日刊競馬のキャッチコピーに馬名が登場した日

2017年3月19日

(1989年東京王冠賞)

私が南関東の地方競馬に行くときに買う新聞は,いつも日刊競馬だった。馬券を離れたコラム「馬とペン」「タイムトンネル」と,見出しのキャッチコピーが好きだったからである。

「馬とペン」「タイムトンネル」のテーマは変化自在で,その日のメインレースについてであったり,南関東競馬への提言だったり,競馬場での楽しみ方だったりと様々であった。

見出しのキャッチコピーは,例えば1987年の羽田盃(3冠の第1戦)では「誰が奪う三冠パスポート」だったし,1988年の東京ダービーでは「闇を焦がせ陶酔の世界へ幕があく」というものだったし,1989年の帝王賞では「群雄割拠!乱世は真の英雄を待つ」という具合で,決してレースに出走する馬の名前が出るものではなかった。ちなみにこれは中央競馬版でも同様で,例えば1987年の有馬記念では「君の夢 僕の夢 胸熱くしてともに見つめよう」というものであった。

しかし,1989年の東京王冠賞(3冠の最終戦)でその伝統は覆された。

「世界が見える 最強牝馬ロジータ」

その年,南関東競馬はロジータ一色だったといっても過言ではない。6番人気で一着した京浜盃を皮切りに,5連勝で東京ダービーまでを完勝。当時の地方所属馬唯一の中央挑戦の窓口であったオールカマーに出走し,レコード勝ちのオグリキャップに0.7秒差の5着でジャパンカップ出走権を手にしていた。同世代の他馬が強くなかったこともあるだろうが,間違いなく南関東最強牝馬であった。「世界が見える
最強牝馬ロジータ」という慣例破りの見出しは,そんなロジータに与えられた小さな勲章だったのだと思っている。

果たしてロジータは東京王冠賞を完勝し,ジャパンカップはさすがに最下位だったが,その後の東京大賞典,川崎記念を完勝して引退,早々と繁殖入りした。もしあと数年実践を重ねていたらもっと大きなことをやっていたのではないか,と思うことしきりであったことを思い出す。

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