福島VBAC訴訟

  事件番号 終局 司法過誤度 資料
一審福島地裁 平成14年(ワ)第114号 判決平成20年5月20日 判決文
鑑定書抜粋
二審仙台高裁 平成15年(ネ)第5683号 和解 不当  

一審

 鑑定書では,標準的な医学書や適切な論文に沿って,この事件の医療行為に過失はないものと示していますが,判決文ではそれを乗り越えて,明確な証拠を示さないままに過失を認定しています。

 判決の中で最も異常なところは,裁判所が過失を認定した争点5についてです。

争点5は,「午前3時10分,帝王切開に移行すべきであったか。」(原告側が,帝王切開に移行すべきだったと主張している)というものです。

ところが判決では,この争点5に対して以下のような過失を認定しています。

「被告病院の医師等により慎重に原告Cの訴え等により医師による内診や検査をして確認すべきであったといえる。」

と,帝王切開に移行すべきとの判断を示さずに,注意義務違反を認定しているのです。しかも,争点6(午前3時32分,人工破膜を行わずに帝王切開に移行すべきであったか。)や,争点7(人工破膜後,児心音が低下した段階で,帝王切開に移行すべきであったか。)については,いずれも医師の過失を否定して,つまり帝王切開に移行すべきであったとはいえないという結論なのです。争点5で問われた午前3時10分よりも後の時間においても,帝王切開に移行すべきだったといえないにもかかわらず,争点5の過失が認められることは異常であり,お粗末な判決です。

 事件詳細については以下のページをご参照ください。

福島VBAC訴訟 報道編福島VBAC訴訟 判決文編新小児科医のつぶやき

ちなみに,この事件の原告側弁護士は,医療問題弁護団の藤田康幸氏と高木康彦氏です。

原告側の意見書を書いた医師として,金岡毅氏の名前が挙がっています。金岡毅氏は,徳島脳性麻痺訴訟の控訴審で,被告病院について糾弾調の意見書を書いた人物です。この福島VBAC訴訟では,彼の意見書は大きくは取り上げられませんでした。

病院側は控訴しました。

同病院は「判決は、医学的判断に対する矛盾があり、医療現場に与える影響も大きく、診療にも重大な支障が出ることが懸念される」とし、「具体的な主張・内容は裁判の中で明らかにしていきたい」としている。(2008年5月28日 読売新聞より)

控訴審

 病院側弁護士の最初の意気込みとは裏腹?に、早々と和解で終結しました。

8500万円支払いなどで和解 出産時医療ミス

 出産時の医師らの不適切な対応で次女が脳性まひになり、4歳9カ月で死亡したとして、福島市の法科大学院研究生幕田智広さん(42)と妻の美江さん(42)が福島県立医大(福島市)に1億円の損害賠償を求めた訴訟は26日、医大が和解金8500万円を支払い、出産事故防止に向けた改善策を講じることで、仙台高裁で和解した。

 和解条項に盛り込まれた改善策は(1)妊婦やその夫から十分なインフォームドコンセント(十分な説明と同意)を得る(2)切迫子宮破裂の兆候を認めた場合、速やかに緊急帝王切開を行う(3)原告の意見を聞いた上で、医師や看護師ら向けの要領や指針を半年以内に作成する—が内容。

 記者会見で、智広さんは「判決を得たかった気持ちもあるが、和解は医療の在り方を考えてもらう上で有意義だったと思う」と評価。美江さんも「前(再発防止)に進んでいくことができる。次女の死は無駄ではなかった」と語った。

河北新報 2009年2月26日

 一審判決文と鑑定書をいくら読んでも、どうして数千万円を支払っての和解という決断になるのかが、全く理解できない事例です。大野事件で無罪を得て脚光を浴びた福島県の産科医療に、影を落とす判断ではないかと思うところです。

平成21年4月11日追記(控訴審部分)


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