白内障手術では、実際にどんなことをするの?

白内障は水晶体が濁る病気です。水晶体は薄皮栗まんじゅうのように、やや固い核(栗)を柔らかい皮質(あんこ)が包み、それを嚢(のう・薄皮)が覆っています。白内障で濁るのは中身(栗とあんこ)です。手術では、薄皮を一部だけくり抜いて、濁った中身を砕いて吸い出し、原則として薄皮の中に人工レンズを入れます。

薄皮の中に人工レンズを入れるので、薄皮を出来るだけ傷つけずに保つことが重要です。しかし薄皮に穴を開けないと中身は取り出せません。薄皮を出来るだけきれいに丈夫に保つために、薄皮にあける穴は、できるだけ切れ目のない、まるいくりぬきにします(前嚢切開)。

中身を吸い出すときにも、薄皮を一緒に吸って傷つけたり、穴を開けたりしないように細心の注意が必要です。そのため、薄皮に円いくり抜きを作ったら、次に薄皮と中身の間に水を注入して、薄皮と中身を分離させます(嚢皮質分離)。それにより、 中身を薄皮から離して動かすことができ、比較的安全に吸い出すことができるようになります。

とはいえ水晶体の薄皮はサランラップ程度の厚さなので、中身を砕いて吸い出しているときに、何かの拍子に一緒に吸い込まれて破れてしまうことがあります(後嚢破損)。部屋掃除のときに掃除機でカーテンを吸い込んでしまう場合があるのと同じで、どんなに上手い医者が注意して行なっていても、たまに起こしてしまいます。

水晶体の殻は、トランポリンのマットがフレームからつながっているように、多数の細い糸(チン小帯)で目玉の壁からつながっています。この細い糸がごっそり切れると(チン小帯断裂)、水晶体の殻の位置がおかしくなり、この中に眼内レンズを入れてもずれてしまったり、殻ごと目玉の中に落ちたりする場合があります。そのような場合には、水晶体の殻の中に眼内レンズを入れることを諦めて、水晶体の殻の上に載せたり、眼内レンズを目玉の壁に縫い付ける場合もあります。

角膜の裏面には、角膜を透明に保つための、重要な細胞が並んでいます(角膜内皮細胞)。吸い取る途中の水晶体の中身がここにぶつかるたびに細胞が減っていきます。細胞が減りすぎると角膜が濁ってしまい(水疱性角膜症)、角膜移植を受けなくてはならなくなるので、それを避けなければなりません。

特に、中身をそのままの大きさで吸い取ろうとすると、大きすぎてすぐ角膜の裏側にぶつかってしまいます。それを避けるために、まず中身をある程度細切れにしてから、破片をひとつずつ吸っていくのが普通です(水晶体超音波乳化吸引)。

白内障の手術はかなり安全ですが、ごくまれには問題が起こることもあります(白内障手術で失敗するリスクはあるの?)。特に、数千人に一人の割合で起こると言われているばい菌の感染(術後感染症)は、最悪の場合、回復できない失明につながることがあるので、なんとしても避けたいところです。

ばい菌が入りにくい切り方や(切開方法)、手術前・手術後の消毒方法や、抗生剤の投薬方法は、これが一番だという結論は出ておらず、最終的には医者の考え方次第になります。また、どんなに気をつけていてもばい菌感染する場合はしてしまうものであり、最終的には、ばい菌感染するかしないかは、運を天に任せるとしか言いようがありません。

もっとも、本当に失明してしまう可能性は、ばい菌以外の原因も全部合わせても、数万人に1回くらいではないかと思います。私自身は見たことがありません。ただ、当たってしまった場合には、諦めるしかないということになります。

次は、白内障手術で失敗するリスクはあるの?


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