奈良救急心タンポナーデ事件・一審判決文

(事件概要はこちら控訴審判決文はこちら)

主文
 1 原告らの被告らに対する請求をいずれも棄却する。
 2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1 請求
 被告らは、連帯して、原告甲に対し4074万9586円、原告乙、同丙及び同丁に対しそれぞれ1284万9862円及びこれに対する平成5年10月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、交通事故により負傷した患者が、被告奈良県が設置する県立Y病院に救急搬送され同病院に入院したが、治療中に死亡したとの事案について、同病院の医師に腹腔内出血を疑ってこれに対する治療をすべきであったのに、これを怠った等の過失があると主張し、当該医師に対しては不法行為に基づき、病院を設置する奈良県に対しては債務不履行に基づき、原告らに生じた損害の賠償を求めた事案である。

1 前提事実

 (1)当事者
  ア 原告甲は、亡花子(昭和30年1月24日生、平成5年10月8日死亡。以下「花子」という。)の夫であり、原告乙、同丙、同丁は、いずれも原告甲と花子間の子である。
  イ 被告奈良県(以下「被告県」という)は、奈良県<地番略>に、県立Y病院(以下「本件病院」という)を設置している。
 A医師は、後記花子の本件病院における治療の当時本件病院に勤務していた医師であり、脳神経外科部長の地位にあった。なお、A医師は、社団法人日本外科学会認定医である。B医師は、本件病院の副院長であり、社団法人日本外科学会、日本消化器外科学会のそれぞれ認定医である。

 (2)交通事故の発生
 平成5年10月8日午後4時23分ころ、花子は原告甲の母春江を助手席に乗せた乗用車を運転中、奈良県<地番略>付近で、民家のブロック塀に衝突する交通事故を起こした。同乗用車は、前バンパー、ボンネット、左右前フェンダー凹損の状態であった。また、花子はシートベルトを装着しておらず、当該乗用車にはエアバッグ装置もなかった。なお、スリップ痕が認められず、通常走行する程度の速度で衝突したものである。

 (3)花子及び春江の治療状況等
 花子及び春江は、いずれも救急隊により前同日午後4時47分ころ、本件病院に搬送された。このうち、春江は、初診時は意識障害を認めかかったものの、X線撮影検査中急激に状態が悪化し、呼吸不全、循環不全、意識障害が出現したため、午後6時ころ、奈良県立医科大学付属病院に救急車で転送された。 右転送には、本件病院の医師1名と看護婦2名が同乗し、春江は、同付属病院に午後6時30分に到着したが、同日午後8時40分に死亡した。右直接死因は、外傷性心破裂とされた。 花子は、引き続き本件病院に入院し、別紙治療経過一覧記載のとおり治療を受けたが、同日午後8時7分に死亡した。A医師の死亡診断は、胸部打撲を原因とする心破裂の疑いであった。

2 争点
 (1)花子腸管破裂等よる腹腔内出血によって死亡したかどうか
 (2)((1)を前提として)A医師の治療行為に、腹腔内血を見落とし、これに対する治療を怠った過失又はより高次の医療機関に転送すべき義務を怠った過失があったかどうか
 (3)被告県の責任
 (4)原告らの被った損害

3 争点に対する当事者の主張

 (1)争点(1)(花子が腸管破裂等による腹腔内出血によって死亡したかどうか)について
 (原告らの主張)
  ア(ア)花子の胸部と腹部の間には、ハンドルで痛打した痕(内出血のアザ)がくっきりと残っていた。
 (イ)腹部X線写真の所見
 CT撮影の後、同日午後5時30分までの間に撮影された腹部X線写真によると、右傍結腹腸溝の拡大と右腸腰筋陰影の消失が認められる。
 (ウ)バイタルサイン
 花子の血圧は、左腕で測定困難、右腕で測定して拡張期血圧が26という異常に低い数値を示していた。
 また、同日午後6時15分ころから30分までの間に結果が判明した生化学検査によれば、GOT(212mU/ml)及びGPT(197mU/ml)の数値が高かった。
  イ そもそも、花子はシートベルト未装着の状態でブロック塀に衝突する事故にあったものであって、当然事故態様からみて、ハンドル等による腹部外傷がある蓋然性があるものであるところ、上記の診察所見、生化学検査成績及び腹部X線写真の所見からして、花子は腹腔内出血又は後腹腔内出血の状態にあった。
  ウ(被告らの主張に対する反論)
 (ア)筋性防御
 腹部外傷においては、消化管穿孔があるにもかかわらず筋性防御がみられないこともあることや、意識障害を伴う患者には筋性防御が出現しないこともあることから、筋性防御がないからといって腹腔内出血を否定する材料とはならない。
 (イ)聴診
 腸管損傷があっても、受傷直後には腸雑音は消失しないことがあるので、これをもって腸管損傷であることを否定することはできない。

 (被告の主張)
  ア 理学的所見
 (ア)腹部所見
 花子は、腹部は平坦で柔らかく、腹部膨満はなかったし、腹膜刺激症状としての筋性防御(板状硬)もなかった。
 この所見は、B医師がとったのはもちろん、入院後病室においてB医師も診察で同様の所見を得ていた。腸雑音は搬入時における診察でB医師が確認していた。
 (イ)血圧
 血圧低下については、出血性ショックを否定しうる収縮期血庄は100を超えていたのであり、脈の緊張は良好で、頻脈もなかった。なお、花子の正常時の収縮期血圧は100前後であって、一時152まで上昇したのは、事故によるストレスの影響で高い数値を示したのであって、これが100程度まで下がったからといって血圧低下になっていたとみることはできない。
 (ウ)原告が指摘する、GOT、GPTの数値の上昇については、肝腫蕩にも見られる程度の中程度上昇であって、その他血液検査によっても、貧血、白血球増多等のデータは出ておらず、出血性ショックをうかがわせる所見はなかった。
  イ X線写真読影について
 腹部X線写真の読影については、被告Bのほか、C医師にも読影を依頼した。
 胃内と十二指腸球部内の空気と大腸内のガス像、多量の便塊が主な所見であるが、胃内のガス像、外傷の際は、過剰嚥下のために認められることも多い。大腸内のガス像も腸管の通過傷害を意味するものでもない。肝鎌状間膜の描出、ダブルウォールサインなどの明らかな気腹の所見はない。腹腔内液貯留を示す肝角の消失、傍結腸溝の開大もなかった。
 このような読影の結果、腹腔内出血の所見はないと判断したものである。
  ウ 腹腔内出血への疑問
 花子は、前提事実のとおり、事故当日午後7時ころまでは容態が一応安定していたが、そのころ急激に容態が悪化したものであって、出血の増加に伴って次第に悪化していく失血、低容量性循環不全とは異なる病態であり、またこの急変は、輸液速度の増加にも反応しない心臓原性のものと考えられるものであった。
 このような臨床像を前提とすれば、腹腔内出血に死因を求めることは困難である。
  エ 他の死因の検討
 前提事実記載のとおりの事故態様及び病院搬入後の意識障害、さらには近年の臓器別にこだわらない全身性炎症反応症候群、外傷性ショック等の研究の成果等も併せて検討すると、死因としては心臓障害、脳障害、全身反応、外傷性ショックなどが考えられる。

 (2)争点(2)(((1)を前提として)A医師の治療行為に、腹腔内出血を見落とし、これに対する治療を怠った過失又はより高次の医療機関に転送すべき義務を怠った過失があったかどうか)について
 (原告らの主張)
  ア A医師の取るべき処置
 花子は、前記のとおり(後)腹腔内出血の症状を呈していたのであり、かつ腹部X線写真にその所見があったのであるから、腹部CT検査を実施して右所見を確定すると共に、開腹手術を実施して止血すべき注意義務があった。
  イ 本件病院おいて、前記アの措置をA医師が、とることができなかったのであれば、より高次の救急救命施設に転送(具体的には、○○所在の奈良県立医科大学付属病院救急救命センター又は△△市所在の県立▽▽病院)し、同施設において救命措置を受けさせるべき注意義務があった。
 A医師はこれらいずれかの注意義務を怠り、この過失により、花子は死亡するにいたったものである。

 (被告らの主張)
  ア(ア)更なる検査の可能性について CTの診断性能は高いが、搬送も含め検査には20分から40分はかかる。その間は医師の目が届かないため、全身状態の不安定な外傷患者に対して不用意に行うべきではなく、また、花子のような意識障害、不穏がある患者は、体動によるアーチファクトが多く、的確な診断ができたか疑問である。
 エコー検査についても、その評価はさまざまであり、X線撮影検査、CT検査の余裕がない場合には適している程度のものであるとする見解もあるし、同検査を奨励する見解も、繰り返し検査すべきことを奨励している。いずれにせよ、本件でエコー検査を実施しなかったことが過失と評価されるべきものではない。
 本件で、なによりも優先すべきものは、意識障害を伴う頭部外傷があったのであり、まずは脳損傷を疑い警戒、検査すべきものであったし、診察所見からするスクリーニングに欠けるところはなく、過失には当たらない。
 (イ)被告病院で緊急手術を行うにしても、術前管理や手術部位の消毒、麻酔管理などを実施せねばならず、それには一定の時間を要するのであって、午後7時過ぎの花子の急変に間に合うように手術が可能であったかは疑問である。
  イ 転送義務について
 花子は事故当日午後7時には容態が急変したものであるところ、それ以前に転送が完了していなければ結果回避可能性はない。
 前提事実記載の本件診療の経過、本件病院の設備(CT等の能力から考えて、腹部X線写真読影の完了した前提事実記載の時刻は、ほぼ最速である)、本件病院と高次救急救命施設の地理的条件、花子の他に春江も、本件病院に収容して診察し、かつ、春江のほうが先に容態が悪化し、転送の措置をとったとの事情及び転送中の患者管理の限界、転送が容態に与える悪影響などを総合的に検討しても、本件において花子をより高次の救急救命施設に転送すべき義務があったともいえないし、転送したことによって結果発生が回避可能であったということもできない。

 (3)被告県の責任
 (原告らの主張)
  ア 履行補助者たる被告Bの過失
 被告県は、花子との間で交通事故外傷についての診療契約を締結したが、前記被告Bの過失により花子を絶命させるに至ったのであって、債務不履行により、原告らの被った後記損害を賠償する責任がある。
  イ 救急医療体制整備を怠った過失
 被告県が本件のような片手間救急しか花子に提供できなかったのは、本件病院の救急体制の整備が不十分なものであったことによるものであって、この点も被告県の債務不履行というべきである。

 (被告県の主張)
  ア 被告Bの花子に対する医療行為に過失がなかったことは前記のとおりであり、従って、被告県に債務不履行は生じない。
  イ 前記原告らの主張イは争う。

(4)争点(4)(原告らの被った損害)
 (原告らの主張)
  ア 花子に生じた固有の損害
 (ア)逸失利益(3709万9173円)
 花子は、死亡時に38歳の健康な女子で、専業主婦であったから、その逸失利益は平成5年の産業計、企業規模計、女子労働者学歴計賃金550万7400円に、労働能力喪失期間29年、生活費の控除を4割として、ホフマン式により中間利息を控除して計算される逸失利益は3709万9173円が相当である。
 (イ)慰謝料(2200万円)
 花子は、被告らの医療過誤により死亡されられたものであって、夫と小さな子供3人を残して先立たねばならないこととなり、その精神的苦痛は計り知れない。
 このような精神的苦痛を慰謝するには少なくとも2200万円が必要である。
  イ 原告らの固有の損害
 (ア)原告甲は、花子の葬儀費用として100万円の支出を余儀なくされ、また未成年である原告乙、同丙及び同丁(ただし乙については訴え提起当時)の法定代理人及び本人として、本訴の提起追行を弁護士である原告代理人らに委任し、その費用として720万円を支出した。
 (イ)原告らは、それぞれ妻、母を失ったこととなり、原告らの固有の精神的苦痛もまた計り知れない。
 この苦痛を慰謝するには、原告1名当たり300万円の支払が必要である。
 花子は平成5年10月8日死亡したから、原告らは、前記アの請求権を法定相続分に従って相続した。したがって、被告らは、連帯して原告らに対し上記損害を賠償する責任がある。

 (被告らの主張)
 原告らの主張を争う

第3 争点に対する判断
1(1)証拠(略)によれば、まず、救急医療における腹部外傷の診断臨床所見等につき、次の事実を認めることができる。
  ア 腹部外傷の疑われる患者に対しては、まず外傷にいたる経過とその原因についての聴取、臨床症状の把握、生化学検査(血液、尿)、理学所見の判定、各種画像診断(単純X線撮影検査、CT検査、超音波検査)、腹腔穿刺洗浄法などを行う。検査は、体位変換が不要なこと、身体に無侵襲で繰り返しできること、薬剤を可能な限り使用しないこと、検査室への搬入、搬出がないものがよい。
 受傷早期には損傷状態が検査上の所見として明確に現れないことが多く、これらの検査を、病態の変化に応じて、繰り返し行うことが重要である。
  イ 腹腔内出血は、出血ショック症状の明らかな場合、輸血によってもバイタルサインが不安定な場合、腹膜刺激症状がみられるものなどに開腹手術の適応があり、管腔臓器損傷はなるべく早期に開腹手術を行う必要がある。
 出血の傾向は血圧の下降(100mmHg未満)、頻脈(1分当たり100以上)、尿量減少、ショック症状(顔面蒼白、皮膚冷感等)の出現などにより判断し、腹膜刺激症状としては、庄痛、叩打痛、Blumberg兆候、筋性防御、腸雑音消失などの所見によって判断される。
  ウ CT検査については、画像診断の中心的役割を担うようになってきたが、CT室への搬送を含めた検査時間中は患者監視ができなくなるほか、体動によるアーチファクトが描出されるなどのデメリットもある。
 超音波検査は非侵襲かつ短時間で、ベッドサイドでも実施できる利点があり、腹腔内出血のほか実質臓器損傷の検索にも有用であるが、頻回に行う必要があるとの見解もある。
 単純X線撮影は、画像診断の原点とされ、撮影方法としては臥位正面、立位正面等で撮影するのが理想であるが、重傷外傷患者では循環動態や痺痛のため、望ましい体位がとれないこともある。
 写真では、骨折の有無、異常ガス像の所見、血液貯留像などを判断するが、明確に診断できないケースもあるので、経時的に撮影する必要がある。

 (2)次に、証拠(略)によれば、花子の治療経過につき、次の各事実が認められる。
  ア 花子が本件病院に搬入されてから、被告Bは救急隊から事故の状況について尋ね、ブロック塀に自動車でぶつかって受傷しているとの報告を受け、続いて理学所見、神経学的所見を取った。
 花子は、不穏状態であり、意味不明の発語があり、両手足を活発に動かしており、呼びかけに対しては辛うじて名字が言えるという状態で、医師状態は3−3−9方式で30Rとの判断であった。
 被告Bは、頭部の視診、触診をして項部硬直の有無、眼位、瞳孔等の確認をして、振り子状の眼振を認めた。次に、胸部の所見をとり、頬からあごにかけて及び左鎖骨部から頸肋部にかけて打撲の跡を認めた。呼吸様式、胸部聴診に問題はなかった。
 腹部の聴診と視診では、明らかな腹部膨満及び筋性防御の所見はなく、腸雑音の消失、亢進はなかった。また、四肢の動態に異常な点はなかった。
 この時点で、被告Bは頭部を受傷しており意識障害があることから、頭部CTスキャンをまず実施することとし、C医師の応援を求めた。
  イ このころの花子のバイタルサインは、体温は不明、血圧は収縮期158mmHg、拡張期26mmHg周辺で推移していた。なお、花子の勤務先の定期健康診断(平成4年10月6日実施)における血圧は、収縮期108mmHg、拡張期78mmHgあった。
 血液ガス測定は、呼吸の問題、チアノーゼなどの低酸素の所見がなかったこと、圧迫止血に人手がかかることから、後回しにすることとした。また、CT室にて末梢静脈を確保し、採血検査した。
 CTに引き続き、被告Bは腹部、胸部、腹部の単純X線撮影をして、CT及び各写真に異常な所見がないことを確認した。なお、末梢血液検査で貧血等の所見はなかった。また、全診療経過を通して、血尿の所見もなかった。
  ウ 被告Bはこの時点で花子を入院させたうえ、経過観察することとし、C医師も花子を診察し、経過観察しかないという結論であった。被告Bは、血液生化学検査の結果報告を受け、6時間以内には頭部、腹部のCTを撮影する必要があると判断した。
  エ 花子の突然の容態急変(午後7時ころ血圧測定不能)後は、心臓マッサージ、気管内挿管、蘇生術を施行したが、輸液等にも反応が無く、効果がなかった。

 2 上記認定事実によれば、腹腔内出血を疑うに足りる出血性ショック及び腹膜刺激症状のいずれもが認められなかったというべきであり、死に至る過程も、低容量性循環障害でみられるものとは異なるのであるから、本件検査結果等からして、花子が(後)腹腔内出血で死亡したものと推認することはできない。
 したがって、これを被告Bが見落とした結果花子は死亡したものであるとの原告らの過失の主張は前提を欠く。
 また、前記認定によれば、被告B自身、腹腔内出血を含む腹部損傷につき、これを考慮の対象外としていたものではなく、生化学検査の結果をふまえ、適切な時期に腹部の検査を予定していたものと認められる上、花子には意識障害、不穏があり、頭部及び胸部の外傷についての検査診断も重点的かつ経時的に行う必要があったのであって、腹部外傷に対する検査診断だけを実施できる状態にもなかったのであるから、このような被告の処置に誤りがあったものともいえないというべきである。
 原告らはこの点につき、超音波検査、腹部CT検査を実施すべきであったとか、より高次の救命施設に転送すべき義務があったとか主張するが、そもそもこれらの実施による具体的な結果回避可能性は何ら立証されていない上、前記の花子の経過についての認定判断に照らし、採用できない。

 3 なお、本件で実施された鑑定の結果について検討する。
 本件鑑定は、結論が摘示されているのみであり、X線写真読影及び結論(後腹膜腔出血及び腸管穿破)に関する部分にしても、証拠(略)によれば、文献でうかがわれる範囲でもこれと異なる見解も有力であることが認められ、鑑定の結果をそのまま採用することには躊躇がある。
 その上、そもそも、臨床所見、血液生化学検査等の臨床経過(貧血、末梢循環障害等の所見がなかったこと)及び本件のような突発的な容態の急変が低容量性出血によるとは考えがたいとの被告の見解(それは前記認定のとおり、それなりの合理性がある)に全く言及することなく結論(後腹腔内出血)を導いているのであって、鑑定人の判断の合理性を検証できない。
 そうすると、本件鑑定書の見解を採用することはできないというべきである。

 4 原告らは、被告県の救急医療休制の不備をも主張するが、前記の検討の結果によれば、右不備は結果として花子の救命が奏功しなかったことそれ自体を理由とするにすぎないものである上、被告県においてどのような救急医療体制を構築するかは被告県の施策の問題であるから、これを個別具体的な花子の診療に関する被告県の診療契約上の義務違反(債務不履行)ということはできない。

 5 結論
 以上の次第で、その余の点を判断するまでもなく、原告らの被告らに対する請求には理由がないから、いずれもこれを棄却する。

奈良地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官 永井 ユタカ
   裁判官 島川 勝
   裁判官 松阿弥 隆
 


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