「リピーター医師 なぜミスを繰り返すのか?」という本

2012年10月3日

自分のサイトに、「リピーター弁護士」という記事を書こうと考えているのですが、その下敷きとして読んでおかねばならないだろうと思い立ち、「リピーター医師 なぜミスを繰り返すのか?」 (貞友義典著・光文社新書)の古本を1円(送料別)で購入しました。

まだ1章しか読み終わっていませんが、もうゲンナリしてきました。第1章は「リピーター医師の誕生」というタイトルになっています。

不勉強な医師、過ちを犯す医師を徹底的に叩こうという意気込みのようです。確かに医師は勉強すべきですし、過ちは謙虚に反省する資質も必要でしょう。しかしそういう法律家はどうなのでしょうか。一言で言えば、「どの口が言うか」の心境です。

添付文書・厚労省の医療安全局通知を読まないまま、知らないまま投薬をする医師がいると咎めています。では医療訴訟において最も重要である最高裁判例を知らずに提訴を受任したこの話はどうなんでしょう。

抗癌剤の用法を誤った悪魔の治療計画を咎めています。では主張内容の見通しも立てないまま提訴を受任したこの話などはどうなんでしょう。

有罪となり刑事罰が科せられた事例について、量刑判断が軽いと咎めているものもあります。では弁護士の懲戒制度はどうですか?医療事故で刑事罰が当たり前なのであれば、弁護士がうっかりして印紙代を払い忘れたり、控訴期間を逃して控訴できなかった例などは、依頼人に対する人権侵害であり、刑事罰に問われても良いくらいだと思いますがね。

能力のない医師を咎めています。では提訴から3年半、沖縄と兵庫を往復するばかりで、なんの仕事をしたのかよくわからないこの事件の原告代理人はどうなんでしょう。高校数学の内容を理解できなかったこの事件の裁判官や、中学数学の内容を理解できなかったこの事件の裁判官はどうなんでしょう。

これほどの医師叩きの本が、弁護士によって当然の正義であるかのように書かれているところを見ると、私の法曹批判などまだまだ甘いものだと感じざるを得ません。そうでなくても医師の業務は、ミスがあって結果が悪ければ、民事責任はおろか刑事罰ですら容易に問われるものなのですから、その責任判断を司る法曹に対しては、その行いが暴走していないかを含めて、さらなる強力な批判的な眼を向けてやる必要があると考えて良いように思われました。

「リピーター弁護士」についても、遠からず記録してみたいと思います。(後日注:その記事として「リピーター弁護士 なぜムリを繰り返すのか?」をアップし,本記事中にもリンクを設定しました。)

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

  • 「弁護士はどうなんだ」型の批判では全然だめだよ。
    そんなものは批判とは呼ばないよ。
    仮に弁護士たちの問題が事実だとしても、それと医療側の何かがバーターになったりチャラになったりするわけではないのだから。
    あくまで本に書かれてることの範囲内で論理の次元で論駁しないと。
    書き手の属性(弁護士)にかこつける論法はダメだよ。

    2012年10月13日 | ハマ

  • そういうのはこっちを見てよね。

    2012年10月13日 | 峰村健司

  • いや、この記事の構成に対する批判に対し、先生のほかの記事を示されても困るのですが。

    「本の書評をする際に本の筆者の職業に関する批判を展開しだすなんて滑稽だし、そもそも論理的にそんなものは批判とは呼ばない」

    ただこれだけの事が何で理解できないんですか?

    2013年6月4日 | ハマ

  • 頭が悪いからか言われていることがよくわからないんですが、まあ、これを書く最初の動機が「ゲンナリしてきました。」「どの口が言うか」と、リピーター弁護士の記事の前置き程度のものなので、批判に見えなくても別に構わないです。

    2013年6月4日 | kenji_homme

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA


医療裁判・医療訴訟
医療裁判傍聴ブログ新着記事: 父の診療を担当した医師(息子)が、姉妹から訴えられた事例 | 「頑張れる自信が全く無いですよ」 | 腹部大動脈瘤の有無を疑い、検査を追加すべき義務? | 鼻の整形手術後死亡事例の訴訟、一審の認定事実抜粋 | 癒着を剥がそうとすると出血する脳動脈瘤をクリッピングした際の合併症で争われている事例 |
★基礎編: 医療事故を裁判で裁くのは好ましくありません | 裁判傍聴の方法 | 裁判記録閲覧の方法 | 書類送検について | 医療訴訟の原告の方へのアドバイス | 医療訴訟の患者側勝訴率が急低下 | 裁判官の方々へのメッセージ | 「業務上過失人権侵害罪」の立法を | 沖田光男さん痴漢誤認逮捕事件の差戻し審判決に思う | 医療訴訟の現状と問題点 | (HTML版はこちらから) | 訴訟記録閲覧時のメモ取り行為と,裁判の公開原則,レペタ裁判の関係 | 宮川光治裁判官の余計な一言 | 手術の合併症と法的過失 | 画像検査の見逃しと法的過失
★事件編: 東日本大震災トリアージ訴訟妥当 | 抗癌剤内服拒否死亡事件妥当妥当 | クルーズ船脳出血発症緊急搬送訴訟 | 高松三つ子緊急帝王切開訴訟 | 静岡羊水塞栓症訴訟(富田善範裁判長の不適切訴訟指揮)妥当 | 大橋弘裁判長トンデモ訴訟指揮事件妥当 | 富山医科薬科大学MRSA腸炎訴訟 | 代理人が辞任してしまったので・・・和解 | リピーター弁護士 なぜムリを繰り返すのか不定不定 | 沖縄総胆管結石摘出不成功訴訟和解 | 不要な点眼処方は暴力行為だ!和解 | 素人も削ってみたけれども、悪いのは歯医者です和解 | 眼底造影検査アレルギー死亡訴訟妥当妥当 | 開業医時間外診療拒否訴訟和解 | 異食症高齢者誤嚥死亡訴訟 | 行き当りばったり提訴医療訴訟事件妥当 | 三平方の定理血管穿刺訴訟妥当 | 日野心筋梗塞訴訟妥当 | 京卵巣腫瘍摘出尿管損傷訴訟妥当 | 老人ホーム誤嚥常習者心肺停止訴訟和解 | 椎間板ヘルニア術後下垂足訴訟和解 | 北陵クリニック筋弛緩剤点滴事件妥当妥当妥当 | これを治っているというのはどこの医者だ!和解 | 東京産婦MRSA感染訴訟 | 徳島脳性麻痺訴訟不明微妙 | 医療問題弁護団問題1和解 | 医療問題弁護団問題2和解 | 医療問題弁護団問題3和解 | 医療問題弁護団問題4 | 谷直樹弁護士の謬論 (医療問題弁護団問題~5~) | 青森里帰り妊婦OHSS訴訟C以上妥当 | 一宮身体拘束裁判妥当妥当 | 八戸縫合糸訴訟妥当 | 加古川心筋梗塞訴訟 | 東京脳梗塞見落しカルテ改ざん訴訟妥当和解 | 東京の皆さ~ん,こちら岡山で~す妥当 | 関東中央病院PTSD訴訟妥当妥当 | アヴァンギャルド癌治療訴訟和解 | 十日町病院術中死訴訟妥当 | 腰椎圧迫骨折保存療法訴訟和解 | ゼロ和解したRSD訴訟和解 | 福島VBAC訴訟和解 | 過剰な吸引分娩による胎児死亡訴訟微妙妥当 | 産婦大量出血死亡訴訟妥当 | 新島骨折見逃し訴訟 | 奈良先天緑内障訴訟 | カルテ改ざん訴訟妥当妥当 | 円錐角膜移植手術後散瞳症訴訟妥当 | 奈良救急心タンポナーデ訴訟妥当 | 亀田テオフィリン中毒訴訟 | 村田渉判事の判決文に学ぶ1妥当 | 村田渉判事の判決文に学ぶ2妥当 | 村田渉判事の判決文に学ぶ3妥当