神戸大抗がん剤投与死亡訴訟で和解1500万円

2012年3月4日

NHKオンラインのキャッシュからですが、

抗がん剤投与死亡訴訟 和解
神戸大学の付属病院で抗がん剤の投与を受けた12歳の男の子が死亡したことをめぐり、遺族が医療ミスだと訴えた裁判で、病院側が解決金として1500万円を支払うことで和解が成立しました。
この裁判は11年前、神戸大学医学部付属病院で、当時12歳の男の子が悪性リンパ腫の治療中に死亡したことについて、母親が「抗がん剤の副作用が原因で治療を過った」と訴え、病院側に賠償を求めていたものです。
1審は、母親の訴えを退けましたが、2審の大阪高等裁判所が去年12月、「医師が男の子の状態を十分に確認しないまま、抗がん剤の投与を続けた過失がある」と指摘し和解を勧告していました。
これを受けて協議が進められた結果、病院側が母親に1500万円の解決金を支払うことできょう和解が成立しました。
母親は、「医療現場では抗がん剤の投与を適切に行い、このような事故を2度と起こさないでほしい」と話していました。
一方、神戸大学医学部付属病院は「医療ミスとは認識していないが、裁判の長期化などを考えて和解に応じた」としています。
03月01日 18時46分

この記事からは、どんな過失があって、死亡との因果関係があるのか皆目見当不明です。他の記事によれば、一審神戸地裁判決は「専門医の研究会が作った手順に従っていた」として請求を棄却したものを、大阪高裁で西村則夫裁判長が過失があると判断したようですが、一審では専門医の研究会が作った手順に従っていたと認定したものを、どのような思考回路で過失ありの指摘をしたのかは大変興味深いところです。

そして、一審で過失を否定され、また大学側も医療ミスと認識していない事故に対して、1500万円もの和解金で手を打つという感覚が、さらにわかりません。

別件ですが、最近、苫小牧市立病院から麻酔科医が消えるというニュースがありました。この記事の中に、

一昨年、苫小牧市立で起きた医療事故の対応をめぐり、医師と病院側の信頼関係にひびが入り「そういう対応の病院では勤務できない、という医師もいる」(山蔭教授)。

という一文があります。その、元となった事件である可能性があるニュースがあり、これであったという確証はありませんが、このような対応をする病院には勤務できない、という感想を医師が持つ心情はなんとなくわかる気がします。

医療の最高機関とも言える大学病院が医療側の主張を通しきらずに、周辺事情によって高額の和解を選択したことは、大変残念ですし、苫小牧市立病院と同様な事態を引き起こす原因の一つになりはしないかと、人ごとながら心配します。

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