「カンニング自殺」訴訟:配慮がなかったのはどちら?

7月30日に東京高裁判決が出た,埼玉県立高校生がカンニングした疑いで教諭らからの指導を受けたために自殺したとして,母親が県を訴えた事件です。7月30日の日刊スポーツより。

 2004年に埼玉県立高3年の男子生徒(当時17)が自殺したのは、カンニングを疑った
教諭らの指導が原因として、母親(56)が県に8000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴
審判決で、東京高裁は30日、請求を棄却した1審判決を支持、母親側の控訴を棄却した。
 園尾隆司裁判長は1審さいたま地裁判決をほぼ踏襲。「カンニングを認定されてもやむを
得ない状況だった」と指摘し、教諭らが生徒に事情を聴いた点も「教育的見地から適切な
ものだったと認められる」とした。
 判決によると、04年5月26日、2時限目の物理の試験中、生徒が消しゴムに巻いたメモを
見ているのを教諭が発見。メモは1時限目の日本史の試験に関する内容で、担任ら教諭
5人が別室で生徒から約2時間にわたり事情聴取。生徒は同日夕、埼玉県新座市の立体
駐車場で飛び降り自殺した。
 母親は判決後、「わたしたちに何の配慮もない判決で、非常に残念です」と話した。(共同)

最後の母親の「わたしたちに何の配慮もない判決で、非常に残念です」というコメントが気になったので,裁判記録を閲覧してきました。
高裁事件番号は平成20年(ネ)第4556号です。
判決を読むと,ざっくりとこんな概要でした。
 小さい紙に細かい文字を書き込んで,それを消しゴムにまきつける典型的なカンニング手法でしたが,物理の時間である2時限目に,出てきた証拠が1時限目の日本史のものだったため,事実が曖昧だとして教師らによる事情聴取には時間がかかりました。しかし2時間ぶっ続けで5人で威圧的に取り調べた様子はなく,生徒の説明がつじつまが合わないため,むしろ教師側としても本人の主張を尊重し,結局カンニングがあったとの事実認定には至りませんでした。担任教師は,他の教師によって事実誤認されたときに生徒側に立つことができるように,取調べの中心にはいなかったようです。
 2時限目に監督をした教師は,現場でカンニングペーパーを斜め後ろから1分間にわたり確認しており,証言では物理の公式が書かれていたことを,その字体も含めて詳細に証言していました。「消しゴムを見せなさい」と言うと生徒が消しゴムをポケットにしまい込んで拒否したそうです。で,最終的にポケットから出したのが,日本史のカンニングペーパーだったと。
生徒が自殺したのは残念ですが,これで民事訴訟を起こされることには,トンデモ医療訴訟に通じるものを感じます。で,その代理人弁護士は杉浦ひとみ弁護士という人権派弁護士だそうです。弁護士の役割もいろいろなのでことさらに責める気はありませんが,普通の人間ならば事情をきちんと確認すれば,この事件に関わった教師の方々は大変丁寧に対応されているとの認識をすると思うんですが,そのような事件で提訴を請け負うようでは,教師の方々に対する人権蹂躙とまでは言いませんが,人権派弁護士の看板は如何なものかと思ってしまいます。
また,このような一方的な報道だけを元に,自分で調査しようともせずに疑問だけを並べてオシマイの,このブログ(表紙はこちら)の筆者のような態度には疑問を持たざるをえません。