佐々木竹見騎手が勝鞍世界第3位になった日の,ムチ争奪戦

(1987年5月5日)

しばらく前に日本前人未踏の6000勝をマークした佐々木竹見騎手が,6032勝で引退していたジョン・ロングデン騎手の記録を追いぬいた瞬間に,私は運良く立ち会うことが出来ました。昼間開催ながらも中央開催のない祝日のため,相当に膨らんだ観衆の前でそれはなされました。後のインタビューで「記録を抜いてすかっとした気分だった」と語った佐々木竹見騎手は,ゴール後にスタンド正面に帰ってくるとさっぱりした笑みを浮かべながら,なんと手に持っていたムチをスタンド前に投げ込んだのでした。

そのムチは,ゴール板近くで立ち見をしていた私から数メートルのところに飛んでいきました。レース終了後で多くの観客はパドックに向かっていたものの,「世界第3位」のアナウンスを聞いて「佐々竹」を祝福しようと残っていたファン達が一斉にムチに飛び付きました。今でこそ地方競馬でも若い女性ファンが多いですがその当時はまだガサツっぽいおじさんファンばかりの当時のことで,「私はこれは大変な争いになるんじゃあなかろうか」と恐れながらもみんなと一緒にムチに駆け寄りました。

意外にもムチ争奪戦はあっさりと終わりました。ムチをしっかりと掴んで「おれがとったかんねー!」と宣言したどこかのおじさんが奪取に成功したのでした。周りのみんなは「俺にもさわらしてくれよ」なんていいながらムチを撫で回します。誰かが「それで子供の頭を叩かにゃいかんね」というと,ムチを取った主は「それよりかあちゃんのケツを叩かなきゃあ」なんていいながら笑うので,周りの人たちも笑ったのでした。(世の中のかあちゃん方,ごめんなさい)

今とは違った大井競馬の平和な一日でした。