医師の鑑定内容漏えい事件

2009年4月15日

まず前回記事の誤りについて。少年事件だから非公開であり、調書漏えいが問題というのは違っていて、少年事件に限らず、調書をみだりに公開すること自体が問題のよ うです。刑事訴訟法281条の3,4,5に、被告人本人や弁護人に対しては、これを公開した場合の罪が規定されていました。1年以下の懲役だそうです。誤解していました。お詫びします。
さてこの事件、表現の自由とかいろいろ紛糾していますが、司法的には本質はそんな問題ではないと思います。
この医師を罰しようとする行動は、調書の漏えいだったとのことです。冒頭のお詫びに書いたとおり、調書の漏えいは重大な問題のようです。それほど調書を公開することに問題があるというならば、ちゃんと鑑定人に対する罰則の条文を用意しておけばよかっただけの話であって、それがないがために 「鑑定が医師の業務に当たる」などという副次的な理由をつけて一般の秘密漏えい罪で有罪なんて、別件逮捕ならぬ別件有罪という感じで、違和感をぬぐえません。

刑法第百三十四条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を 漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

これがもし建築関係の事件で、建築家が鑑定人だったら、調書を公開しても有罪とする法的根拠がないわけですから。
判決が誤っているとまでは言えないのでしょうが、司法の不備をなんとか取り繕って被告人に無理やり押し付けた、美しくない判決だと思いました。

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