徳島脳性麻痺訴訟

(高裁事件番号平成15年(ネ)第1044号、大阪高裁判決平成17年9月13日。事件概要はこちら)

原告側協力医(金岡毅医師)意見書より

甲39号証から

一審の鑑定医が、脳性麻痺の原因を先天異常としたことに対して

「脳室周囲白質軟化症であることは間違いない」
「プリンシプル産婦人科学2 p.793に「当時は主要新生児集中治療室においては、全ての未熟児にルーチンに、出生後経時的に新生児頭蓋超音波検査を行っていたわけであり、県立中央病院という中核病院においてこのような頭蓋超音波検査すら行っていなかったということはおよそ考えがたい事象であったというべきであろう。
すなわち、原告Aに起こった脳性麻痺は、原告Aが未熟児として帝王切開による人工的早産を施行されたために発生したのであって、鑑定書が主張しているような先天性病因によるものではなかったことは明白である。」
「母の妊娠31週4日の帝王切開に際しては、召集を受けた被告病院の小児科医師には、平成4年の新生児医療一般水準から見て当然とされていた、出生直後の「人工サーファクタント気管内注入療法」をあらかじめ準備しておいて、原告Aが出生した直後に人工サーファクタントを注入し、そのまま蘇生バッグによって肺胞内圧を持続的に陽圧に保って肺胞の虚脱を防ぎながら、即ちチューブアンドバッグによる呼吸管理を行いつつ、新生児集中治療室における持続的陽圧呼吸(CPAP)に移行すべき義務があった。」
「この点に関して、被告病院助産婦陳述書では、原告Aは手術室において、帝王切開で娩出された直後から呼吸が不良であって、気管内挿管が必要な状態にあり、事実被告病院小児科医は二度ばかり気管内挿管を試みたけれども気管内挿管が不可能であったと陳述されている。原告Aには先天的な異常もなかったわけであり、たとえ原告Aが未熟児であったとして、通常の周産期医療の訓練を受けた医師であれば容易に気管内挿管を行うことができたはずであるのに、県立中央病院という中核病院新生児集中治療室において、気管内挿管もできない小児科医がいることは慄然として感を覚える。なお、このように未熟な小児科医に対しては、通常、母体帝王切開を行っている麻酔科医側で気管内挿管を行ってやるというのが常であるが、被告病院にはそのような医師間の連携医療も行われていなかったのである。」

人工サーファクタント投与についてのまとめは、

「まさに適切な気管内挿管や人工サーファクタント投与の時期が失われているというべきだろう。」

小児科医が病棟まで付き添わなかったことについては、

「あくまでも推測の域を出ないが、気管内挿管の技術を持つ上級医を探しに行ったのではないか」

産婦人科医の主張する大量の出血については全面否定して

「無謀な帝王切開を合理化しようとする単なる「いいわけ」にすぎないと考えられる。」

甲60号証から

「脳性まひのほとんどは予防できる疾患なのである。」
「サーファクタントは1000g未満の児にのみ予防的投与を行うべきだと考えるような医師、気管内挿管は有害無益であると考えるような医師、あるいはハイリスク児の搬送に同伴しないような医師、脳性まひは原因不明で予後不良だからそれらの予知に必要な検査は不要だと考える医師、例えば保険適応になっていないから高カロリー輸液にはビタミンB1を転科しないでもよいと考えるような医師に、大切な県民の未熟児新生児医療を任せるべきではないのではなかろうかと考える次第である。
 いわんや臨床の現場にいなければ意見を言うことができないというような医療の密室性にこだわる医師は、「医師は医師の批判に耐える医療をなすべきである」という医療の現状から著しくかけ離れた存在であり、その存在自体が排除され、非難されるべきものではなかろうか。」

甲74号証から

「なお、○○大学病院の新生児集中治療室のPVL発症率を聞かれているが、低出生体重時におけるPVL発症率は全国と同じく5%前後であったが、既に昭和60年代から頭部超音波検査は新生児集中治療室におけるルーチン検査であったわけであり、PVL発症の全例について入院経過中に頭部超音波検査または頭部MRI検査によって早期発見がなされて、家族に対して長期予後を含めて十分なインフォームドコンセントが実施されていたので、医療訴訟にまで発展した症例は皆無である。」

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