令和4年3月11日: 東日本大震災トリアージ訴訟を掲載
韓国語発音改善講座4
4 現代の初声の ㅅと ㅆの発音とその発音改善法
前回の内容とそれに付随する議論は,「現代では激音・濃音は高く発音される傾向にある,よって音の高低を容易につけられる我々は高く発音すべし」という話でした。
この事に気付いてから暫く私は,「平音」に分類されている ㅅの初声は低く,「濃音」に分類されている ㅆの初声は高く発声し続けたものです。ところが,遠からずそれは間違いだと気が付きました。実際の韓国人の発音は,ㅅも ㅆも高かったのです。つまり濃音である ㅆはともかく,ㅅの発声は,平音のようなだらりとした発音ではなく,激音のように強い音だったのです。
私はびっくりして早速友人の韓国人に尋ねました。「もしかして ㅅは他の激音同様に息を強く出す音ではないのか?」と。友人の答えは「そう言われてみればそうだ」でした。その後観察を続けた結果,初声の ㅅはどう聞いても激音に分類したくなるものに聞こえたものです。要するに,ㅅの初声を平音に分類したのは,大昔の状況はいざ知らず,現代では音声学的に言って不合理な分類と思われるのです。
考えてみれば似たような例は日本語にもありますね。「は」と「ば」と「ぱ」の関係において,「か」と「が」の関係にあるのは,「は」と「ば」ではなく実は「ぱ」と「ば」である,というやつです。尤もこれはかつての「は」は現代の「ぱ」のような音であった,ということが判っていますから,昔の人が言語学的に落度を犯したわけでなく,時代と共に発音が変わったため不合理が生じた,ということのようです。
では韓国語のほうはどうなのでしょうか? かつての ㅅは他の平音のようにだらりとした音だったのでしょうか? そんなことは今となっては判りませんが,現代に生きる我々としては,現地人がそうするように高い音で発音したらいいと思います。してみるとここにきて,結局は ㅆと ㅅの違いは,濃音と「激音」の違いだ,という事になり,当該発声器官を絞るようにして息を少量しか出さない音である濃音と,息を大量に出す音である激音との違いをマスターしなければ,という事になるわけです。幸い,ㅆは濃音の中ではわりと出しやすい音で,日本語でいう「ッーサ」と言うつもりになって,舌と上歯の付根辺りの息の通り道を狭めたところに息の圧力をかけて"s"の音を出したらいいわけです。一方,「激音」かもしれない ㅅは,吐き出す息の邪魔をせず,たくさんの息が出るように「サ!」といえばいいのです。しかもどちらも高い音でです。