医療問題弁護団問題 ~1~

  事件番号 終局 司法過誤度 資料
一審東京地裁 平成19年(ワ)第35365号 和解 和解  

 平成21年のある日に傍聴した事件です。91歳とご高齢の方が、医療過誤によって亡くなったとして、遺族が原告となり訴えを起こしたものです。原告本人尋問の最後に、

病院というのは患者を救うところだと思っていましたが、患者を殺すこともあるのだと思いました。私は今でも○○看護師が母を殺したと思っています。

という不穏な言葉が飛び出したため、気になっていました。そしてようやく先日、記録を確認してきました。

 事件概要は後回しにしますが、この事件でなにより気になったのは、原告代理人の弁護活動でした。訴状日付は平成19年12月30日、原告側第1準備書面は平成20年6月3日付なのですが、その第1準備書面には、以下のような記載がありました。

なお、本件義務違反の具体的内容と結果との因果関係については、文献収集とその内容による検討がなお不十分であるので、次回書面にて再整理を行いたいので、今一度、次回までの準備の時間をお借りしたい。

 また、第2準備書面が平成20年7月7日付ですが、因果関係については、

次回書面において主張する。

 結局、賠償責任追求に関する主張は、平成20年9月2日付の第3準備書面でようやく揃えたというわけです。

 普通、弁護士が訴訟を受任するとなれば、それなりの見通しを立ててから受任するものだと思っていたのですが、この事件はそうではないようです。原告代理人を確認したところ、宮城朗弁護士と宮川倫子弁護士となっており、さらにウェブで確認すると、二人とも医療問題弁護団の一員であることが分かります。特に宮城朗弁護士は医療問題弁護団の政策班の一員でもあり、より重責を担っていると考えられます。そのような弁護士が、第1準備書面を提出するに至って未だに主張の検討が不十分であるということは、如何なものでしょうか。医療に例えれば、検査などの検討がなされないままに当てずっぽうで治療・手術に突入するようなもので、これで結果が悪ければ賠償責任を問われかねないものだと思われます。このような塩梅ですから、その後に出てきた原告側の主張に説得力はなく、事件は最終的に100万円で和解になっていますが、その100万円は医療側が支払うよりも、原告側代理人が支払う方がより公平性に適っているようにすら思います。

 医療事故調査委員会設置に絡めて言えば、私自身は医療事故調査委員会に法律家が関与することに必ずしも否定的ではありませんが、もし医療問題弁護団がこのような弁護活動をした弁護士に対する自己批判ができないような団体なのであれば、その団体の弁護士が医療事故調に関与することは適切ではないと思われました。

 以下、事件概要です。

平成19年(ワ)第35365号
原告 B、C
原告代理人 宮城朗、宮川倫子
被告 Y
被告代理人 平沼髙明、平沼直人、加治一毅、柳澤聡、平沼大輔、小高健太郎、金子玄、渡辺周

亡A 明治45年○月○日生、平成16年1月8日死亡、当時91歳

昭和53年から慢性腎不全で通院

平成15年
5月31日 自宅で転倒して整形外科受診。
6月4日 慢性腎不全に対して、人工透析と腹膜透析の説明をした。
10月29日~11月22日 入院、シャント造設。(訴状と争点整理案とに日程の食い違いあり)
11月29日~ 嘔気、食欲低下で内科入院。
12月4日 8:45 病室でベッド上端に座位となっていたところ、病室内のポータブルトイレへ移動しようとして、転倒。靴下を履いていたため滑った様子だった。

平成16年
1月7日 3:35 トイレへ行きたいと看護師を呼び、病室外のトイレへ移動。担当看護師がAのそばを離れた際にAはトイレの個室内で転倒。左大腿骨頚部骨折。
1月14日 左大腿骨人工骨頭置換術(全身麻酔下)
1月16日 リハビリ開始
1月26日 朝レントゲンを施行したところ、左股関節が上方へ脱臼していた。
     9:15 透視下で整復を試行するも困難。
     全身麻酔下に非観血的に整復施行するも筋拘縮が強く困難。
     16:03 全身麻酔下で観血的に脱臼を整復。
1月28日 透析中にシャント閉塞。
1月29日 16:25 全身麻酔下にシャント再作。
2月1日 2:00 Aは強い不穏状態に。レントゲンで人工骨頭脱臼再発を確認。
     4:50 非観血的に整復施行するも不能。
     9:20 全身麻酔下で非観血的に整復。
2月2日 10:40 透析中に意識障害、血圧低下。血中ガス酸素分圧も測定できず。
その後意識状態は徐々に改善するも、2月4日 0:20容態が急変、心停止し1:45分に死亡。

争点
1) 転倒、転落防止義務違反
原告らの主張 3:45~3:50までAを放置した。
被告の主張 他の患者からナースコールがあった。Aの足がトイレで地面に付くことを確認し、終了後にコールをするように指示、Aの了解を得てその場を離れた。予見は不可能だった。
2) 人工骨頭置換術後の脱臼および再脱臼防止の管理義務違反
3) 損害額
慰謝料 1650万円
遺族固有の損害 葬儀代各75万円、固有慰謝料100万円、弁護士費用100万円
原告一人あたり (1650万円÷2)+75万円+100万円+100万円=1100万円

平成22年6月13日記す

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