判決日の調書に裁判官が2名しか記載されておらず差し戻された事件の閲覧

昨年9月に東京高裁でされた判決ですが,千葉地裁松戸支部で行われた一審の判決日の口頭弁論調書に,裁判官が2名しか記載されていなかったため,判決言い渡しに関与した裁判官の構成が明らかでなく,判決言渡しが適式にされたことが証明されないので違法として,事件を千葉地裁に差戻した事件がありました。東京高裁平成29年(ネ)第2060号です。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=87075

単純ミスと思われ,こういうことがあるのは仕方がないと思ったのですが,ツイッターの法律家界隈でちょっとは話題になったようなので興味を持ち,平成30年1月12日に松戸地裁で記録の閲覧をしてきました。

書記官が補充の裁判官名を記載し忘れ,裁判長もそれに気づかずに認印を押印した可能性が高そうに思うものの,一方,裁判長が「田村裁判官は差支えだし,二人でもやむを得ない」と違法手続きを強行した可能性も理論上は残るとしか言いようがないと思われました。

ポイントを挙げておきます。

  1. 千葉地裁松戸支部での審理で,途中弁論準備手続きを八木貴美子裁判官と日下部優香裁判官とで行われていた。
  2. 平成29年1月20日の第3回口頭弁論の調書には,八木貴美子裁判長,田村政巳裁判官,日下部優香裁判官の名前があり,裁判長の認印が押されていた。判決書には,「裁判官田村正巳は,差支えのため原判決の判決書原本に署名押印できない」旨記載があった。
  3. 平成29年3月24日,判決言渡し。口頭弁論調書によれば,出頭した当事者はなし。調書には八木貴美子裁判長,日下部優香裁判官の名前があり,裁判長の認印が押されていた。
  4. 控訴審では一審原告側から,判決言渡し日の裁判体の構成に関する主張はなかった。
  5. 平成29年9月5日,東京高裁で控訴審判決言渡し。
  6. 平成29年9月11日,新潟県警察の方が訴訟記録を閲覧。その際に身分証明書として提示したものは警察手帳だった。
  7. 千葉地方裁判所に差戻されたため,まず千葉地裁で事件番号が付されたのち,平成29年10月6日に千葉地裁松戸支部に回付された。
  8. 千葉地裁松戸支部で改めて事件番号平成29年(ワ)第834号が付された。
  9. 平成29年10月24日,松戸支部民事部が終結した口頭弁論の再開を決定した。
  10. 平成29年12月8日,第1回口頭弁論。裁判官は八木貴美子裁判長,田村政巳裁判官(差戻し前裁判で判決言渡し日に差支えであった裁判官),池本拓馬裁判官によって行われた。原告側から裁判官忌避申立てがされた。

ケアレスミスは誰にでも起きるものなので,過剰な問責はしないで欲しいと思うところですが,一方で,これによって当事者が被る時間的費用的損失は償える道があればいいのになとも思います。

差戻し判決をした裁判長は大段亨裁判官でした。自分の中で大段亨裁判官といえば,天津で妻が自殺したという事件の控訴審で,遺族側を逆転勝訴させたこと,そしてその事件についてクリニック側からされた強制執行停止申立てを認めたことが印象深いです。特に,控訴審判決の強制執行停止には相当に強い条件が付けられているにもかかわらず,自身が出した判決に対して,これといった逆転する事情などの疎明もなされていない申立てを認めたことが印象深かったです。

ともあれ松戸支部の本件はこれ以上追いかけても仕方がないと思うのですが,この記事を書くに当たってWeb検索をしたところ,この事件で原告に暴行を加えていたと原告から指摘されていた警部補が,千葉地裁の決定で刑事訴訟に付されていたことを知りました。

http://www.sankei.com/affairs/news/170905/afr1709050042-n1.html

内容をもっとよく見ないとなんとも言えませんが,この手の責任追及は過剰になされると現場の萎縮に繋がりますからほどほどにして頂きたいところです。

なんともいろいろなことが起こる事件ですね…

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「判決日の調書に裁判官が2名しか記載されておらず差し戻された事件の閲覧」への2件のフィードバック

  1. >一方,裁判長が「田村裁判官は差支えだし,二人でもやむを得ない」と違法手続きを強行した可能性も理論上は残るとしか言いようがないと思われました。

    どういう根拠からの推測でしょうか?
    言い渡しだけ他の裁判官が入るなんてことはよくあるし、手続的にも容易
    違法手続を強行する理由は全くないと思いますが

    1. 具体的な根拠はないので,「可能性も理論上は残る」と述べるに留めたわけなんですが…

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