若いお巡りさん (とおじさん) (2001年の思い出話)

2006年11月21日

ある朝、夜勤が明けてアパートに戻り玄関を開けると、風が吹いてきた。足の踏み場も無い散らかった部屋は相変わらずだったが、窓が開いていた。鍵の部分を切られた跡がある。泥棒が入ったあとだった。よく見ると、雑然とした中でわずかに床が見える部分にはスニーカーの足あとがあり、物入れや引き出しも半開きだった。
「まずい」
ちょうど大きな集金をしたあとで、部屋には40万円以上が置いてあった。文具をこれまたごちゃごちゃに入れてある引き出しの、そのごちゃごちゃの底に忍ばせてあった大金はそのまま残っていた。まさか文具を掘り起こすとそこに大金が…とは思いもよらなかったのだろう。この点では作戦の勝利であった。
一安心の後に、生まれてはじめての110番をした。ほどなく制服の若いお巡りさんと私服のおじさんがやって来た。私服のおじさんは刑事さんだと言う。刑事さんはにこやかな顔をして開口一番「これなんじゃないのぉ? これ!」と小指を立てながら言い放った。
「ええっ?! そんなことはない… と… おもうんです… けど…」
とだんだん声が小さくなる自分がいる。そこに刑事さんが畳み掛けるのである。
「そうかなぁ? そんなことないだろうと思っていても、意外とそういうこと多いんだよォ!」
「いやぁ、そんなことはぁ…
その豪快な話の持って行きっぷりに、僕は完全にやられた。マクドナルド式の「スマイル0円」のような営業術なんてクソ喰らえだ。

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