗ショック療法及び抗DIC療法を行うべき注意義務までは認めるに足りない。)にもかかわらず,Bが死亡したのは午後1時40分であり,Bがショックに陥ってから4時間生存していたことからすると,Bが発症した羊水塞栓症は,心肺虚脱型羊水塞栓症でなくDIC型羊水塞栓症であったと認めるのが相当である。
(イ) 認定事実(1)ニのとおり,午前11時頃のBの子宮は,通常の帝王切開後のそれと比較して巨大化していたところ,この子宮の巨大化は,羊水成分がBの血中に流入したことで,まず子宮においてアナフィラキシー様反応を起こし,子宮の血管が透過亢進し,その結果,子宮の浮腫が生じたことによるものと考えることができる。認定事実(1)ヌのとおり,Bの腹部CT画像によれば,Bの腹部大動脈及び下大静脈が虚脱しているところ,これも羊水塞栓症によるアナフィラキシー様反応で子宮の浮腫が発生し,その影響でこれらの大血管の虚脱が発生しているものと考えることができる。
(ウ) 上記3(2)オのとおり,Bは午前11時には産科DICを発症したものといえるところ,午後0時10分のBの血液検査の結果は,血小板数(PLT)が8.1万/μL(基準値は13万~40万/μL,Dダイマーが73.1(基準値は0~1.0)となっており(乙A2の45頁),同時点においてBの血液に明らかな凝固障害が生じていたといえるから,Bの産科DICは急激に進行していたものと考えられる(なお,証拠(乙A2)によると,上記血液検査は午前10時51分に依頼されたものと記録されているが,被告が主張するように,午後0時10分に血液ガス分析のために採取された動脈血の一部が検体として使用されたものと解するのが相当である。)。
ウ これらの事情からすれば,Bは午前9時30分に羊水塞栓症を発症し,子宮を主体とするアナフィラキシー様のショックにより,血管攣縮,血管透過亢進及び浮腫を生じて,その後産科DICも併発したことにより,午後1時40分に死亡したものと認めるのが相当である。
(2) 救命可能性について
ア 原告らは,羊水塞栓症であっても,DIC型羊水塞栓症の場合,結局のところ産科DICの発生機序にしかならないため,その治療法は,産科DICに対するものと同じである上,羊水塞栓症を発症した場合の救命率は,平均的に87%であり,羊水塞栓症の死亡率を引き上げているのは心肺虚脱型羊水塞栓症であるから,DIC型羊水塞栓症の場合の救命率は90%を上回ることになる旨の主張をする。確かに上記(1)のとおり,Bが発症した羊水塞栓症は心肺虚脱型羊水塞栓症ではなく,DIC型羊水塞栓症であり,証拠(甲B18,19,20,34,47,54,77,119,152ないし162,164及び165)によれば,DIC型羊水塞栓症を発症しても救命できた例が存在していることが認められる。また,認定事実(2)キ(エ)のとおり,1992年から2006年までに浜松医科大学に集積された羊水塞栓症の事例において,DIC型羊水塞栓症の死亡率は44.0%であったとされている。もっとも,これらの症例のほとんどは,ICUによる集学的管理・治療が行われたものであり,本件のようにICUのない被告病院の場合とは単純に比較することはできず,これらの証拠から直ちに本件においてBの救命が可能であったと判断することはできない。
イ 証拠(証人C)によれば,Bが発症した羊水塞栓症は,DIC型羊水塞栓症ではあるが,アナフィラキシー様のショックにより,血管攣縮,血管透過亢進及び浮腫が生じており,かつ,浮腫の程度は強いものであったといえ,このような場合においては産科DICに対する治療をするだけで救命が可能であったとはいえず,浮腫に対する治療も重要であるところ,現時点において浮腫が強く現れる羊水塞栓症に対する有効な治療法はなく,その死亡率も低いものではないとされている。Bが発症した浮腫が強く現れる羊水塞栓症の存在については,最近の研究により徐々に解明されてきたという経緯があることも鑑みれば,現時点においても浮腫に対する有効な治療方法が確立されているとはいえない以上,本件手術時である平成20年4月27日時点における医療水準に照らした治療では,浮腫を伴った羊水塞栓症を発症したBを救命することができたとまでは認めるに足りないというべきである。原告らは,浮腫に対しては子宮を全摘出すれば足りる旨の主張もするが,上記5(2)のとおり,そもそも被告医師らにはBの子宮を全摘出すべき義務はなかったといえるし,Bは腹部大動脈及び下大静脈の虚脱も認められており,浮腫は子宮に限局されることなく全身に渡っていた可能性がある以上,仮に子宮を全摘出していたとしても,これによりBを救命することができたか否かは不明であるといわざるを得ない。
ウ そうすると,被告医師らが午前11時にBに対して抗ショック療法及び抗DIC療法を開始し,RCC及びFFPを輸血するとともにATⅢ製剤や抗DIC薬を投与したとしても,Bを救命することが可能であったとまでは認めるに足りないものというべきであり,したがって,被告医師らのBに対する治療についての注意義務違反(治療行為上の過失)とBの死亡との間に相当因果関係があることについては,これを認めるに足りないものというほかはない。

8 以上説示したところによれば,被告医師らは,Bの死亡について不法行為責任を負うことはないし,被告Y1も,Bの死亡について使用者責任及び債務不履行責任を負うことはない。

9 以上によれば,原告らの請求は,その余の争点(B及び原告らの損害の有無並びに損害額)について判断するまでもなく,いずれも理由がない。

第4 結論
よって,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

裁判長裁判官 大久保正道
裁判官 槐智子
裁判官 植木亮

 

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