令和4年3月11日: 東日本大震災トリアージ訴訟を掲載
白内障手術・ディープな質問
最近は点眼麻酔が一般的に思いますが、テノン嚢下麻酔をされているのですか?
施設を移って現在はテノン嚢下麻酔をしていますが、以前勤務していた病院で行っていた点眼麻酔下手術のときに比べて、術中の痛みの訴えが減った印象があり、現在ではテノン嚢下麻酔を標準としています。ただしこれはあくまでも印象なのであって、統計的に明らかなことではありません。
平成23年4月に勤務先が変わり、再び点眼麻酔を基本とするようになりました。テノン嚢下麻酔で行っていた平成23年3月までよりも、手術中の目の感覚が残る方が増えた印象はあります。今後、点眼麻酔のみで続けるか、テノン嚢下麻酔を復活させるか、あるいは前房内麻酔を行うか、検討しようと思っています。(この段落は平成23年6月6日追記)
一手法は一般的ではないと思うのですが、却って危険ではないのですか?
一手法の最大の利点は、核分割までの操作が愛護的であることだと考えています。ハイドロダイセクションを十分に行い、核を押すことなく静かに溝堀りを行い、前房に粘弾性物質を注入して鑷子類で核分割を行うことにより、核分割までのチン小帯への負担を少なくできるのではないかと考えます。鑷子類での核分割は、左右均等に力を及ぼすことができて、嚢およびチン小帯への負担を減らすことができると考えています。
核分割後の核片処理の操作は、二手法のほうがより安全かもしれません。しかし grade 2 程度の核なら核処理は特に困難はなく、わざわざサイドポートを開ける必要性も感じません。grade 3 程度だと多少核処理に手間取る場合があり、途中からサイドポートを開ける場合があります。grade 4 では最初から二手法にしますが、最初からフェイコチョップ法で行うか、核分割までを一手法で行うかは、症例によって変えています。核分割までを一手法で済ませると、その時点で既に核の体積が減少していることになるので、その点では後の操作で有利です。 なお,角膜内皮保護にはビスコートを多めに使用したソフトシェルを用いています。
核分割に使用する道具は何ですか?
最初はギャスキンなどのレンズ鑷子を用いていましたが、最近は前嚢鑷子を用いています。どちらも上下を逆にして用います。どうしても割れない場合には、はんだや製の核分割鑷子や、プレチョッパーを用いることもありますが、そのような事態はめったに起こりません。ただしこれは現在の切開創2.8mmの場合での話であり、2.65mmを切ると核分割方法を修正する必要が出るように思っています。
耳側角膜切開はどうですか?
利点は、奥目などを気にせずできること、一手法で施行しやすいことでしょうか。角膜切開だと「感染しやすい」という話も聞きますが、私としては疑問に思っています。前々任地では自足角膜切開でも術後眼内炎は10000例以上おきていませんでしたし、前任地でもわかっている範囲(1000例以上)では起きていません。
どうしても創口の安全性を高めたいと考えるときには、耳側強角膜1面切開1手法で行うことがあります。サイドポートも無く、唯一の強角膜創も結膜で覆われるので、最高の感染予防…かも知れません。