閉塞隅角症(狭隅角)について

2012年10月17日

あなたの眼は、角膜と虹彩とのすき間(隅角)が狭く、「急性緑内障発作」を起こしやすいです。急性緑内障発作とは、その狭い隅角が完全に閉じることによって、眼の中の水(房水)の排水が滞り、眼内の圧力が非常に高くなり一気に緑内障が進行し、1~数日で失明あるいはそれに近い状態になる病気です。

今の時点での対処法は以下の3つの方法があります。

1)           様子をみる。

2)           白内障手術を行うことによって、急性緑内障発作を予防する。

3)           レーザー光線で虹彩に小さな穴を開けて、急性緑内障発作を予防する。

以下にそれぞれの利点、欠点を説明します。

1) 様子をみる場合、目に傷を加えないのでその点では安心ですが、急性緑内障発作を起こす可能性はこのまま続きます。そしてその可能性は加齢と共に少しずつ高くなります。急性緑内障発作が起きると、激しい眼痛、頭痛、吐き気、かすみ目などの激烈な症状が出ます。その場合はできるだけ急いで治療を受けることになります(概ね24時間以内)。多くの場合その治療は、点滴をした上でレーザー治療をすることになりますが、未然に防ぐ治療の場合よりも成功率が下がります。レーザー治療をしても治らない場合は、大病院で入院・手術となる可能性もあります。概ね24時間以内に治療を開始すれば、失明することは滅多にありませんが、見え方が悪くなってそのまま戻らない可能性はあります。

2) 白内障手術を行うと、虹彩の裏側に位置する生身のレンズである水晶体が無くなり、角膜と虹彩とのすき間が広がるため、急性緑内障発作の危険がほぼなくなります。欠点は、目玉をメスで切るため、そこからばい菌が入って化膿するなどの影響で失明につながる恐れがゼロとは言えないこと(おそらく数万人に1人くらい)と、手術後に老眼の状態になりピント調節が全くできなくなることです。

3) レーザー光線で虹彩に小さな穴を開けると、眼の中の水のバイパスができることになり、急性緑内障発作の危険がほぼなくなります。レーザー治療では目玉をメスで切るのではないため、目玉の中にばい菌が入る心配がありません。ただし白内障手術に比べると、急性緑内障発作の危険性が多少残る場合があることと、何年もたってから角膜が濁ってしまい、角膜移植が必要になる場合があります。そうならないようにするためには、レーザー治療後も定期的な受診で角膜内皮細胞密度というものを測定し、角膜内皮細胞密度が減るようであれば、白内障の手術を早めに受けることになります。レーザー治療した後の白内障手術は、レーザー治療をせずに白内障手術をする場合に比べて、多少難しい場合があります。

あなたの眼は、

□ 隅角は狭いほうですが、今すぐに急性緑内障発作を起こす可能性は低いと思います。定期的な診察を受けて、さらに狭くなっていないかを時々検査する必要があります。万が一発作の症状が出た場合には、急いで受診をして頂きます。休診日の場合には、別の眼科か大学病院などで救急受診する必要があります。

□ 隅角が狭く、急性緑内障発作を起こす可能性があります。今まで何十年も起きていないので、今日明日に起こる可能性は決して高くないですが、ゼロとも言えません。予防治療をするかしないかは、あなたの決断次第にもよりますが、医師としては、

□ 予防治療しておいたほうが良いと思います。
□ 予防治療しないという選択もあると思います。治療しない場合は万が一発作の症状が出たら、急いで受診をして頂きます。休診日の場合には、別の眼科か大学病院などで救急受診する必要があります。

□ 隅角が非常に狭く、いつ急性緑内障発作を起こしてもおかしくありませんので、予防の治療をお勧めします。

予防治療としては、

□ 既に白内障がそれなりに進んでいるので、白内障手術を勧めます。

□ 白内障はまだ軽いですが、目の形状や年齢を考えると、白内障手術を勧めます。

□ 白内障はまだ軽いので、まずはレーザー治療での予防を勧めます。ただしいずれは白内障手術を受けるときが来る可能性が高いので、強い希望があれば白内障手術をすることも考えられます。

1)治療せずに様子をみる、2)白内障手術、3)レーザー治療、いずれを選んでも、それぞれに危険性があって絶対の安心は得られませんが、覚悟を決めて方針を決めましょう。

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